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【書籍化】捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第4章 発展と焦燥

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21.水槽

 それから夏の間、ミスリル鉱石の採掘と精錬はとても上手くいった。

 鉱脈さえ見つければ経験者は豊富で生産が可能。

 さらに帝国との共同試掘で成果も出始めている。

 その分、書類仕事もやらなきゃだけど……仕事があるほうがいい。

 執務室で書類をさばきまくっている私の元に、ルーインが駆け込んでくる。

「コーデリア様、南方に有望な鉱脈がありそうです!」

「本当!? 西に続いてね。そちらもすぐ手配をお願い!」

「はい、そのように!」

 帝国の採掘技術は公国よりも十年先を行っているのではないだろうか。

 枯れたと思われる鉱脈も帝国からすると、宝の山だったのかも。

「まぁ、ここまで協力しないと帝国も懐から出さないか……」

「レオール様はわかっておられたのでしょうね」

「恐らくはね」

 レオールは決して不義理をする人間ではない。

 だが帝国の利益を危うくしてまで協力はしないだろう――でも、果たして私が彼の立場ならここまで協力しただろうか。わからない。そうしたとは思うけれど。

 私はルーインからの別の報告書を手に取った。こちらは余剰の食料についてだ。

 予想通り食料生産には相応の余裕がありそうだった。

「領内の食料消費も増加しております」

「鉱業従事者が増えれば、そうなるわよね」

 重労働かつ昼夜勤務ともなれば、大量のエネルギーが必要だ。

それは当然、食料によって賄われる。

「ですが、それを遥かに上回る生産増が見込めそうです」

「休業していた人たちがこんなにいたなんてね……」

 ヴォルデの資料を眺めながら、私は嘆息する。

 一体、どれほどの労働力を遊ばせていたのだろうか。

 でも今はヴォルデにはやる気があり、帝国からの需要もある。

 ということで食料についても生産増を執り行う。

 ヴォルデの人たちはこちらもやる気になってくれ、すぐ生産が増え始めた。

 魚やエビ、貝などは農業と違うので生産増がすぐ形になる。

 とはいえ、量的には一度に数十人や百人分程度からのスタートだけど。

 初めての食料輸出の日にはレオールもヴォルデの駅へと来てくれた。

「思ったよりも早かったな」

「皆、張り切っちゃって」

 実はこれには理由がある。

 鉱業の充実とともにヴォルデの人口も増加していた。

 メインは鉱業への従事であるが、その家族で手すきの人も増えたのだ。

 そのような人たちにはいきなりの農業は難しいが、貝やエビなどは比較的空き時間でも漁獲することが可能だ。

 また、ヴォルデ周辺の商人に呼びかけるとすぐにある程度の人手が集まった。

「ヴォルデの水産物には注目していたんですがね……何せこれまでの領主様が」

「現地の方々からもこれまでは良く思われなくて」

 ヴォルデ近隣の商人も山脈と水系の恵みには注目していたようだ。

 しかし様々な理由から手控えていたらしい。それが私によって状況が大きく変わった。

 なので人の手配や協力も比較的スムーズに行ったのだ。

「コーデリア殿下が取り仕切られるのであれば、安心して商売ができます」

「ええ、王都でのご活躍は地方にまでしっかりと届いておりますので」

 評判というものはこういう時に役立つものだ。

 とりあえず私より背が高い大きな木箱、二十個に水産物を詰め込んで輸出する。

「最初の取引でこれだけの量があるなら、期待できるな」

「そうね、人員も増やしていくし」

 資源量的にもかなりの余裕がある。

 なにせ周囲丸ごと山で栄養豊かな水が流れ込んでくるのだから。

(漁獲しすぎないよう気を付けないといけないけれど……でも鉱業全盛期にも枯渇は全然しなかったってあるのよね。まぁ、簡単には減らないでしょう)

 帝国の食料担当官が木箱をひとつずつチェックしていく。

「処理済みのニジマス、加熱済みのエビ、洗浄済みの貝……はい、どれも大丈夫です」

「ではこれで受け取ろう」

 レオールがさらさらと書類にサインする。

 簡単なようだが、これはミスリルで築いた信頼があってこそだ。

「鉄道輸送なら、これで数時間。夜には食卓にも並ぶな」

「もうそんなに手配してたの?」

「荷下ろし、売り先、どれも調整済みだ。水産物はやはり鮮度が問題だからな」

 そこでレオールが木箱の大群に目を向ける。

「ヴォルデの水産物が来ると告知したら、商人だけじゃなくてレストランからも欲しいと来てな。それだけ期待値が高いんだ」

「嬉しい限りね」

 求める先があるのはいいことだ。

「それでもうひとつ、次回から少しテストしたいことがある」

「何かしら?」

 レオールが手招きすると薄い金属製の箱が台車に乗ってやってきた。

 わずかに魔力を感じる……魔獣の素材が使われているみたいだ。

「これは試作品なのだが、移動式の水槽だ」

「水槽? これが?」

「魚が生きるのに清浄さや酸素などを魔力で供給する。生きたまま輸送できるようにする箱だ」

「凄いじゃない……! 本で読んだけど、まさか実物を見られるなんて」

「やはり知っていたか」

 頷いて私は頭の中の本を引っ張り出す。

 水産物をなるべく新鮮なまま運ぶ、というのは長年の課題だ。

 特に北方の国々は水産に依存しており、そのため技術開発も進んでいる。

 冷凍輸送、水槽での輸送、風乾などなど……。

 北方の国々では水槽ごと鉄道輸送するのが実用化されているとか。

「これは帝国製なの?」

「帝国の最新鋭だ。核になる技術は北のとある国から譲ってもらったものだがな」

 レオールのニュアンスから、経緯は深掘りしないほうが良さそうだと察する。

 この水槽の力が本物であれば、そう簡単に渡すものではないからだ。

「いくつか手元にある。エベラルド領ではあまり有効活用できそうになかったが、今回の件はちょうど良い」

 帝国の人たちがふんふんと頷いている。

 よほどヴォルデの新鮮な水産物が食べたいらしい。

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