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これはとある異世界渡航者の物語  作者: かいちょう
18章:受け継がれし鋼の魂

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受け継がれし鋼の魂(34)

 長年目をつけていたミーヤを取り込んだナイトゴーント、それによって長年思い描いてきたビースターとの融合合体を果たす事ができた。

 とはいえ、やはり完全には制御できない。


 ビースター内部にはいくつものブラックボックスが存在し、それらを解析しない事にはビークルにかけられたリミッターを解除できないのだ。

 さらにはビースターの根幹にかかわる部分、他のビースターとの合体シークエンスへのアクセス権も認可されぬままだ。


 これに関してはパイロットではなくオペレーターの分野にはなるのだが、しかし刻々と変化する戦況に対応するため、オペレーターの承認を待たずとも現場の判断で行使できるよう、コックピットには非常対応ボタンが取り付けられている。

 しかし、そのボタンは今完全に機能を失っていた。


 どうやら万が一の味方の裏切りも見越して、もしもの時は他のビースターとの接続が機体の判断で切れるようになっていたようだ。

 ゆえにナイトゴーントが他のビースターをさらに取り込むためにはオペレーターと操作基盤の奪取が必要となる。


 オペレーターに関しては負の感情を揺さぶり、支配下に置けば済む話だが、操作基盤の奪取に関しては一筋縄ではいかないだろう。

 特にこの地はあの潮留よしもりの拠点だ。激戦となる事は必須、重傷を負う事も覚悟しなければならない。


 しかし、それがどうした?

 リスクはもとより覚悟の上、こんなところで日和っていてはバイオスターの王たる道化師のエムブロを倒す事などできない。

 そう、目標はあくまで天下。エムブロの地位を奪い取る事だ。

 十鬼衆の一角を担う程度で満足などできるわけがない。


 ナイトゴーントは自らの野望のためにリスクを取る事にした。

 つまりは施設内部への潜入だ。

 ここはビースターの研究施設、しかも今はほぼすべてのビースターがこの地に集結している状態だ。


 それはバイオスターにとっては最悪な状況を意味する。

 普通に考えれば、ビースターのひとつを取り込めたのだ。なら目的は達したわけだから、こんな危険地帯からはすぐに離脱すべきだろう。そう、これ以上を望むのは欲を出しすぎというものだ。


 だが、ナイトゴーントはミーヤを支配下に置き、ビースターを取り込んだ事で強気になっているのか、大胆にも内部に侵入してオペレーターの奪取などという当初の計画にない事まで考えだした。

 場当たり的な行動は壊滅的な結果を生むのが常だが、どうやらナイトゴーントにはそういった懸念はないようだ。


 なのでまずは目の前の邪魔なハエを始末するかと、ナオキの操るビークルにTD-66とヨハンが操縦するクラタスを睨む。




 「イレーナ大丈夫? もう! なんて無茶するの!!」

 「そうだよ、こんなやり方! たとえ傷口を塞げて出血が止まっても体力がもたないよ!」


 ヨハンが召喚した四脚クローラー方式双腕型コンセプトマシンの操縦席になんとかイレーナを押し込み、乗り込んでその場から後退、TD-66にヨハン、ナオキとナイトゴーントが戦闘を繰り広げる場所から距離を取ったリーナとエマは苦しそうなイレーナの顔を覗き込みながらそう言うが、しかしイレーナは苦悶の表情を浮かべながらもなんとか体を起こし、そして戦闘現場を見つめながら。


 「こうでもしなきゃ、ナオキくんがわたしにずっとつきっきりだった。それじゃミーヤさんは絶対に戻ってこない……こうでもしなきゃ」


 そう口にする。

 そんなイレーナにエマは色々と何かを言っていたが、一方のリーナはスマホを取り出しカイトに連絡を入れていた。


 「マスター!! はやく来てください!! イレーナの治療に万能薬が必要ですし、何より状況があまりにあたしたちに不利すぎます!」


 リーナは冷静に現在の状況を伝えているが、しかし所々で焦りがみられる。

 感情的になる部分があったり、早口であまり伝わらず何度も言い直している場面もあった。


 そんなリーナの様子を見て、イレーナは自分のためを思って言ってくれているとわかっていながらも、エマの説教を手で制し、リーナにある事を尋ねた。


 「ねぇリーナ、確かリーナってハーフヴァンパイアだったよね?」


 イレーナのその質問に、エマは「ちょっとイレーナ? 話はまだ終わってないんだけど?」と怒り、リーナはスマホを耳にあててカイトとの会話を続けながら「そうだけど?」と返す。

