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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
19章:続・最初の異世界

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続・最初の異世界(6)

 その洞窟は交易都市からそれほど遠くない場所にあった。

 だからだろうか? 洞窟の入り口には多くの冒険者がたむろしており、冒険者ギルドの職員がトラブルを避けるため入場規制をおこなっていた。

 そんな光景を見て、あれ? もしかして、この洞窟って入るのに冒険者ライセンスが必要とか、そういうのあったりするの? と一瞬焦ったが、ラーゼが。


 「賄賂払えば優先して洞窟に入れてやるって小遣い稼ぎでしょ。無視していいわよ、あんなの」


 と、切り捨てた。

 しかし、職員を無視したところで洞窟に入るための列が消えるわけでもなく、到着してから洞窟内に入るのに小一時間かかってしまった。


 なんでこんなにこの洞窟大人気なんだよ? そんなにみんなモウカリマッカーを狩りたいのか?

 というか、これだけの人数が続々洞窟に入って行って、洞窟内部は大丈夫なのか? 大渋滞起きてない?

 酸素濃度大丈夫?

 そしてモウカリマッカーはこれだけの冒険者に命狙われて絶滅したりしない?


 そんな事を心配しながら洞窟内部へと進んでいく。

 しばらく進むと狭い通路の先に素早く動く、小さな影を捉えた。

 なので足を止め、ラーゼに確認を取る。


 「あれか?」


 しかしラーゼは首を横に振り。


 「あれはオオキニね。洞窟内によくいる小型の肉食種よ。まぁ、狩ったところであまり売れる部位をもってないわね。放っておいても害はないし、気にせず進みましょう」

 「……」


 そう言って身を隠す事無く堂々と先へと進み始める。

 そんなラーゼの背中を見て、思わず心の中で叫んでしまった。


 おおきに? いや、ほんとなんでモンスターの名前、どれも大阪の挨拶なんだよ!!

 どうなってんだ? ここは大阪なのか!? そうなのか!?


 とはいえ、荒ぶるのは心の中だけにして、外面は極めて冷静に務め、ラーゼの後を追う。

 そして心を落ち着かせるため、なぜ大阪の挨拶がモンスターの名前になっているかを考察してみた。


 そういえば、大阪には関西の鍾乳洞スポットのひとつとして有名な岩窟めぐりができる磐船神社があったな。

 巨岩信仰というか、なんというか……確か境内のひと際大きな岩はご神体で、ニギハヤヒが大地に降臨する際に乗ってきた岩だとか何とか……

 ニギハヤヒか、懐かしいな……そういえば昔戦ったっけ? あぁ、あれは偽物だったか……

 ん? そういば、あそこって神社だけど修験道の修行場でもあったっけ? というか岩場を抜けるのにお金払わないといけないんだよな確か……

 でもあれは、狭い岩場を抜けて母親の胎内から生まれ出る行為を再体験するって修験道の修行の一環だから……ん? これは別の岩場の修験道系の神社だったか?


