22話 俺のやり方
「会話するつもりはないと言った」
微妙な既視感があった。
アリシャも初めはこんな感じだったな。相手は勇者だけど。
「武器を失ったとはいえ、君には魔法も体術だってある。なぜそれで立ち向かってこない?」
「あなたには関係ないでしょ」
「俺は魔王クレイヴではなく、結城紡として、君と話がしたい」
「っ!! どこで……それを」
「俺もただ、この世界に生まれてきた魔王ではないということさ。
君はまだ死ぬには早過ぎる年齢だし、やっぱり話し合おう。なんで俺が日本人の名前を名乗ったか、知りたいでしょ?」
「それは……!! 魔王のあなたが父親を拷問して吐かせたに違い……ない」
語尾が震えて消えるように小さくなっていく。
自信がないのだろう。こうして魔剣グラムを床に置き、片膝をついて戦闘態勢を解いた俺が、本当に敵なのかどうか__。
ここで一時休戦が決まったと思った矢先、セイレスの制止を振り切ってアリシャがまた扉を豪快に開けた。今度は白い仮面をつけず、素顔のままだ。
「あなたねぇ! 黙って見てれば!
クレイヴがそんなことする男に見えるの!?」
「アリシャ! もう少しで話がまとまりそうだったのに! ごめんなさいクレイヴ。
出てくるつもりはなかったのだけど」
最悪だ……。話が絶対に拗れる。
悪い予感は、スズハの口から放たれた言葉で一気に確信へと変わった。
「洗脳……魔法か」
「え? 洗脳?」
「危ないところだった。あなた、優しく話しかけてきて私を取り込むつもりだったのね!!」
「いや! おい!!
まず話をしよう! 俺達の話はこれからのはずだ!」
「黙れ!!! 女神アリシャだけでなくセイレス様までたぶらかすとは!
万死に値する!! 魔王クレイヴ!!
今ここで、やはり殺す……!!」
勇者の身体から白い魔力が溢れ、感情の昂りかはわからない__とにかく今までで一番の輝きを放っている。
「アリシャ! セイレスは君が守れ!!
今の勇者には何を言っても届かない!!」
セイレスに引っ張られる形でアリシャが連れていかれる。まったく、後でお説教だぞ。
攻撃するにしても聖剣がなければと思ったが、勇者の「来い!!」という言葉のみで空中を移動して手元に戻っていく。
マジか!
さっきどころじゃないぞこの魔力出力は!
放出量なら魔王の俺を超えている!!
半歩、身体が勝手に引いた。
先代魔王軍の幹部ジェラルドを倒して自信をつけた。それでも、やっぱり死ぬ一歩手前まで来たら怖い!!
「魔王様」
「クラリスか」
「ここは私にお任せ下さい」
「ありがとう。でも俺がやらなきゃダメなんだ。死にそうになったら……その時は、頼んだ」
「かしこまりました。ご武運を」
魔剣グラムを握る手が震える。
だが、ここで逃げるわけには、頼りになる側近に任せるわけにはいかない!
これが俺のやり方だ!!
「ふぅ……」
大きく息を吐き、やったことはないがやるしかない。
魔王として全魔力リソースを身体強化魔法に充てる。一片たりとも漏らす余裕はない。
完全な魔力コントロールが必要になるッ!!
一度集中するために、あえて視界を閉じる。
勇者スズハが一瞬で音もなく消え、俺の目の前に現れる。首筋に剣先が触れる直前、俺は__手に持っている魔剣グラムを手放した。




