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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第10章「恥も外聞もないトリップを焼き捨てる馬鹿者たちへ」
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第75話 「バースト」



 司令室の中……機材がひしめくその中央で、ニニコを拘束(こうそく)するマリィ。 

 

 対峙(たいじ)するフォックスの、冷たい声―――


「よう、サルガッソ」


 フォックスは、マリィを名前ではなくコードネームで呼んだ。それがなにを意味するのか……


 

「フゥ。なぜこんなことになってるんでしょう。ほんの15分前まで、再会を喜びあってたじゃないですか」

 悲痛な面持(おもも)ちのマリィ。

 切実な声で(うった)える。


 ……いったい、どの口が言うのか?



「んー! ヴォグズ、ヴォッグス……」

 室内に反響するニニコのうめき声。

 まだ(くち)に、()義肢(ぎし)の先端を突っこまれている。

「ン――――!!」



「ニニコちゃんを放せとか、なにか無いんですか? フゥ」


「ンー!」

 うめくニニコ。



「ニニコちゃんには私の血を飲ませました。どういうことか、わかりますよね? HPVSウィルスの潜伏(せんぷく)期間は3日です。その間にワクチンを打てばよし。予定通り、キスカンダスに着けばいいのですが……この艦が(しず)んだら、間に合いませんね」


「なにが言いたいわけ?」

 フォックスは籠手(こて)(かま)えることもせず、入口に立ったままだ。()義肢(ぎし)の射程外にとどまっている。

 距離、約15メートル……



「ニニコちゃんを助けたかったら、これ以上、私を悲しませないことです」

 脅迫(きょうはく)するマリィ。


「脅迫してんのか? いいよ、こんな船(しず)んでも」

 受け流すフォックス。



「……それ、なにを持ってるんですか? 見せてください」

「これ? (まくら)だよ。見てもしょうがねえ」


 丸めた白衣に目をやるマリィ。

 ぶら下げた荷物を、マクラだと言い()るフォックス。


 と―――

 


  「ンー!」


   ぶわぁ!   

   バチバチバチ!

   黄色!!

 

 ニニコのスカートから黄色に染まった触手が1本、激しい電光を(はな)ちながら、マリィの鼻先に伸びる!

 だが届かない。

 あと30センチ……バチバチバチ!

「ンー! ンー!」

 いまいましく、マリィを(にら)むニニコ。



「ウワッ! なにこれ!!」

 (あと)ずさるマリィ。

 目の前で閃光(せんこう)を放つ触手……(まゆ)をしかめる。

「いったい何なんです、このアイテムは? いろんな色に変わって……よくわからない」



「……」

 今度はフォックスが黙ったままだ。

 暴れるニニコにさえ一瞥(いちべつ)もくれない。いや……静かに、口を開いた。

「ニニコを放せ」



 マリィも、フォックスを見た。

 お互いに、とてつもなく冷たい目。

 放火魔の目。

 沈没屋の目。 


「放しませんよ。それより答えてください。さっき、なんで私を燃やそうとしたんですか? 意味不明なんですけど」



「ニニコを放せ」

「なんで、私を燃やそうとしたんですか?」


「ニニコを放せってんだ!!」

「放しませんよ! この子は、レベッカの代わりにするんです!」

 叫ぶ。

 2人の絶叫が反響する。



「はぁ、はぁ……そこまで言うなら教えてやろうか? マリィ」

「ハァ、ハァ……ええ、聞かせてください。フゥ」


「ニニコに血を飲ませても、HPVSに感染させられねえ(・・・・・・)ぜ?」

「はあ!? なにを言って……な……!?」



  「ンー!」

   バチバチバチ!


 バチバチバチ……ズルズルズルズル!! 


 黄色く発光する触手が、 " 赤 " に()まっていく。

 赤に。

 血のような(・・・・・)赤に! 



「なに!?」

 マリィが、眼前の触手の変化にふたたび叫ぶ。

 今度は赤!? 


 たじろいだ拍子(ひょうし)に、()義肢(ぎし)のアームは大きく揺れ、ニニコの口が自由になった。 


「ンー! ぷはっ! はぁ、はぁ……!」

 泣きながら、マリィを(にら)みつけるニニコ。

 呼吸を荒げ、吐き捨てる。

「あんたの血なんかいらない……」



 マリィは……


「なにこれ? 今度は、赤……? うわァ!!」



挿絵(By みてみん)



 触手に目を奪われたのは、一瞬。


 ブシュウ!

 触手の先端から、(きり)状の血が()きだした! マリィの顔を(おお)う、血の煙。


「うわ! 目が! 目が……!!」

 おもわず目を閉じ、両手で顔をぬぐうマリィ。

 し、視界が……見えない!


 同時に()義肢(ぎし)の拘束が(ゆる)み、ニニコがどすんと尻もちをついた。

「どすん、痛い! お返しよ、ワーワー!」

 解放されるやいなや、わめきまくるニニコ。



「し、しまっ……」


 ふたたびニニコを()らえるべく、マリィは()義肢(ぎし)を床に()わせた。

 もちろんなにも見えない。

 手探り―――だがどこにもいない!


 モニターにぶつかる。

 椅子(いす)をなぎ倒す。

 いない、いない!

 (まぶた)を強引に開くマリィ。

 視界は真っ赤……


「……な!!」

 悲鳴。

 激痛の目に映ったものは、



   消火器。



 消火器を左手にぶら下げるフォックス。

 白衣の中身……消火器をぶら下げて、フォックスがこちらを見すえている。


「ひー!」

 フォックスの背後に隠れるニニコ。


 フォックスは消火器を、投げた。

 いや転がした。

 ボウリングの玉のようにゴロゴロと、マリィに向かって。


 ゴロンゴロンゴロン…… 



挿絵(By みてみん)



 近づいてくる消火器に、マリィは目を奪われる―――……ハッとフォックスに視線を戻した。


 だがもう遅い。

 もう遅いよ。


 ボッ!!

 焼き籠手の人差し指に、炎弾が(とも)る。



「や、やめ……」


 マリィが叫んだ。

 だがもう遅い!


 ドン! と発射された炎弾は、レーザービームのように加圧式消火器のバルブをぶち抜いた。


 超、至近距離。

 マリィの足もとで、消火器は爆破された。



挿絵(By みてみん)


 

 ドオオオオオオン!!



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いま書いてるやつよ。

 ↓

チャッカマン




イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。


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