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【書籍化】捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第4章 発展と焦燥

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25.メルダの謀略②

「関係のある商人ね……」

 数人の顔がぱっと思い浮かぶ。

 だが、果たしてそう簡単にミスリルを手に入れてくれるものか。

「それより盗賊か何かを装って、奪っちゃったほうが早いんじゃないの?」

「まさか! そんなことは不可能です!」

 目を見開いて黒服が否定する。

「エベラルド辺境伯の兵もミスリルの護衛をしております。我ら公国の兵ではとても……」

「そんなに差があるの? あなたたちだって陛下の精鋭でしょ!」

 メルダの言葉に黒服たちが顔を見合わせる。

 どことなく呆れているようだった。

「エベラルド辺境伯は帝国の雷光と呼ばれる武人です。その兵はカリダード皇帝直下の近衛軍にも匹敵いたします……公国の兵でどうにかするのは不可能かと」

「……使えないわね」

 メルダには何の力もない。武芸も不得手なら指揮も執れない。

 配下の兵が無理だと言うなら従うしかなかった。

「じゃあ私が口で言うから手紙を書いてくれる? とりあえず連絡をつけないと」

「メルダ様の自筆のほうが効果的かと存じますが……」

「うるさいわね! 黙って私の言う通りにしなさいよ!」

 貴族と取引する商人に出せるような書状をメルダは書けなかった。

 だが、それを認めることはコーデリアに劣っていることを認めること。

 コーデリアの書状は公国官僚の手本になるレベルなのだから。

 何度も書き直しをさせて、ようやく体裁の整った手紙が完成した。

 メルダは黒服に命じ、三通の手紙を届けさせる。

 返事を待つ間、メルダは気が気ではなかった。

 黒服に世話をさせて不自由はなかったが、狭くてボロい宿はやはり嫌だ。

「未来の公国妃からの手紙よ。……返ってくるわよね」

 爪を噛んでジリジリと数日間、待機する。

 ようやく黒服経由で手紙の返事が戻ってきて、メルダはとりあえず息を吐く。

 黙殺するつもりなら、返事もしないだろう。少なくとも話を聞く気はあるはず。

 まず一通目の返事……。

『ご協力いたしかねます。ヴォルデ領の住民はコーデリア様に忠誠を誓っており、ミスリルの入手は不可能でございますでしょう』

 メルダは激怒した。

「何なのよ! この返事は!」

「その場で返事を頂いたのですが……」

「中身は見なかったの!?」

「にこやかな顔で封印されましたので」

「ふざけないでよ! 商人ごときが、私に逆らうなんて!」

 手紙をびりびりに破って捨て、足を踏み鳴らす。

「二通目は……読まれますか?」

「当たり前でしょ! よこしなさい!」

 メルダが二通目の返事をひったくり、急いで内容を確認した。

『ご要望の品は用意できません。帝国との交易品に手を出すことは、公国貴族といえども危険な行為かと存じます』

「そんなこと、わかってるわよ! 舐めてるの!?」

 またも手紙を破り捨て、メルダは怒りに目を血走らせる。

「使えない! 本当に使えないわね! だから帝国にバレないようやれって言ってるのに!」

「二通とも拒否でございましたので?」

「見ればわかるでしょ……! さぁ、最後の手紙をよこしなさい!」

 怒りながらもメルダは焦っていた。

 マズい。最後の手紙にも拒絶されたら……別の手を考えなくては。

 だが、今のところ妙案はない。

 手ぶらでは王都に戻れない。絶対に成果が必要なのに。

 最後の手紙を開封する。

『ご要望のミスリルはすぐにご用意できます』

「……!!」

『ただし警備が厳重なため数量はごく少量になります。また、ヴォルデの外に持ち出すのは内包する魔力から、検問に引っかかりますために不可能です』

 メルダは目玉を左右に動かし、手紙の先を読み進める。

『そのためにお手数ではありますが、お受け取りにきて頂きたく――』

「やったわ!」

 メルダは歓声とともに腕を振り上げた。ここまで書いてあれば確実だ。

 その後には受取日の希望やら場所やらが書いてあった。

 こちらから商人へ足を運ばなくてはいけないのは癪に触る。

 が、大目に見てやろうという気分だ。

「早速、返事を出しなさい! すぐに取りに行くってね!」

 こんな安ホテルにいつまでも我慢なんてできない。

 ヴォルデのミスリルさえ確保できれば王都に戻れるのだ。

 だが、黒服は訝しげな目を手紙に向けていた。

「少々お待ちを……この相手先の商人は信用できますので?」

「うるさいわね! じゃあ、何よ。私にまだここに籠もっていろと言う訳!?」

「い、いえ……」

「陛下もミスリルをお待ちなのよ! あたしの命令通りにすぐやりなさいよ!」

 メルダの勢いに黒服たちも従わざるを得ず、段取りが組まれていく。

 その様子にメルダは機嫌を良くした。

「ふん、コーデリアがなんだってのよ。やっぱり陛下のご寵愛があるあたしのほうが偉いんだから……!」

 所詮、人は利のあるほうに動く。

 コーデリアがどれだけ有能だろうが、こちらには陛下がいる。

 下々の人間は威圧すれば従うのだ。

 メルダはほくそ笑んだ。

「ヴォルデの人間に裏切られてミスリルを失うなんて! ああ、愉快だわ!」

【お願い】

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