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12話


昼休みの教室は、いつも通りざわついていた。


優は机に肘をつきながら、周りにいる女子たちの話を適当に受け流していた。


昨日までの重さが完全に消えたわけじゃない。


それでも少なくとも、“沈んでる人間の顔”ではなくなっている。


「元気そうじゃん」


友達にそう言われて、優は軽く肩をすくめた。


「まあな」


無理に元気を作ってるわけでもない。


ただ、立ち止まってるのが少しだけ面倒になっただけだ。


その視線の先に、咲がいる。


窓際の席で弁当を食べているけど、今日は少し静かだ。


かおりと話してはいる。


でも笑うタイミングが、少しだけ遅い。


(……なんか)


優は小さく違和感を覚える。


かおりに振られたのは自分なのに。


沈んでるのは、自分じゃない。


むしろ、咲の方がどこか引っかかってる顔をしていた。


「咲」


気づけば、名前を呼んでいた。


咲が顔を上げる。


「なに」


いつもの声。


いつもの目。


でも少しだけ、元気が薄い。


優は軽く笑った。


「いや、別に」


「なにそれ」


「ちゃんと飯食ってんのかと思って」


「食べてるし」


即答はいつも通り。


でも、その後が続かない。


ちょうどその時、かおりが「飲み物買ってくる」と席を立つ。


二人だけの空気が残った。


優は咲を見たまま、少しだけ間を置く。


「お前さ」


「なに」


「なんか今日、変」


咲の手が止まる。


「どこが」


「全部」


「雑すぎ」


優は少し笑う。


「まあいいけど」


そう言って、スマホへ視線を落とす。


でも完全には戻さない。


視界の端に、咲が残っている。


咲は弁当を見つめたまま、小さく息を吐いた。


「別に、普通だけど」


その声はいつも通りなのに、どこか熱がなかった。


優はそこで初めて、少しだけ違和感を覚える。


(……なんだこれ)


(俺じゃなくて、こっちの方が変じゃね?)


確信というより、引っかかりに近い。


咲はそのまま弁当を食べ続けている。


でもどこか、箸の動きが一定じゃない。


優はスマホを置いて、少しだけ椅子をずらす。


「なあ」


「なに」


返事は早い。


でも、目は合わない。


優は少しだけ間を置いて、軽く言った。


「なんかあった?」


咲は一瞬止まる。


そしてすぐ、いつもの調子を作る。


「ないけど」


「ほんとに」


「ほんとに」


優はそこで、無理に踏み込まない。


「ふーん」


それだけ言って、視線を外す。


でも完全には戻さない。


咲はそのまま弁当を食べ続ける。


ただ少しだけ、落ち着いていない。


優は小さく息を吐いた。


(まあ、いいか)


今はまだ、それ以上踏み込む必要はない気がした。

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