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捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~  作者: りょうと かえ
第3章 領地の可能性

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16.領地開発の成果

 レオールへ手紙を書くとすぐに受け取りの手配を行うと連絡があった。

 代理の使者が来るのだろう。私はルーインへ出迎えの用意をするよう伝えた。

「動きが早いわね。精錬されたミスリルだけじゃなく、色々と見せないと……」

「精錬施設や鉱山もですよね?」

「ええ、彼に協力してもらったところは全部ね」

 三日後、ヴォルデの駅で私は緊張しながら使者を待ち受けた。

 隣には布によって隠されたミスリルとそれを乗せる台車。ルーインが押してくれる。

 煙を噴き上げ、鉄道が到着した。

 東の帝国側から来た列車は公国製のものより重厚で、揺れが少ないように思う。

 これは公国と帝国の技術差によるものだろう。

 ごくり……と思って待ち構えていると、最前列の車両からレオールと彼の側近が現れた。黒の軍服を着こみ、格調高い装いで。

 ホームの離れたところでレオール一行を出迎える。

「直接、レオール様が来られるとは」

「代理を送ろうと思ったのだがな。直に見たくなった」

 不器用ではあるが、緑の瞳には優しさがある。

 彼の佇まいに安心しながら私は微笑んだ。

「あなたの協力のおかげでミスリルが生産できたわ」

 ルーインに目配せすると、彼は台車を前に押した。

 さっと布を取り払ってミスリルを表に出す。

 同時に魔力とともに青の輝きがホームの中に放たれる。

 ミスリルは長方形の延べ棒に成形され、台車の上に重ねられていた。

 レオールの側近が感嘆の声を漏らす。

「おおっ、まさしく……この輝きは……!」

「しかも高純度のミスリル。まさかこの短期間で……っ」

 レオールの瞳は揺れ動かない。だが、わずかに目の奥が変わった。

 喜んでくれている、と私は思った。

「手に取ってもいいか?」

「ええ、どうぞ」

 彼の両手がミスリルの延べ棒へ伸びる。

 そのまま彼はそっと大切そうに延べ棒を両手で持った。

 驚くほど静かに持って、レオールは目を閉じる。

(魔術を使っているのかな……?)

 私は魔術について一般人レベル。レオール級の魔術師が何をしているのかわからない。

 ややあって、彼は目を開けた。どことなく満足げだ。

「うむ、思った以上の品質だ。良質の鉱石がしっかりと精錬されている」

「じゃあ……!」

「当初の価格に上乗せしてもいいくらいだな」

「ええっ!? それは嬉しいけれど……」

「ふっ、それについても追々話そう」

 そうだ、まだ視察が残っていた。

 レオールを案内して駅を出る。そのまま私たちはミスリルの精錬施設へ。

 施設は簡易なままだが、見てもらう分には支障ないはず……。雨漏りもしていないし。

 外壁や内装の武骨さは許してもらおう。多分、レオールならその辺は気にしない。

 大釜を複数稼働させる現場は熱気がすごい。

 今日も朝からミスリルの精錬をしているのだ。

 レオールは屈強な軍人らしく、汗ひとつ眉ひとつ動かさない。

「ふぅーむ……」

「なにか?」

「施設は相応に経年していそうだが、さきほどのミスリルは良かった。職人の腕が良いのだな」

「経験豊富な方々がおられますからね」

 ふふんと胸を張る。これもヴォルデの人たちが協力してくれたおかげだ。

 かつて精錬施設で働いていた人たちの大半が戻ってきてくれている。だからすぐに品質の良いミスリルが出来上がっているのだ。

 施設自体も細かい資材、工具は日々更新している。

 この辺りは政務で磨いた実務能力が役立っていた。

 施設の責任者とも挨拶を交わし、精錬工程をレオールはじっくりと視察していく。

 エベラルド領にも鉱業はあるので、比較しているのだろう。

「この分では心配はなさそうだな。投資した甲斐があった」

「どういたしまして」

「君ならやってくれると思っていた。実績があるからな」

 人前だからか結構持ち上げてくれている気がする。

 でも悪い気はしない。ふふんと心の中では思っておこう。

 精錬施設の次は鉱山へ。ヴォルデ最上の馬車へ乗って向かう。

 真夏であるがヴォルデ山脈の山頂にはまだちょっと雪が残っていた。レオールの目も盆地を囲む山脈に向いている。

「こちらでは魔獣は大丈夫か?」

「イエティはヴォルデには出現していないわ」

「なら良かった。しかし……夏にも雪がはっきり残るんだな」

「エベラルド領はそうではないの?」

「山を隔てたこちらの領地では、雪は残らない。標高が低いのもあるがな。ヴォルデは数回来たことがあるが、いつでもこれらの山々には圧倒される」

 道は広がり、舗装された区間も伸びている。いずれは全部の主要な道を整備していきたい。

 鉱山への道も整備されて、数時間で到着する。

 今やこの鉱山は新たな鉱脈に沸き、数百人が働く現場になっていた。

 馬車から降りてレオールを案内する。

「盛況だな」

「おかげさまでね。あれから他にもいくつか有望な鉱脈が見つかって、生産量はしばらくは維持できそうよ」

「まさに君の手腕だな」

「ふふっ……そうかしら?」

「今だから言うが、俺から見てヴォルデの鉱脈は枯れているようには思えなかった。投資は必要だろうが、まだ生産は可能なはずだ――と」

 帝国は技術革新を重んじている。他国との交流も盛んで、新技術も目覚ましい。

 帝国には帝国なりの目算はあったということか。

 公国もヴォルデに心血は注いでいなかったので、仕方ないけれど。

「とはいえ何より難しいと判断したのは、人の心だ。ヴォルデの民は心を閉ざしていた。現地の理解と協力がなければ鉱業は困難だろう」

「本当にその通りね……」

 鉱業は重労働なうえに、命懸けであり環境破壊と紙一重だ。岩盤を砕いた残骸は処理せねばならず、下手をすると坑道も崩落しかねない。

 だから信用がない上層部の元で鉱業はできない。

 信頼がなければ成立しないのだ。

「これほどヴォルデの民が君の計画に協力すること、それも手腕のうちだ」

 レオールにそこまで褒められるとちょっと気恥ずかしい。

 鉱山も一通り視察すると、午後の良い時間になった。

 夕陽が傾きつつあり、白の残った山もオレンジに染まる。

 最後に私の屋敷の広間にレオールを招く。ヴォルデの特産品を中心とした晩餐だ。

「ヴォルデの山と川の幸よ。どうぞ召し上がって」

「ありがたく頂戴しよう」

 ヴォルデは山に囲まれている関係上、風と寒さで農業が難しい。

 代わりに雪が融けた豊かな水と魚がある。夏の代表はニジマスだ。

 山からの栄養でたっぷりと太ったニジマスの味はムニエルにすると最高。

 脂多めの身をさっぱりとレモンソースで頂いてもらう。

(私もこれが好きなのよね~)

 レオールへ出す品ではあるが、私自身も楽しみにしていた。

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