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22話

「咲!」


優はすぐに走り出した。


人混みの中、咲の背中はすぐ見えたのに、なぜか遠く感じる。


「待てって」


息を切らしながら追いつき、優は咲の腕を掴む。


「離して!」


咲が強く振りほどこうとする。


その瞬間、手がぶつかって——


「……あ」


咲のメガネが落ちた。


コンクリートに小さな音。


優も、咲も一瞬止まる。


普段はメガネの向こう側にある、咲の顔があらわになる。


涙で濡れた目。


必死に隠そうとしていた顔。


優の動きが止まる。


「……え」


思わず声が出る。


咲はすぐに顔を背けた。


でももう遅い。


見られてしまった。


優は一瞬、何も言えない。


「お前……」


その間に、咲はもう一度腕を振りほどいた。


今度は成功する。


そして、そのまま走り出す。


優は追いかけようと一歩出かけて——止まった。


咲の背中はもう人混みに消えかけている。


「……っ」


追うか迷ったその一瞬で、完全に見失う。


残ったのは、落ちたメガネだけ。


優はそれを拾う。


少しだけ握る手に力が入る。


(……何やってんだ、俺)


追いかけるべきだったのかもしれない。


でも今は、足が動かなかった。


優はしばらくその場に立ってから、ゆっくり息を吐く。


そして咲の家に向かった。

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