受け継がれし鋼の魂(35)
「わかった、準備しておく。報告ありがとうリーナ、くれぐれも無理するなよ?戦闘は機械の騎士さんやヨハンに任せて自分たちの安全確保を最優先してくれ」
そう言って通話を切り、スマホをポケットにしまう。
現在、非常階段を駆け上がり、潮留よしもりと急いで屋上を目指している最中だが、そんな最中にリーナから電話がかかってきたのだ。
その内容はイレーナとナオキを追いかけて屋上に出向いたらナイトゴーントがすでにいて、ミーヤを取り込んだというものだった。
とはいえ、この事はすでにこちらもオペレーターの報告で知っている。
だからこそ今、自分と潮留よしもりは急いで屋上を目指しているのだ。
ゆえに問題は、リーナが報告してくれた、その後に発生した被害のほうだ。
まさかイレーナが致命傷を負って、さらには出血を止めるために自らの魔法で傷口を焼いて塞ぐとは……応急処置としては間違ってはいないのだろうが、しかし、ただでさえ酷い怪我と出血をした状態での自傷行為、イレーナの体力が果たしてどこまでもつか……
万が一に備えてリーナに万能薬・改を持たせておくべきだったと今更ながらに後悔する。
とはいえ、それを今更言ったところでどうにもならない。
タイムリープ能力が使えたならば、やり直す事も可能ではあるが、しかしそれは今アシュラに封じられていて使用する事ができない。
(くそ!どうにかしてタイムリープ能のロックを解除する方法を探すか?いや、そんな事を今はしている場合じゃないな……)
一刻も早く万能薬・改をイレーナに飲ませなければならないが、しかしずいぶんと階段を駆け上がっているが、いまだに屋上にはたどり着かない。
というか、これだけ高い建物なら階段ではなく、エレベーターを使えばいいのでは?と思ってしまうのだが、なんで階段で屋上を目指しているのだろうか?
先を行く潮留よしもりに尋ねてみる。
「なぁ、わざわざ階段で屋上を目指さなくても、エレベーターなりを使えばいいんじゃないのか?それとも昇降装置のようなものは設置してないのか?」
これに潮留よしもりはこちらを振り返る事なく、こう言ってきた。
「あるにはある……けど、今この建物はナイトゴーントの襲撃を受けてるんだぞ?だとすればエレベーターを利用するのは得策じゃない」
「なんでだ?」
「仮にナイトゴーントが今この瞬間にも大暴れして、この建物が倒壊したらどうなる?建物全体が倒壊せずとも一部が、エレベーターがある箇所が倒壊したら?」
「それは……エレベーターの中に取り残されるな」
「だろ?だからそういったリスクを避けるために階段を使ってるんだ。そりゃ建物全体が倒壊したらどこにいても一緒だが、少なくともここはエレベーターのような狭く脱出しにくい空間ではない」
「それはそうだな」
「まぁ、要するに急がば回れってやつだよ。確かに時間はかかるが、リスクがもっとも少ないルートなのは間違いないんだ」
潮留よしもりはそう言うと、少し間を置いて。
「ところでさっきのスマホだっけ?携帯電話の進化版……それで通信してた相手って屋上にいる仲間からだよな?一体なにがあった?」
そう尋ねてきた。
なのでリーナが報告してきた内容を話すと。
「くそ!最悪な状況じゃないか!」
潮留よしもりは少し語気を強めてそう言うと。
「すまない、君の仲間に怪我をさせてしまって」
すぐさま謝罪してきた。
とはいえ、相変わらずこちらに振り返る事はないのだが……
そんな潮留よしもりに。
「今はその事について話し合ってる時間はないでしょ。それよりも屋上についたらどうするつもりです?」
屋上到着後のプランについて尋ねると。
「どうするつもりか、か……怒ると言った手前、バカ息子はまずぶん殴らないとダメだろうが……」
そう言ってから、潮留よしもりは。
「とはいえ、状況を聞く限り最悪な事態なのは間違いない……だからバカ息子への説教は後回し手にしてミーヤを無理矢理ビースターから引き剥がさないとな」
そんな事を口にして、階段を駆け上がりながらこちらを振り返らず、あるアイテムを見せて来た。
「それって……」
しかし、それを見せられてどう答えるべきか返答に困ってしまった。
(本当に大丈夫なのか?これ……)
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