表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/6

2 黒の刻板

 和馬は、手の中に残った、『黒い板』を見つめた。学校で使っていた電子機器ではない。指先で触れれば、表面は磨き上げられた黒曜石のように冷たく、その奥底では銀色の液体が、意思を持つ生き物のように

どろどろとのたうっている。


(……これ、何なんだよ。重い。冷たい。……それに何だこれ?変なザラザラ……)


和馬は無意識に、板の側面にある「くぼみ」を指でなぞった。

すると、板は和馬の体温に反応したのか、不気味な脈動を始めた。


「__接続。魂の波長(ソウルレート)を確認__」


脳内に直接響く、無機質な声。

和馬は「うわああ!」と叫びその板を投げ捨てようとした。しかし、板は磁石のように掌に吸い付いて離れない。それどころか、和馬の指先から微かな「何か」__気力か寿命かあるいは精神力か__をずるずると吸い取り始めたのだ。


(……あ、あ、力が抜ける……。誰か、これ、外してくれ……!)


和馬は膝をつき、泣きながら必死に板を石床に叩きつけようとした。

その様子を見ていたあの老人・ジルはあまりの神々しさに思わず絶叫する。


「ああ……見ろ!看守長が、自らの尊き魂を『刻板』に注ぎ込んでおられる!監獄を維持するために、自らを(にえ)とするその覚悟……。何と慈悲深くそして凶器に満ちた統治だっ!」


(違うっ!勝手にこの板に吸われているんだよっ!爺さん、助けてくれよっ!)


和馬の叫びは、『刻板』の変換によって、ジルは全く違う事をみんなに告げる。


「聞いたか!『皆を救って』だと!あの方は、この監獄に囚われた我ら全ての罪を、あの板に吸い取って肩代わりして下さると仰っておられるのだ!__おい、皆の者!跪け!新しい看守長様がわれらの汚れを飲み込んで下さるぞ!」


「「「「おおお……看守長……!!」」」」


壁の向こう側から、祈りと懺悔の慟哭が沸き上がる。

和馬は、自便のエネルギーが板に吸い取られる感覚に耐えきれず、白目をむいてその場に倒れ込んだ。

その際、偶然にも板の表面を掌で強く撫でまわしてしまった。


ウィィィィィン!


監獄の鉄格子の入り口が一斉に開かれた。


「……え?えっ?」


和馬は、力が抜けたまま床に伏し、大きく開かれた無数の扉を見上げた。

静寂。

囚人たちは、一歩踏み出せば自由になれるはずのその状況で、はじめは恐怖のあまり、誰一人として動こうとしなかった。


「……成程。あの方は、扉を開けてこう仰っているのだ」


ジルが、震える声でその「沈黙の真意」を翻訳する。


「『逃げたければ逃げろ。その瞬間に、お前たちの魂の残り香すら、この板で全て食らいつくしてやろう。』……とな。……ああ、恐ろしい。これほどまでに残酷な『自由』を、私は見たことがない……!」


和馬は、ただ床にへばりついたまま、泣きながら呟いた。


(……帰りたい……。もう、本当に……やだよう……おかあさーん)


ジルは皆に言葉を伝える。


「あの方は『何処へも行かせない』と仰っている。我らは永遠に、この方の支配という名の地獄に繋がれたという事だ」

「……それでも、こんなところで朽ち果てるのは嫌だっ!」

「そうだそうだ!……ダメもとで外に出ることが出来れば……」


囚人たちは、やがてバラバラに、外へ向かって逃げ出し始めた。

自分のモチベが心配になってきた。頑張ろう(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