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予算

研究開始当日

「先生、研究予算はどれくらいですか?」


 卒業研究を始めるにあたり、どれくらいの予算が貰えるか私は先生に尋ねた。


「好きに使っちゃって良いよ」

「……え、でも具体的な予算を教えて貰わないと予定が立てられません」

「いいから、気にしないで好きなだけ使っちゃって。ウチは研究費がタップリとあるんだから」

「はあ」


 夏頃

「実は頼みたいことがあるんだけど」

「何でしょう」

「研究費節約してくれない」

「え、研究費はいくらでも良いといったのでは?」

「もう無いんだよ」

「ではせめて実験材料だけでも」

「半分にして」

「それでは実験も研究も不十分です」

「自分で何とかして」

「……はい」




 年度末

「使えないな」


 私が提出した領収書を見て呆れるように先生が言う。


「何がです」

「君さ。領収書だけど日付書かないでくれる」

「なんでですか」

「今年の研究費もうないんよ。翌年度に回さないと、来月の適当な日付書いておきたいんだよ」

「ですがそれは犯罪では」

「いいから、やっておいて」


 先生は声を荒げて命じてきた。


「でも」

「言うこと聞かないと卒業させないよ」

「……はい」


 犯罪の片棒を担がせないで欲しい。

 だが卒業を人質に取られると従うしか無かった。


 大学の予算が繰り越せないという制度上の問題もある。

 単年度予算では翌年に繰り越せずその年に全ての予算を消化しなければならない。

 なので多くの研究室では年度内の余った予算を消耗品の購入に充てる。

 お陰で、多くの研究室はコピー用紙やトナーの山で埋め尽くされる。

 かつてはOHPでセル画のようなプラスチックのペーパーに印刷してスライドショーを行った。OHPはかつて大学の必需品だった。

 そのためある研究室が大量に買ったのだが直後にパソコン用のプロジェクターとパワポが導入され、OHPは不要となった。

 経費で購入したため無闇に廃棄出来ず未だに研究室の肥やしになっている。

 だが、その不具合を学生に押しつけるのはどうなのだろうか。

 いや、そもそも予算を夏に使い切っている時点で会計能力はゼロだろう。


「君、これからの大学教員は事務も出来ないとダメだよ」


 などと春先に言っていたくせに何も出来ていない。

 研究者なら研究に打ち込むべきだ。事務がやりたいなら准教授では無く事務員に転職しろ。雇ってくれるところはないだろうけど。

 何より先生は守銭奴じみた人間だ。

 だが、卒業を人質に取られていては何も言えない。

 ただの二〇代前半の若者、それも何のスキルの無い人間が社会へ飛び出せるのだろうか。大卒の肩書き以外に何の信頼があるというのか。

 卒業させて貰えなかったら、この四年間、何の為に大学に通ってきたのだろうか。

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