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【書籍化】捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第4章 発展と焦燥

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22.新しい収入源

「そうね……こちらとしても新鮮なまま輸出できるのなら、可能性が広がるわ」

「説明書と人員も置いていこう。もちろん対応頂く分、費用は上乗せする」

「助かるわ。じゃあ、早速次回から進めていきましょう」

「この水槽には様々な素材が使われている。その中でも重要なのは……スライムの核だ」

「えっ? もしかして、あの?」

「あそこまで強力な変異スライムではない。しかし炎スライムの核は水温を適切に保つのに必要不可欠。その他にも酸素を生み出すのに、これがもっとも効率的だ」

「ちょっと感慨深いわね……」

 私は見たものを忘れない。あの変異スライムの本質は炎で、脅威だった。

 だが脅威を乗り越えた先には新たな技術があるのだ。

「あれから疑わしい変異スライムに対しての戦闘マニュアルも刷新された。今、炎スライムの核は潤沢だからな。活用できれば、さらに良い」

「ええ、そうね。新鮮な水産物を送ってあげるわ」

 ということで駅の側のレストランで食事会を行い、レオールは帰っていった。

 着実にレオールとの連絡ができるようになっていると感じる。

 ちょっと私に構いすぎな気もするけれど……悪い気はしなかった。

 彼は無駄なことはしない主義だ。自分の領地にもプラスだからする。

 輸送用水槽を使ってみると、それほどの問題は生じなかった。

「元気すぎるニジマスには向かないようですが……」

「それはそうね……」

 ニジマスは少なめにするしかない。でも貝類など動きが少ない水産物にはかなり適している。

 数日後、試しに輸送式水槽に生きたまま水産物を入れてレオールへ送る。

 すぐレオールからは御礼の書状が届いた。

『美味なるヴォルデの恵みに感謝申し上げる。極めて新鮮なヴォルデの水産物に食べた者全員が舌鼓を打ち、心より満足している。さらなる水産物が今から楽しみだ』

 なんだかちょっと可愛い文面だ。

本当にあの時の食事が美味しかったのだろう。

「レシピを教えてあげたら喜ぶかしら?」

 手紙にエビの殻で出汁を取り、魚の切り身と貝と米を入れて炊きこむレシピを書く。

 それについてもすぐに返事が来た。

『とても美味しかった。水産物と米の組み合わせは帝国では一般的ではなかったが、新たな味覚の地平線を見た気がする』

 ……思ったよりもレオールは食に対する興味が強いのだろうか。

 帝国大学ではそんな側面は見受けられなかったけど。

 彼の知らない側面を知れて、嬉しくなる。

 そして食料の交易が進んで半月ほど上手く経過して。

 真夏の日、私は帝国への食料輸出についてトルドや他の代表者と面会した。

「お陰様で帝国への輸出は順調よ。はい、これが直近の収支報告書」

「おお……我々にも収支を報告して頂けるとは……」

 報告書を渡されたトルドたちが何やら感動していた。

 ううん、これまではやっていなかったのか。でも私は開示したほうがいいと思っている。

 開かれた収支には信頼が集まる。お互いに次をどうすべきか考えられるし。

「にしても、わずかな期間に利益として帝国金貨五百枚ほどですか」

「ええ、まだ開始して間もないにしては充分じゃないかしら」

 帝国金貨一枚でおおよそ公国の農民一家族が一年を過ごせるだろう。

 ヴォルデ数万の人口からしたら大きい。

「帝国は随分とお金を持っておられるようですね。水槽の件といい……」

「あんなものは見たことない。帝国は進んでおるのぉ」

 トルドたちは帝国の資金と技術に素直に関心していた。

 反発がないことはいいことだ。

「魔獣の生息地まで開拓したいようで、色々と投入してくれているのよ」

「それは本当に喜ばしく思います。では、食料も一時的なものではなく……?」

「まだまだ拡大したいようね。問題はないかしら?」

「もちろんでございます……! これでさらに働き甲斐も出るというもの!」

 良かった、私の見立ては間違っていなかった。

 ヴォルデの余っていた力を活用できて何よりだ。

「ヴォルデの水の恵みには秘かに自信を持っていたのですよ。お任せあれ!」

「その通り、こんなに活気があるのは何十年振りか……」

 思った以上にトルドたちはやる気だった。

 むしろ彼らはこうした仕事を求めていたのかも。

「利益は当面、道や倉庫、馬車などの整備に再投資するわ。そうすればさらに流通網が発達して、利益を見込めるはず」

「コーデリア様のご意向通りでよいかと。ですが……そんなにヴォルデのためにして頂いてよいのでしょうか? 収支報告書を拝見しても、コーデリア様の歳費が非常に少ないような」

 トルドたちが不安そうに眉を寄せる。

 これまでの領主たちのやり様が伺いしれる態度だ……。

(私が王妃になってからは改めたんだけどね)

 これまでの地方の領地経営は不透明な部分が多く、領主や代官の利権になっていた。

 やれ経費、王都への献上品、賄賂、不正蓄財などなど。

これだと税収が領民の目に見えないところに消え、不信感が残る。

 私はなるべくそのようなことがないよう、透明化を進めてきた。

 主に書類上からであるが、必要な時はルーインに動いてもらって。

 私は贅沢がしたいわけじゃない。まずは領地だ。まだヴォルデにはできることが沢山ある。

「問題ないわ。今は投資に専念して、供給を安定させる時。帝国がたくさん買ってくれるうちに色々と整えたいの」

「承知いたしました。しかし、あとひとつだけ……」

「何かしら?」

「ミスリルにしてもコーデリア様にしても、安全が第一。護衛の費用はもっと増やしてもよいかと」

「……そうね」

 トルドの懸念は私も持っていた。

 ミスリルは高価で、効率化を進めるということは盗難や襲撃の危険も増す。

 だが、私はにこりと微笑んだ。もちろんその辺りも考えてある。

 恐らくはトルドたちの思っている以上に。

「大丈夫よ。その点も抜かりなく、手は打つわ」

 こうして会合は終わり、帝国への輸出についても合意ができた。

 やはりヴォルデの住人は帝国への友好度がかなり高い。

(最初、それを私に見せなかったのは警戒されていたからね)

 わからなくもない。

 ディルダの妃で中央から来た私に対して、すぐに本心を明らかにはできないだろう。

 でも今は違う。

 私には――より良く見えるようになってきた。住民の心と望むこと。

 その先にきっと、私の道も続いているはずだ。

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