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捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第2章 側妃、東の果てへ

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7.問いかけ

 レオールの屋敷はとても立派なもので、内装はシックでありながら目を引く華麗さがあった。

 落ち着いた茶の木目、目に痛くないシャンデリア……実直なレオールらしい。

 豪華な夕食が用意され、広間で宴が始まった。形式ばったものではなく、円形のテーブルでのカジュアルな夕食だ。

 個人的にはこのくらいのほうが肩も張らない。公国の側妃としてではなく、旧友としてもてなしてくれるほうがずっといい。

「このほうが良いと思ってな」

「ええ、助かるわ」

 夕食に出てきたのはハムに彩られたサラダ、上等な牛肉ステーキであった。

 シャキシャキな初夏の葉野菜とトマトの組み合わせのサラダは濃厚だ。

 それに脂の入ったステーキ……!

 ミディアムレアでオニオンソースたっぷり。付け合わせのカリッと焼かれたベーコンも最高だった。

 天使なルーインがはふはふとステーキを食べて、にっこり笑顔になっている。

「ううん〜! 美味しいです!」

「本当にね。赤身と脂のバランスが最高だわ。サラダもみずみずしくて、よく合うし」

「君はサラダとステーキの組み合わせが好きだったと思ってな」

 私は少し驚いた。

 帝国留学時代、私はなるべく自分を出さないようにしていたからだ。

 というのも住まうのも周囲も他国の人間ばかり。しかもその時には私はラッセリア公国の妃となるのがほぼ確定していた。

 迂闊なことは表に出せない立場だったし、そうしないよう心掛けていたのに。

「……どうしてそのように思ってくれたの?」

「嬉しいことがあると、ほんの少しだけ声が高くなる。俺はそういうのによく気が付くだけだ」

 そんな癖があったのかとルーインに目を向ける。だが、ルーインも知らなかったようで――目をぱちくりとさせていた。

「レオール様は鋭いのね」

「上手くやろうとしているだけだ。君のように神から授かった力があるとまでは言えない」

 レオールがワイングラスに一口をつけて、私を見つめた。人を捉えて離さない緑の瞳が私に向けられている。帝国の人は私の記憶能力を崇め奉る傾向にあった。

 いわく神からのギフト、贈り物、授かりもの……などなど。

 この能力は凄いと自分でも思うけれど、そのような神秘的なものではない。だってさっきもレオールに裏をかかれてしまったし。

 その後は表向きの話に終わり、私が望むような方向には向かわなかった。

 ただ、わかってはいる。レオールも帝国の実力者、エベラルド辺境伯だ。

 迂闊なことは口にできない。

(焦っては駄目よ……)

 レオールは段階を踏む男だ。私のために家や帝国をリスクに晒すマネはしないだろう。

 もし何だったら数日、この街に泊まってでも機会を伺わなければ――と、夕食後に私は屋敷の裏庭へ誘われた。

 形の整ったカリダード杉が数本、屋敷の裏庭も低木や草花が多い。

派手なところは一切なく、自然を強く感じさせる。

 ヴォルデより街の明るさが多いために、月はいくぶんか控え目に夜空を照らす。

「少しふたりにしてくれるか」

 レオールの言葉に周囲は頷き、ルーインやお互いの側仕えもやや遠ざけた場になった。

ここだ。夜の闇の中で虫と小鳥が鳴く。

「君がここに来たのは側妃の件が関係しているのか」

「……ええ、その通りよ」

 レオールの声は静かだが、深くどこか凄みがあった。

 私がディルダによって側妃に降格させられ、ヴォルデに送られてから一週間ほど経っていた。

 レオールほどの男なら私が説明しなくても私以上に状況は把握しているだろう。

 何をどう、レオールは尋ねてくるだろうか。

 私は全神経を彼へ集中させた。風がレオールの緑の髪を軽く凪ぐ。

「君はどう思った?」

「え?」

「降格させられた時だ。君はどのように感じた?」

 それは考えていなかった角度からの問いかけだった。

 どう答えるべきか、私は迷った。

 私の立場はまだラッセリア公国の側妃だ。公国の立場を思えば、ディルダのことも悪くは言えない。相当なオブラートに包む必要がある。

(でもそれじゃあ、何のためにディルダへ楯突いたのよ)

 レオールは不器用なところもあるが、したたかな男だ。さっき、わざわざ目の色を少し変えたのにも理由があるはず。

 ただ、すぐには分からないかもしれない。彼は……他人に対して独特なところがある。

 十数秒ほど考えて、私は口を開いた。

「理不尽だと思ったわ」

「ほう……」

「今も納得していないし、このままでは公国はさらに悪い方向へ向かう。でも今の私にはすぐにどうこうはできない……時間がいるの」

 側妃のままヴォルデでは終われない。

 ルーインの言う通りディルダにこの処置を撤回させなければいけない。

 それが公国貴族だ。私はまだ自分が思うほど充分は働いていない。

 時間をかければ懇意の貴族を味方につけて、巻き返しも図れる。ただ、今は時期が悪い。

 動くにしてもやり方があり、そこまで生き抜く資金に難を抱えている。

「だからその時間を稼ぐために、あなたの力を貸して。お願い」

 私は頭を深く下げようとして――レオールの手が肩に置かれて制されたことに気付いた。

「君に頭を下げられたくはない」

「…………」

「かつて俺は君に助けられた。その恩を返す時だ」

【お願い】

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