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26話 シェリアのハサミが魔法すぎる

 ◇◇◇◇


「主様! 結婚式を挙げましょう!!」


 ギルバートを撃退後__勇者スズハと、最後の三女神であるシェリアを仲間として迎えてから、数日が経過した。

 スズハに斬られた首筋の傷は、跡を残しながらもほぼ完全に癒えた。さすがは完璧メイドのクラリスだ。


 魔界には似合わない晴れ間が広がる昼下がり。

 しかし、それは無惨にもシェリアによってバラバラに切り刻まれた。


 思わず魔法の練習をしていた手が止まり、性質変化で生み出した氷の塊が頭に落下してくる。鈍い音が響き、文字通りお星様が視界の中で飛び回る。とても痛い。


「急にどうしたんだ?」


 シェリアはずっと俺のことをスト……いや、観察していたようだが、一体どこに惚れる要素があったのか……。


 自慢じゃないが妻はおろか、彼女なんてほぼいたこともない。

 そんな俺のモテ期が到来してしまったようだ……。ハハハ、ヤンデレちゃん、怖い……!


「やはり愛し合う二人がするべきは挙式!

 こればかりは譲れませんの!


 今まで惚れた殿方もいましたが、主様は別格です。先代魔王の幹部、剣技のジェラルドに勝利した時は胸が高鳴りましたわ!


 だから主様? 私を純白のドレスに染め上げて下さいまし!」


 反射的に顔が青ざめてしまう。

 この子、本気だぁ……!!

 ここで断ったりなんてしたら……!!


 思わず立てかけてあるハサミを見てしまう。

 すると、シェリアは視線に気づいて等身大ほどもある巨大なハサミを軽々と片手で持ち上げて見せてくれる。


 まるでオモチャを親に自慢する純粋な目で見つめてくるのは、本当に心臓に悪い。


「この縁切りのハサミ。エクスタスが気になるのですか? 主様?」


「い、いや……! 随分と軽々と振り回すから、軽いのかなーって」


「お持ちになってみますか?」


 手を触れた瞬間、重過ぎてもう本当にどうにもならない。体勢が思わずよろけると、シェリアが優しく抱きかかえてくれた。


「あぁ、悪い。でもこれは俺の魔剣グラムより遥かに重いぞ! よく片手で持てるな!

 流石は女神様だ!」


「……っー!!!」


 えっ、なんで他の女神の二人は頭を抱えてるの? なんで葬式みたいに天に召されようとしているの??

 俺、やばいこと言っちゃったの!?


「主様ぁ……。愛しておりますぅ……」


 恍惚とした表情で目にハートを浮かべているシェリアは、話の流れを強引に元の軌道へ戻す。


「それで主様? 中央国家ユグドラシルでの挙式についてですけれど」


 もう場所まで決まってんの!? ひぃい!!

 ユグドラシルという言葉を聞いて、スズハの肩がピクっと動いたが、それよりも俺の身が危ない!!


「あ、うん。結婚式やるのね。

 まぁでもそうだよなぁ。

 シェリアとだけするってわけにもいかないんだけど……」


 椅子に座っている契約結婚した女神二人を見る。アリシャは両肩を抱いて距離を取り、セイレスは目を閉じて紅茶を静かに飲んでいる。


 関わりたくないのが伝わってくる。

 女神様達はいつだってブレない。


 話がまとまりかけた時、セイレスが中央国家ユグドラシルについて軽く説明し、一つの問題が浮かんでくる。


「中央国家は街の中央にある世界樹によってアンチマジックと魔族避けのバリアが張られているわ。

 アリシャの転移魔法で近くに行けたとしても、クレイヴは街の中に入れないと思うけれど」


 なるほど! なら結婚式は諦めよう!!


「私の縁切りの力を忘れていませんこと? 主様を縛る魔族との縁を切れば、入ることなど造作もありませんわ」


 エクスタスを開いてチョキン、チョキンと音を立てている。

 青ざめてつい大事なところを押さえてしまう。

 マジでいつか切られるんじゃないだろうな……。


「痛くしないでね?」


「ご心配には及びませんわ。私には主様から伸びる魔族との縁が、はっきり見えておりますから。

 主様にしてみれば、何もない空間を切るだけのことですわ。ひひひ……」


 今、引き笑いした!!

 猛烈に不安になってきた……。


「では善は急げと言いますし、早速」


 __チョキン。


 あれ? 本当に痛くない。

 というか、なんか身体が軽くなった気がする!


「これで終わり?」


「ええ、本来人を縛る縁は見えないものですから。主様は、魔族と魔王としての縁が複雑に絡み合っていましたが、魔族のみを斬らせて頂きましたわ」


「身体が軽くなった気がするよ。……あ、ありがとうシェリア」


「縁を切って喜ばれるのはいいものですわ。

 こちらまで嬉しくなってしまいますの。


 これで主様も中央国家ユグドラシルに入れるようになりましたし、準備は整いましたわ。

 アリシャ。近くまでお願いできますわよね?」


「え、ええ。それくらいなら協力するわよ」


 その流れで、スズハが遠慮がちに手を挙げて口を開く。


「あの、中央国家ユグドラシルに行くなら、一度家に戻りたい。お母さんの様子を見に、実家に帰りたい。

 私の家、中央国家ユグドラシルにあるから」

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