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24話 三柱の女神

 何だあの剣は……!

 アリシャじゃない! この嫌な感覚……! 殺意の塊がスズハに迫っている!!


 青い刀身が吸い込まれるように近づくが、スズハは気づいていない。

 咄嗟に手を伸ばすが、その一メートルがあまりにも遠い。


 クソッ! 間に合わな……!


 一つの転移魔法陣から剣のみが飛来し、貫こうとした瞬間__。

 巨大な深い紫色のハサミを持った影が、青い剣を弾き飛ばした。


 勇者を討ち取ろうとする剣は、先代魔王軍の誰かだ。勇者の緊張が緩んだ瞬間をずっと待っていたのだろう。


 だが、俺には一人のメイドと二人の女神の味方しかいない。

 助けてくれる人物なんて! それこそ……!


 その姿は、黒いゴスロリ服に身を包み、白いラインが服の上品さを際立たせている。

 頭につけているカチューシャは赤をベースに、こちらも白いラインが縁で際立っていた。


 その表情はどこか無機質で、ブラウンの瞳からはあまり力強さは感じられなかった。


 動きそのものは、明らかに人間離れしている。

 四方を囲まれたこの魔王城の、ガラス窓を突き破って入って来たのだろう。


 窓まではとても生身の人間では入ってこられない高さだ。ともあれ、助かった……。

 スズハを助けてくれたことには感謝しないと。


「誰かはわからないが助かったよ」


「ふふふ、愛しのあなたが望むのなら、私は憎い相手であろうと手を貸しますわ?」


 黒いゴスロリのスカートを摘み、上品に礼をしている。その姿は、どこか一枚の絵画のようだ。


「それよりも、そこの魔法陣の卑怯なお人?

 出ていらっしゃいな」


「今の攻撃を防ぐとは、余程この魔王に執着していた者がいたようだな」


「ええ、ええ……!

 私はこのお方をずっと側で見ておりましたから」


 転移魔法陣から男の姿が現れ、今の俺を上回る魔力を持った敵が姿を現す。


 圧倒的な存在感を放つ存在は、赤い猛禽類にも似た鋭い目つき。白い髪は、風の吹いていない魔王城の中でも、放たれる魔力に揺らめいていた。


「ギル……バート!」


 クラリスが唇を噛んで名を呼ぶ。

 イリス国で撃退したガルニスを、回収しに来た奴か!


 緊張しているのを察してか、軽やかにバックステップをしてゴスロリの少女が俺の横へやってくる。


「主様? 私にも二人と同じ指輪を下さいますか?」


 この子……俺が指輪を介して女神達に魔力を分け与えていることも知っている!

 一体何者なんだ!?


「自己紹介はまた後で、私はあなたの味方ですわ」


「わかった、君を信じる。でも本当に後でじっくり自己紹介してくれよな!」


「ええ、承りましたわ」


 俺が懐から指輪を取り出そうとした時、ギルバートが一瞬で距離を詰めるべく構えを取った。


「させん」


 確実に俺を殺す気だ。急げ! 急げ急げ!!

 焦る手が震えて、なかなか指輪が保管してある場所に手が届かない。


 ギルバートの刃が迫る。

 あと数メートルで心臓を貫かれる距離。

 指輪に手が届いた瞬間、ギルバートの攻撃は俺の胸に切先が触れる。


 __ギィイインン!!


 食い込むと思われた攻撃は、アリシャとクラリスの剣で防がれる。


 二人がかりで、ようやく抑えている。

 だが、思いがけず止まった自らの剣に驚いたのは、ギルバート本人のようだった。


「ほう。止めるか」


「知ってる? あなたの自慢の剣も、無機物なのよ」


 アリシャの剣が白く光り始め、ギルバートの持つ青い剣に一瞬でヒビが入った。

 驚いてギルバートが飛び退き、欠けた剣を見てからアリシャを見る。


「なるほど、それが女神の権能か」


「さぁ? どうかしらね?」


「まあいい、剣一本無くなったところで、お前達の命運は変わらん」


「本当にそうかしら?」


「……」


 俺の魔力が、女神二人に渡した時よりごっそりと持っていかれ、三人目の契約者に渡っていく。


「そうか。お前のそのハサミは記憶しているぞ。

 遂にこの場に全ての三女神が揃ってしまったというわけか」


「あら? 私はあなたなんて知りませんわ」


 黒い魔力のオーラがゆらめいてギルバートを睨むこの少女が最後の三女神なのか!

 それに、このハサミ。初めて見るというのに悪寒がするほどの存在感だ。


 ひょっとすると戦闘ならクラリスと並ぶ……。いや、それ以上の存在なのかもしれない。


「さぁ、始めましょう?

 三柱の女神を従えた魔王に挑むというのなら__その覚悟、見せていただきますわ」

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