13.ヴォルデの思い
トルドたちはそのまま人を集めて本格的な採掘に従事するとのこと。
ある程度の規模になるまで多少の日数はかかるだろう。
翌日、私は精錬施設へと向かった。
鉱山から南に精錬施設はある。ちょうど鉱山と私の屋敷の間くらいか……。
施設は簡易な建材で作られていて、尖塔が空を突く。
「資料にある通りね」
「この施設を復旧させるのですか?」
建材はかなりボロボロで、敷地の外から見るだけでも屋根に穴が空いていそうな……。
「さすがにそれは無理よ。それより駅の近くに心臓部を移しましょう」
「ええっ!? かなりの大工事ですね」
「でもそのほうが効率的よ。どうせミスリルはよそに買ってもらわないといけないし」
計算した書類を取り出し、ふむふむと再確認する。
鉱山からの道を整備して施設まで運び、そこから精錬してヴォルデの外に輸出するのだ。
当面の資金はレオールから借りられたので、それらを全力投入して精錬施設への道筋をつける。精錬施設の要は魔力を扱う大釜だ。複数の釜を使い、ミスリルは精錬される。
今までならこの移動も一苦労。だが、今なら蒸気機関車で運ぶことができる。
コントロールが難しく荷物しか運べないが、小さな蒸気機関車ならうってつけだ。
公国では非常に希少だが、エベラルド領にも存在する。
これらを借りる協定も済ませているので、鉄道から運んでもらえればすぐに作業できる。
蒸気機関車をここまで運んで、それで大釜を移す。
ヴォルデ自体の作業は一日で終わるはずだ。
(これも技術の恩恵ね)
馬車自体も進歩して、より重くより大きい荷を運べるようになっている。
(よしよし……!)
蒸気機関車はエベラルド領からすぐに到着して、作業が始まった。
輸送学で学んだ通り、大釜を移して簡易な工場を駅の近くに作る。
ちなみに工事も私の予想を遥かに上回る速度で進んだ。
「突然の工事だから、人手が集まらないかと思ったけれど……」
「現地の方々が非常にやる気ですね!」
鉱石が再度見つかったということで、ヴォルデ全体にやる気が戻ってきている。
集まるかどうかわからなかった工事には、列に並んでまで働こうという人であふれているのだ。私が来たことに白けていたヴォルデではなくなっている。
「よし……っ!」
労働者の管理統率と資材調達なら、お手の物。散々王宮でやってきたから。
書類を整えてささっと片付けていくと、私の様子に帝国の専門家たちが驚いていた。
「コーデリア殿下は本当に書類を忘れられないのか」
「ううむ、帝国官僚にもこのような方はおられん……」
さすがにこれで調子に乗ることはないけれど。でも来てもらった他国の方々、ついてきてくれる現地の住民に恥じない仕事はしていきたい。
新しい精錬施設にしても建築材は当面使いまわしでもいい。
蒸気機関車も活用し、急ピッチで作業が進む。
同時に採掘も順調であるようだ。日々、採掘量が報告されてくる。
一週間ほどで精錬施設も形になった。
本当は今年中になんとかなれば……と思っていたが、かなり速く形になってくれた。
施設の開業日も大急ぎで設定し、ヴォルデの期待に応えられるようにする。
そしてあっという間に夏のよく晴れた、暖かい風が吹く日に精錬施設は開業した。
突貫工事だが安全性は担保されている。外壁のつぎはぎ加減は……追々なんとかしよう。
それでも数十年振りに開業した精錬施設だ。
施設は大賑わい。ヴォルデの各地から人が集まってくれた。
「これも皆のおかげよ!」
公国特産のパン、ヴォルデ産の牛肉、ビールを振る舞う。
これらのお金も帝国から借りたものだ。いずれミスリルでちゃんと返すから……!
一杯やりたい気分ではあるが、そこは控えておく。ヴォルデに来てから私は禁酒していた。
まぁ、そこまで酒を飲みたい性質ではないのだけれど、なんとなく憚られるのだ。
トルドたちは本当に感慨深く精錬施設を見上げた。
「また釜に熱が戻ろうとは……!」
もう少しで施設の大釜が稼働し、鉱石を溶かしてミスリルを取り出す。
それらを冷やして、さらに純度が必要なら高熱で溶解させてを繰り返す。
そのための複数の大釜だ。そこに火が入る。
「コーデリア様、今回の開業は住民を代表して厚く感謝申し上げたい」
「いいえ、ここまで進んだのもあなた方のおかげよ。ルーインから聞いているわ。鉱業に携わっていた方々を呼び戻し、採掘も前進させてくれたと」
何十もの木箱に精錬を待つ鉱石が置かれている。
これらはヴォルデの希望であり、民の汗の結晶だ。
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