 そんな脱線していく思考を重ねていると。


 「おーい、聞いてる?」


 なんかラーゼから声をかけられた。

 なので反射的に。


 「え? あぁ、うん、聞いてる聞いてる! バナナはおやつに入らないから入れても予算オーバーにはならないって話だろ?」


 訳のわからない事を口走るとラーゼから不審な目で見られた。


 「何の話?」

 「なんでもない、忘れてくれ」


 なので苦笑いを浮かべ。


 「で、何?」


 そう尋ねるとラーゼは呆れたようにため息をついて、ある方向を指差した。

 ラーゼが指さした方向を見ると。


 「っ!! あれは!!」


 そこには背中に立派な鉱石を生やした、アルマジロのような生き物がおり、そいつは地面に鼻をこすりつけて何かを探していた。

 恐らくは地中に潜んでいる昆虫かミミズか何かを探しているのだろう。

 そんな生き物を見て。


 「モウカリマッカー!!」


 思わず叫んでしまった。

 ラーゼは大きく頷いてから。


 「声が大きいよ。今は餌を探すのに夢中でこっちに気付いてないけど、そんな大声だしたら普通に逃げられるよ」


 そう注意された。

 これには返す言葉もなく。


 「ごめん」


 素直に謝るしかなかった。

 そんな自分を見て、ラーゼはため息をつくと。


 「まぁ次から気を付けてよ? とにかく今はできるだけ無傷で仕留めるよ」


 そう言って、この一瞬で一体どこから取り出したのか? その手にはボウガンが握られていた。


 「っ!!」

 「ところであなたの得物は?」


 そう尋ねてきたラーゼにどう答えようか迷っていると。


 「まぁ、このラッキーチャンスがいつまで続くかわからないし、あいつは私が仕留めるよ」


 ラーゼはそう言ってボウガンを構え、モウカリマッカーの脇腹に向けて矢を放つ。

 一瞬にして矢はモウカリマッカーの脇腹に突き刺さり、モウカリマッカーは小さなうめき声をあげて地面に倒れ込んだ。


 そうしてモウカリマッカーが動かない事を確認するとラーゼはボウガンを下げ、倒れたモウカリマッカーへと近づいていく。


 (さすが自らの力で弦を引く弓と違ってボウガンの射速は速いな……しかし)


 ボウガン……正式にはクロスボウもしくは弩だが、その威力は弓矢を遥かに凌ぐ。

 これは当然で、何せボウガンの矢は弓矢の矢よりも強固なのだ。それが板ばねを用いた複雑な構造の機構によって恐ろしいまでの速さで発射される。

 そんなものに射られたならば、ただではすまない。


 とはいえ、あくまでそれは最初の一射目の話だ。

 弓矢とクロスボウでは威力に圧倒的な差があれど、単独での戦闘においては威力で劣る弓矢に圧倒的なアドバンテージがある。

 それは扱う人間の技量次第という問題はあるものの、概ね誰しもが気軽に連射ができるという点だ。


 弓矢は矢を射る本人の筋力にたよる部分が多く、100人いれば100人全員が同じ飛距離、同じ威力を放てるわけではない。

 一方のクロスボウは100人全員が同じ威力、同じ飛距離を放つ事ができる。

 だが、その一方でクロスボウは強力であるがゆえに装填に時間がかかるのだ。


 しかし、弓矢は射る側がその気になれば、素早く次の矢を構え、射る事ができる。

 そう、連射ができるのだ。

 これは常に状況が変化する戦場において、非常に有利である。


 それに比べ、装填に時間がかかるクロスボウは一発で仕留める事ができない限り、長期戦においては不利だ。

 これは初期の鉄砲にもいえる事だが、鉄砲においては一度撃ってしまうと、次弾を装填するために筒の中に火薬をつめて次に弾をこめるという、非常に時間がかかるめんどくさい作業が発生する。

 この作業を一瞬で済ます事はほぼ不可能であり、ゆえに初期の鉄砲は隊列を組んだ戦列歩兵による一斉射撃を隊列ごとに繰り返して運用していたのだ。

 日本においては織田信長による火縄銃の戦場での運用法、長篠の戦いにおける三段撃ちが有名だろう。


 鉄砲と違い、クロスボウは専用の強固な矢をセットするだけだが、しかしそのセットには時間がかかった。

 なにせ板ばね構造の弦は非常に硬く、全体重をかけて腹と地面を使わないとセットできないほどであったのだ。


 だからこそ、弓矢が数発射たというのに、クロスボウはまだ次射の準備も終えていないというのはざらであった。


 そんなクロスボウは、集団で隊列を組んでの戦闘ならまだしも、たった一人、クロスボウのみを相棒に動き回って相手に立ち向かうという、単独での高速戦闘を行うのには不向きな武器なのは誰の目にも明らかだろう。

 ゆえに思う。


 (世界からススムの記憶と痕跡が消えたとはいえ、なぜボウガンを使うラーゼがススムが欠けた事によって空白になった勇者の座に就いたのか……通常のボウガン使いの戦闘スタイルでは絶対にないはずだ。一体どんな戦い方をするのか、少し見させてもらうか)


 こうして洞窟内でのモウカリマッカー狩りがはじまった。

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