↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
19章:続・最初の異世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

596/605

続・最初の異世界(9)

 (大悪魔マカベル? どこかで聞いたような……)


 ラーゼが震える声で発したその名は、自分も聞き覚えがあった。

 とはいえ、自分はこの異世界にそこまで深くは関わっていない。

 前回訪れた時の港町リバールでの聞き込み調査では魔王軍の動向は聞いても、具体的な固有名は聞いていないのだ。


 そう、例えば魔王の本名だったり、その配下の名前だったりだ。

 だから、前回の聞き込み調査の時に大悪魔マカベルなどという名前は聞いていないはずなのである。

 では、自分は一体どこでその名を聞いたのか?


 頭の中を整理し、そして思い出す。


 (そうだ! ススムから奪った異能の詳細を確認した時に読んだ説明文だ!)


 そう、異世界渡航者として最初に訪れたこの異世界で最初に異能を奪った相手である異世界転生者・今元晋、その異能の詳細を確認した時に、こんな一文が添えられていた。


 聖剣シルブルムフゲンが放つ一撃は神聖なる輝きを持って穢れを払い、常闇の大悪魔マカベルに対しては絶大な威力を発揮する。


 つまりは聖剣シルブルムフゲンは対魔神特攻装備であるキラーシリーズのように、常闇の大悪魔マカベルに対して特攻を持った武器と言うわけだ。

 聖剣として絶大な力を持つが、本来は大悪魔マカベルと戦うための武器であり、そんな聖剣を使いこなせていたのが今元晋であり、いわば彼の異能は聖剣シルブルムフゲンの権能そのものだったというわけだ。


 今は聖剣の異能という大雑把な位置づけになっているが、本質はそこなのである。

 とはいえ、まだ旅をはじめたばかりの当初はそんな裏側まで気にすることはなく、もう訪れる事のない世界の何かしらが書いてあるとしか思わなかった。


 だからこそ、考察などする事なく読んでそのままで終わったのだ。

 しかし、異世界渡航者の本質を考えれば再びこの地に戻ってくるとは普通思わないだろう。

 だから、忘れていたとて問題はないのだが、どうにも嫌な予感がした。


 (うーん……これといった需要な遺跡というわけでもない洞窟の奥底に隠された巨大なスペース、その天井に一面大きく描かれた壁画、そして大悪魔マカベル……なんだがキナ臭いな……とはいえ、わかりやすい祭壇か何かがあるわけでもなし、本当にただ壁画があるだけだ……なんだこの空間?)


 何にしても長居は無用、そう思いラーゼに声をかけようとすると、ラーゼは怯えながら天井の壁画を見上げ、両手で頭を押さえ。


 「あ、あぁぁ……」

 「ラーゼ?」


 少しよろめきながら後ろに数歩下がると。


 「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!! いやー---!!!!」


 突然発狂しだした。

 大きな声は反響して空間内に木霊し、思わず耳を塞いでしまう。

 一体どうしたんだ? とラーゼの元に駆け寄ろうとすると。


 「来ないで!!」


 ラーゼに拒否された。

 その言葉に思わず足を止めた直後だった。


 「っ!!」


 ラーゼの全身から漆黒のオーラが漂いはじめ、その全身を包み込んでいく。

 さきほどまで怯えていたその瞳は怪しく真っ赤に染まって輝き、そして怯えていた表情は消え、別人のような冷たい眼差しとなる。


 (なんだ? 何が起こってる?)


 ラーゼの異変に警戒態勢を取りながら、一体彼女の身に何が起きたのか? とその状態異常を探ろうと鑑定眼で何かラーゼを視てみると。


 「っ!? おいおい、嘘だろ!?」


 鑑定眼で覗き見るステータスにラーゼの名は表記されていなかった。

 そこにはラーゼの名ではなく、こう表記されていた。

 レベル666の大悪魔マカベルと……




 次元の狭間の空間、カイトの本拠地であるその空間を別次元にコピーした神には内緒の秘匿空間には、カイトに異能を奪われて殺された転生者・転移者・召喚者たちの魂の半分が収監されていた。

 収監といっても牢獄というわけではなく、ある程度の自由行動はできる。


 例えば、「道」と呼ばれる目には見えない空間の上を歩けば、コピーされた次元の狭間の空間の外に出る事ができるのだが、現状、そこから先へは進めない。

 そもそも、カイトはこのコピー空間を生み出しはしたが、本当に稼働しているかは知らないのだ。


 もし、カイトがこのコピー空間の現状を知ろうと何かしら操作すれば、すぐに自称神へと知れ渡ってしまう。

 そう、バレるのだ。だから、カイトはその時が来るまで成功しているかどうかの確認はしないのである。


 それを知っているからこそ、このコピー空間に収監された、カイトに異能を奪われて殺された転生者・転移者・召喚者たちもカイトにコンタクトを取ろうとはしないのである。

 とはいえ、コンタクトは取らなくともコピー空間側には本家のオリジナルの次元の狭間の空間にはないある重要な機能が備わっていた。


 それは、現在のカイトたちがどこで何をしているかを映し出す事ができる大型モニターだ。

 これで彼らはカイトの行動を監視できるわけである。


 そんな大型モニターが設置されているのは食堂であり、現在皆が食堂に集まって大型モニターに視線を注ぎ、カイトの行動を見守っていた。

 だが、そんな中でただ一人、慌てた表情で立ち上がり、思わず大型モニターに駆け寄ってその画面を掴んでしまう者がいた。


 そんな彼を周囲の者が「何やってるんだ!」と止めに入るが、彼は気にせず焦った様子で画面を釘射るようにみつめる。

 その人物は今元晋。今画面に映っている異世界に転生していた人物であり、そしてラーゼの仲間だった元勇者だ。


 そんな今元晋は画面に向かって必死に叫ぶ。届くわけがないのに必死に叫ぶ。

 もうあの世界には関わる事ができないというのに……


 「ラーゼ!! くそ!! 最悪だ!! はやくマカベルの因子を抑えないと!! はやく!!」


 そんな必死の形相の今元晋に誰かが尋ねた。


 「な、なぁススムよ、あの子一体どうしたんだ? もしかしてあの子、魔族か何かなのか?」


 その問いに今元晋はこう答えた。


 「そんなわけあるか!! ラーゼはっ!! 彼女は正真正銘人間だ!! けど、寄生されてるんだよ……封印された大悪魔を宿した石に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。