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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
19章:続・最初の異世界

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続・最初の異世界(4)

 値札を見て発狂した自分にラーゼは残念なものを見る目を向けると。


 「いや、別に法外じゃないでしょ」


 キラー・ボウガンの値札を見て叫んだ時と同じ反応をされた。

 そんなラーゼの反応を見るに、どうやらこんな法外な値段が商品につけられているのはこの世界では日常茶飯事のようだ。


 つまりはこれが高いとは思っていないのである。

 おいおいマジかよ? この額だぞ? 金銭感覚が麻痺しているとしか思えない……

 それとも、それだけ今現在、この世界ではお金に価値がないのだろうか?

 ここまでのお金を積まなければ、まともに商品を買えないという事だろうか?


 だとすれば、インフレどころかハイパーインフレだ。

 教科書に載っていた、どこぞの経済破綻したアフリカの国の、子供が押したリアカーいっぱいに山積みされた大量の札束でパン一切れしか買えなかったっていう、あの写真を思い出す。

 まったくもって洒落にならんぞ?


 そう思い、隣の出店に並んでいる品物をチラッと覗いてみる。

 すると、ごくごく一般的なデザインの、ごくごく平凡なナイフが、ごくごく一般的な値段で売られていた。

 それを見て。


 「いや、全然ハイパーインフレちゃうやんけ!! これがぼったくりなだけやないかい!!」


 思わず叫んでしまった。

 そんな自分に対してラーゼが更に不審な目を向けてくる。


 「さっきからほんと何言ってるのあなた……」


 呆れたと言わんばかりのラーゼに「何言ってるんでしょうね~ははは」とごまかすように笑い。


 「えっと……そのルケー? っていうの……うん、身代わりのペンダント売ってるとこ、どこか知らない?」


 そう尋ねると、ラーゼは大きなため息をついて。


 「あなた、それ本気で言ってるの?」


 信じられないといった表情を浮かべた。

 そして周囲を見回してから。


 「ルケーが欲しいのに、なんでこんなとこ見てるのよ? ここ、武器エリアだけど? 並んでる品見れば普通わかるでしょ! なんで気付かないの? バカなの? 間抜けなの? おたんこなすなの?」


 なんかボロクソに言われた。

 とはいえ、注意深く観察しなかったのは事実なので、ぐうの音も出ない。

 なので。


 「ですよねー」


 そう言って、あははーと笑ってごまかす事にした。

 しかし、内心ではこうも思っていた……知らんがな!! と。


 そんな自分の反応をどう思ったのか、ラーゼは再び呆れたと言わんばかりの表情で大きくため息をつくと、頭が痛いとばかりに頭を手で押さえて。


 「はぁ……もういい、わかったわ。私が案内したげる」


 そんな事を言い出した。

 なので思わず聞き返すと。


 「え? 案内って……」

 「ルケーを売ってる装飾店! これ以上、ここでお上りさん全開で騒がれても目立って困るし! 恥ずかしいわ!!」


 ものすごく怒られた。


 こうしてラーゼに連れられて、ルケーが売っているという装飾店を目指す事となった。

 その道中、ラーゼから色々と話を聞くことができた。


 ついさっきまでいたのは武器エリアであり、並んでいる出店ごとに取り扱っている武器が違うのだという。

 ひとつの出店では剣ばかり扱い、その隣の出店では槍ばかりと、そういった感じだ。

 つまりは武器は武器でも、それぞれの武器に特化した専門店が集うエリアなのだ。


 そして、ラーゼと出会ったあの出店は、ボウガンばかりを取り扱っていた出店だったというわけである。

 ちなみに、出店ごとで取り扱う武器は違うのだが、だからと言ってそれぞれの出店で取り扱っている武器の攻撃力の高い強力なものや、キラーシリーズが売られているとは限らない。

 初心者や駆け出し冒険者をターゲットにした低価の安物や、扱いやすさ重視の攻撃力の低い武器ばかり取り扱う出店や露店もあるし、懐事情のいい裕福な冒険者や傭兵、貴族や富豪といった金持ちの護衛をターゲットにした、攻撃力を二の次にした見た目重視の見栄えだけはいい、高価な武器を取り扱う出店もあるし、偽物や紛い物、違法に製作された複製品をぼったくり価格で正規品と偽って売りつける詐欺まがいの露店もある。

 だから一軒一軒見て回って吟味する必要があったのだという。


 だったら、せっかくキラー・ボウガンが置いてあったのだ。まずは先にキープしておく方がいいのではないか? そう思ったのだが、ラーゼは。


 「いや、お金が確実に用意できると断言できない状況でそれはダメでしょ。お店の人にも、私以外のキラーシリーズを求めている人にも」


 そんな事をいった。

 なんとも生真面目な事だ。とはいれ、確かにラーゼの言う通り、確実に買い取れる保証がない状態でキープをするのはトラブルの原因になるだろう。

 何せ次に店を訪れた客がキラーシリーズを買い取れるほどの大金を所持していた場合、店側としては売りたくても売れない事態となってしまう。

 また客からしても、現物がそこにあるのに何故自分は買えないのか? 金ならいくらでも出せるのにと不満が募る。


 そんな中でキープしていた張本人が戻ってきたらどうなるか?

 しかも、悪びれもせず、頑張ってお金かき集めたけど金額に届きませんでした……なので買えそうにないからキャンセルで! と言ってきたら?

 答えは言うまでもないだろう。


 (トラブルを避けるために、確実性がない状態では手を出さないか……それはさすがに生真面目がすぎないか?)


 そんな事を思いながら、しかしある疑問が浮かぶ。

 それは……


 (というかラーゼはなんで自分が勇者だと名乗らないんだ? 魔神が復活した今、その魔神を討伐するために必要な武器だと店側も理解しているはずだ。ならば、自分は勇者だと名乗り出て、それを証明すれば低価格の販売、もしくは譲渡でもらえるんじゃないのか? なんでそれをしないんだ?)


 そう、これは誰もが感じる事だろう。

 なのでラーゼにどうして勇者と名乗りでないのか? 尋ねると。


 「は? いや、名乗り出たら足もと見られて、もっと価格つり上げられるでしょ!」


 と、何言ってんだお前? と言いたげな顔で言われた。

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