↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
18章:受け継がれし鋼の魂

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

580/607

受け継がれし鋼の魂(46)

 「おらぁぁぁぁ!!」

 「ぐっ!!」


 一体のロボがナイトゴーントに対して怒涛の連続パンチを繰り出している。

 そのロボはナオキの相棒である外見がスーパーカーのビースター。

 合体せず、単独で戦う時はチーターのような外見の獣の姿に変形する事から皆からチーターと見たまんまの名称で呼ばれている、かつては潮留よしもりの相棒だったビースターが変形し、半サイボーグ化した潮留よしもりと融合……ファイナルヒュージョンした機体であった。


 変形合体するビースターと違い、半サイボーグ化した潮留よしもりとファイナルヒュージョンした機体の動きは素人でもわかるほどの滑らかさであり、それがロボだとは思えないほど人の動きを完全再現していた。

 これは当然で、各ビースターにパイロットが乗り込んで変形合体し、複数名で操縦するビースターではどうしてもそれぞれの操縦が動きに反映されるまでにタイムラグが生じ、また統一した意思でもって動かさないと運用に支障をきたしてしまうが、ファイナルヒュージョンの場合、潮留よしもりが完全に機体と融合して自分自身の体の一部として動かすため、スムーズに動くのだ。


 だからこそ、ファイナルヒュージョンした機体と戦うバイオスターたちはその機敏性に驚き、対応できずに倒れていくのである。

 そして、それはナイトゴーントも例外ではなかった。


 仮に交戦経験があれば、話は違ったのだろうが、ナイトゴーントが暗躍しだしたのは潮留よしもりが前線を退いてからであり、当然ながら直接対峙するのはこれがはじめてだ。

 そもそも、潮留よしもりが前線を退く原因は妻のしずかの死がきっかけであり、そのしずかを殺したのがナイトゴーントだ。

 つまりは、交戦経験の機会を自らの手で詰んでいたわけである。


 (まったくこの機敏性、面倒だな……ただでさえ余は今、体(・)半(・)分(・)を(・)動(・)か(・)す(・)動(・)力(・)源(・)が奪われて動きが鈍っていると言うのに……まったくままならぬ)


 ナイトゴーントは開いたままのハッチへと一瞬目を落として舌打ちした後、潮留よしもりがファイナルヒュージョンした機体から離れて距離を取り、様子を窺う。

 潮留よしもりがファイナルヒュージョンした機体の後方にはビースターとは異なる機体が2体待機しており、そのうちの一体、潮留よしもりがファイナルヒュージョンした機体と同等とまではいかなくとも、それに近い機敏性を持つ機体がナイトゴーントの体内から奪われた動力源、支配下に置いたミーヤをその手に抱いて確保していた。


 そして、その機体がその手に抱いて確保しているのはミーヤだけではない。

 同じくビースターのパイロットであるナオキと、その機体の主である人間もその手に同時に抱いていたのだ。

 それを見てナイトゴーントは、どうにかして奴からミーヤを奪い返せないか? と考える。


 とはいえ、現状そのミーヤが体内(コックピット)にいない以上、高速移動するための出力は出せない……たとえビースターと融合合体して強大な力を得ても、体内(コックピット)に動力源がいなければ力を発揮できないとは……これは当面の課題だなとナイトゴーントは悠長に考えていると、潮留よしもりがファイナルヒュージョンした機体が軽くステップを踏みながら。


 「おい、余所見とは随分余裕だな?」


 そう言って地面を蹴って一瞬で距離を詰め、ナイトゴーントに再び連続パンチを繰りだしてきた。

 これをナイトゴーントはまたそれかと舌打ちしながら受け止めるが、しかしその直後、体全体が突然動かなくなった。


 (な、なんだ!?)


 そして、その違和感の正体にすぐ気付く。


 「まさか!! 余の支配を脱したというのか!? バカなっ!!」


 ナイトゴーントが叫んだと同時にナイトゴーントの顔に潮留よしもりの拳がめり込み、そのままナイトゴーントは後方へと吹き飛んでいく。

 それと同時に、潮留よしもりがファイナルヒュージョンした機体と近い機敏性を持つ機体の手に抱かれていたミーヤが目を覚ました。




 「うーん……ここは?」

 『目を覚まされましたか』


 ミーヤの目が覚めると、そこにはミーヤの顔を覗き込む、見た事もないビースターの顔があった。


 「え?」


 一瞬、誰だお前? と思ったが、しかしすぐに混濁した記憶が正されていき、そのビースターの事を思い出す。


 「君は確か……ティーって呼ばれてたビースター」

 『はい、正確にはビースターではなく警護ドロイドのTD-66です』

 「……え? なんて?」


 ミーヤはそのビースターが発した言葉の意味を理解できず、聞き直そうとした時、彼女の隣で誰かが目を覚ます。


 「はっ!? ここは現実!? それともまだミーヤの心の中!?」


 そんな事を言って目を覚ましたのはミーヤと同い年くらいに見える少年であった。

 言うまでもなく、その少年はナオキであり、当然ながら子供とはいえ、エルフのミーヤとは年齢がかけ離れている。


 ミーヤは、そんなナオキの声を聞くとドキっとして恐る恐る横に視線を向けた。

 そして、真横にナオキがいるのを確認すると。


 「はわわ!?」


 突然、そんな声をあげた。

 これにはナオキも驚き、ミーヤのほうを向いて互いに目が合った。

 そして見つめ合う事数秒、なんとも言えない空気が漂い出したところで。


 「どうやら無事現実世界に生還できたようだな。ひょっとしたらナイトゴーントの妨害工作があるかもと警戒したけど、杞憂だったようだ」


 ナオキのさらに隣にいたカイトがそう言って目を覚ます。

 そんなカイトを見てナオキとミーヤが赤面して勢いよく顔を逸らすが、そんな2人の様子をカイトは気にする事なくTD-66の手から降りて地面に着地すると、離れた場所で倒れているナイトゴーントを見て。


