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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
19章:続・最初の異世界

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続・最初の異世界(3)

 ラーゼによれば、キラーシリーズと呼ばれる武器は、普通のモンスターや対人戦闘であっても高い攻撃力を発揮するが、その真価が発揮されるのは魔神と戦った時なのだという。

 キラーシリーズの武器には相手が魔神だった場合、装備者の攻撃力を数千倍に高める効果があり、魔神相手の場合のみクリティカルヒット連発や麻痺や毒、衰弱の追加効果もごく稀に発生し、どれだけ貧弱な攻撃でも当たりさえすれば必ず弱点を突けるという、まさに魔神特攻仕様なのだ。


 だからこそ、魔神と戦う者にとっては絶対に手に入れなければならない必須装備なのだが、だからといってこのキラーシリーズがなければ魔神が倒せないというわけではない。

 キラーシリーズに頼らずとも、魔神を圧倒できるだけの力があれば別段問題はないのだ。


 また、キラーシリーズはあくまでその特性が魔神特攻というだけで、魔神と戦わない者が装備していてもなんら問題はない。

 攻撃力はどのキラーシリーズもそれなりに高いし、魔神と戦わずとも持っていて損はない武器ではある。


 だが、あくまでそ(・)れ(・)な(・)り(・)に(・)攻撃力が高いだけであり、魔神と戦わないのであれば、もっと攻撃力が高い武器は他に存在する。

 つまりは魔神と戦うならキラーシリーズを装備したほうがいいが、戦わないなら最強装備は他にあるというわけだ。


 そして、魔神が復活するまではキラーシリーズは世界中の誰にとっても意味のない武器であった。

 当然だ、何せ魔神が封印された状態の世界では、一番の脅威となりえる存在は魔王のみであり、その魔王に対してキラーシリーズはそ(・)れ(・)な(・)り(・)に(・)攻撃力が高いだけの武器でしかないのだ。

 そりゃ誰も、もっと攻撃力の高い武器を求めるだろう。

 あくまでキラーシリーズは魔神特攻の武器なのだから……


 とはいえ、キラーシリーズも一部のマニアたちの間ではブランド力があった。

 何せ古の賢者たちが使ったとされる代物だ。

 しかも豪華な装飾が施され、それらは1000年経とうがまったく劣化しない。


 そりゃ高額で取引されるというものである。

 そう、そ(・)れ(・)な(・)り(・)に(・)攻撃力は高いが、世界の脅威たる魔王相手には役不足であり、最強装備が他にあるのだから魔王と戦う者はそっちを選ぶが、魔王と戦わない収集家や学者、研究者はキラーシリーズを求めるのだ。

 何せ、彼らにとっては手にする価値があるものなのだから……


 歴史的価値や古代の豪華な装飾品という価値、これらがキラーシリーズにブランド力を与えた。

 結果、キラーシリーズの値段は高騰した。

 魔王と戦うための最強装備でもないのに高騰した。


 しかし、これは仕方がない事だ。

 何せキラーシリーズは武器でありながら(兵士や冒険者たちが求める)武器ではない、(学者や収集家たちが求める)文化財や鑑賞用の装飾品なのだから……


 故にこそ、魔神が復活した今となってはその高騰した値段はラーゼにとって大いに悩みの種である。

 何せその値段は、一介の兵士や冒険者たちが武器屋で手軽に買える範疇を平然と超えているのだから……


 ラーゼが困ったような表情で目線を値札に向けるが、同じくキラー・ボウガンの値札を見て思わず目を見開いてしまった。


 「はぁ!? な、なんじゃこの法外な値段はー------!!!!」


 思わず絶叫してしまったが、ぼったくりにしてもあまりに、あまりに非現実的すぎる。

 確かに一部界隈では貴重な品だという事はラーゼの話を聞いて理解したが、それでもこれはふっかけすぎだろ!

 まじでその値段で買うやつがいるのか? いねーだろ! いねーよな? 店主ちょっと強気すぎない? というかぼったくりすぎない? もうちょっと市場の動き見た方がいいよ? いやマジで。


 そう思ってしまったが、しかしラーゼは。


 「別に法外じゃないでしょ。つい最近まではこれは武器じゃなく貴重な品として売られてたんだから、武器屋で武器を買う兵士や冒険者相手に売ってた品じゃないんだし」


 いたって冷静にそう口にするが。


 「けど、さすがにもう少し値段は下がってると思ってたけど、甘かったか……他にもキラーシリーズを探してる冒険者パーティーや傭兵団がいたって事かな? うーん」


 値札を見て唸りだす。


 今までは学者や収集家たちのみを相手にしていればよかったのだが、魔神が復活した今、顧客は兵士や傭兵、冒険者にまで広がっている。

 そして、それらが今こぞって店に押し寄せているのだ。


 ならば、店側はどう反応するか?

 言うまでもなく値段の吊り上げだ。


 そう、需要と供給による市場価格。いたってシンプルな話である。

 ちなみにキラー・ボウガンの値段は、東京でいえば銀座あたりの都心の一等地に東京ドームほどの広さの豪邸を建てられてしまえる額であった。


 (何にしても、俺はキラーシリーズの武器が欲しいわけじゃないし、ましてや魔神と戦うつもりもない。ならばここで、これ以上ラーゼと話していてもリスクが増えるだけだ。だったらすぐにでも、ここから離れないとな)


 そう思い、いまだ値札とにらめっこしているラーゼに。


 「ま、まぁ、とにかく俺はキラーシリーズが欲しいわけじゃないし、それ以前にこんな値段払えるわけないから、ここは退散するよ。はやく身代わりのペンダントを探さないといけないしね」


 そう言って、じゃあ! と手を振ってこの場から去ろうとしたところで。


 「身代わりのペンダント? あぁ、ルケーの事? あなた、ルケーが欲しいのになんでこんなところにいるのよ? というかルケーもこれと同じ値段するじゃない」


 ラーゼにそんな事を言われた。

 え? 今なんていった?

 同じ……値段? これと?

 これって何だ? 何の事だ?

 まさか……まさかとは思うが……キラー・ボウガンの事か?

 キラー・ボウガンとルケーが……身代わりのペンダントが同じ値段?

 は? え? ちょっと待って?

 同じ値段って……


 ラーゼがにらめっこしていたキラー・ボウガンの値札を改めて見てみる。

 その額を何度も確認し、日本円に換算して考え、もう一度間違いがないか、再度値段を確認し、レートが間違っていないか慎重に確認してから再度日本円に換算し、間違いがない事を確認して小さく深呼吸。

 一旦心を落ち着かせ、冷静になってからその額について改めて思いを馳せ。


 「こんな法外な値段払えるかーー---!!!!」


 思わず叫んでしまった。

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