 リーナの返事を聞いたイレーナは考え込むような仕草を見せた後「そうか、だったら……」と口にした後。


 「リーナ、ナイトゴーントを魔法で攻撃しよう! わたしとリーナの魔法で!!」

 「「は、はぁぁぁぁ!?」」


 そんな事を言ってきた。

 これにはリーナとエマも目を丸くして驚きの声をあげてしまう。


 「ちょっとイレーナ? いきなり何を言い出すの? 意味わからないんだけど」

 「そうよイレーナ! だいちリーナは貴族(メイジ)じゃないんだから魔法は使えないって」


 困惑する2人の反応を見てイレーナはニヤリと笑うと。


 「確かにリーナは貴族(メイジ)じゃないから使えないね、()()()()が」


 そう言ってからリーナを指差し。


 「けど、リーナはハーフヴァンパイア。つまりは()()()()()()()()()が使えるはず」


 そう断言した。

 指摘されたリーナはエマと顔を見合わせ。


 「言われてみれば確かに……使えてもおかしくない……のかな?」

 「けどハーフが魔法を使ってるなんて話、聞いた事ないけど」


 そう疑問を口にするがイレーナは。


 「それはただでさえ忌み嫌われてるハーフが魔法まで使えるってなったらより一層危険だって迫害されるから隠してるんだと思うよ。実際ハーフエルフが自然魔法を使ってるの見た事あるし」


 そう言ってリーナの手を取ると。


 「だからリーナにもきっとできるよ!」


まっすぐにリーナの目を見て断言する。

そんなイレーナの気迫に押されたリーナは魔法が使えるか否かの話題には反論しなくなった、ただ。


「けど、私に魔法が使えたところで今それに何の意味があるの?魔法で攻撃したところでバイオスターには通じないんだから」


そもそも、この場で魔法を行使する事も疑問を呈する。

これにはエマも同意し。


「そうだよ、だからヨハンにこんなの召喚させてるんだし」


操縦席の側面の壁をコンコンと軽く叩きながら言うが、これにイレーナは。


「確かに、ミーヤさんを取り込む前のナイトゴーントだったらそうだったかもしれない、けど今は違う。今なら通じる!」


そう断言した。


「どうしてそう思うの?」


当然返ってくるその問いにイレーナは。


「だって今はミーヤさんを取り込んでいるんだよ?ミーヤさんというよりミーヤさんが乗り込んだビースターを……そしてビースターと合体した事によって体の半分はビースターが構成している……ねぇ、魔法って()()()()()()()()()()()()?」


そう口にした。

これにはリーナもエマもはっとした顔になる。


「それってつまり」

「ミーヤさんを取り込んで強力になったけど、同時に致命的な弱点も生まれたって事?」


ふたりの言葉にイレーナは頷き。


「あくまでも予想でしかないけど、その可能性は十分にあると思う」


そう言ってからナイトゴーントへと視線を向ける。

そして考える。


(そうは言ってもたぶん普通の攻撃魔法をぶつけるだけじゃどうにもならないんだろうな……もっと別のアプローチをしないと)


そして、憧れの存在たる「平民令嬢」シリカの戦闘スタイルを思い出す。

元平民であるがゆえに魔法を使えないシリカはいかにしてオリジナルの魔法を放っていたか?


(シリカさまの真似事……恐れ多いけど、けどもしかしたらこれなら……)


イレーナは同時にカイトに保護されてから、リーナたちと一緒に過ごすようになり、次元の狭間の空間で共に図書室で勉強するようになって得た知識を思い起こす。


(対流加熱……可能性があるとしたら、これにしかない)

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