 「というより、そこまでの余裕がそもそもあいつになかったか。やっぱあいつ、戦闘経験まったくないだろ」


 そう断言するとTD-66も。


 『はい、実際戦ってみてあまり脅威には感じませんでした』


 そうはっきり言い切った。

 そんなカイトとTD-66に対して、もう一機のロボであるクラタス、そのコックピットにいるヨハンが。


 『いやいや、十分に脅威だったと思うけど?』


 そう口にするが、しかしカイトはそんなヨハンに対し。


 「それはヨハンがまだクラタスを扱いきれてないからでは? でもまぁ、確かにクラタスでは現状、この世界で戦いの最前線に立つのは厳しいかもな」


 そう言って軽くフォローを入れてからミーヤとナオキのほうを向いて。


 「で? おふたりさん、現実に戻って来た感想は?」


 ニヤっと笑ってからそう尋ねた。

 これに二人は顔を背けて答えず。


 「と、とにかく今はあいつを倒す事が先でしょ」


 そう言ってコホンと咳をし、倒れているナイトゴーントに視線を向けた。

 そんなナオキを見てカイトは。


 「わかってると思うが、ミーヤさんを助け出しても君が特大の負の感情を振りまけば、今度は君がナイトゴーントに取り込まれるぞ?」


 そう忠告すると、ナオキは大きく頷き。


 「わかってます。それは重々承知です。けど……」


 そう答えるが、その表情は複雑だと言わんばかりであった。

 そんなナオキの表情を見てカイトは肩をすくませて困ったような仕草を見せた。


 「まぁ、納得がいかないのは確かだよな……母親を殺した相手が目の前にいるっていうのに感情を押し殺せっていうのはな……いつも通りに戦って、いつも通りに敵を倒すのとはわけが違う。たとえいつも通りに戦えても、きっととどめを刺す瞬間に親の仇だって感情が高ぶってしまう。でも、ナイトゴーントはその瞬間を見逃さない、たとえ死の直前だって絶対に」

 「はい、そしてそれをナイトゴーントに知られたら終わりです。その瞬間やつに支配され、取り込まれてしまう」

 「そこまでわかってるなら大丈夫だとは思うけど、それでもあえて聞くが……できるか?」


 カイトの質問にしばらくナオキは黙っていたが、やがて口を開き。


 「どうでしょう……感情を完全に抑え込める自信は、正直ないですね」


 素直に認めた。

 そんなナオキを見てカイトが何か言おうとした時。


 「だったら……こ(・)の(・)機(・)能(・)を使ったらどうかな?」


 ミーヤがナオキにそう言って、自らの腕に巻いたブレスレッドの液晶画面に表示された、ある機能を指差す。


 「それは?」


 訝しむナオキは、ミーヤのブレスレッドを覗き込み、息を飲む。


 「なっ!?」

 「どうかな? こ(・)れ(・)な(・)ら(・)私たちは戦闘に参加する事無く、近づくことなく、ナイトゴーントに負の感情を悟られる事なくやつを葬る事ができる」


 ミーヤのその言葉を聞いて、カイトもミーヤのブレスレッドを覗き込み、表示されたそれを確認する。

 しかし、カイトは少し考え込んだ後。


 「でもこの事は向こうも気づいてるんじゃないか? ミーヤさんを支配下において、尚且つビースターと融合合体して、その機能をやつはすべて掌握しているはずだろ? ミーヤさんの記憶も徹底的に覗き込んで調べ尽くしてるはずだ」


 そう口にするが、しかしミーヤは首を振り。


 「いえ、この機能は今初めて知りました。というよりも、今突然表示されて、その扱い方も頭の中に流れ込んできました。どうやら一定の条件がクリアされなければ開放されない、本来は搭載もされていない裏メニューみたいですね」


 ブレスレッドの液晶画面を見ながらそう答えた。


 「裏メニュー」

 「隠しコマンドみたいなものか」


 ナオキとカイトも少し考え込みながらそう口にし、小さく頷くと。


 「そうだな……今その機能が使えるようになったっていうなら、今がそれを使う時だって事なんだろう。だったら、やるしかないな」

 「はい! やりましょう!!」


 ふたりとも賛同した。

 だが、ナオキは。


 「でも、そうするとあいつは……」


 そう言って、いまだナイトゴーントにとりこまれたままのビースターを……

 ナイトゴーントの体を半分メカへと変貌させている取り込まれたミーヤの相棒のビースターを見る。

 そんなナオキを見てミーヤは首を振り。


 「いいの……あの子もわかってくれるよ」


 寂しそうにそう言うと。


 「やろう!! ナオキ!!」


 すぐに気持ちを切り替えて、ナオキの目を見て手を差し出す。

 そんなミーヤの差し出された手をナオキは握り。


 「あぁ、やろう!! ミーヤ!!」


 そう答えた。

 そして尋ねる。


 「で? どうやるんだ?」


 これにミーヤはこう答えた。


 「このまま手を握ったまま、握った手を前に出して、ビースターのほうを向いてこう口にするんだって。バ……」


 うん、なんかどこかで聞いた事がある単語が発せられたが深くは考えない事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。