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転生したら世界で唯一複数紋章を内包できる【追憶の紋章】を授かっていた件 ~努力と想いを継ぐ紋章の力で運命をねじ伏せる~  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第4章 少年期 叙爵と王女様

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第53話 ルーナ?

「う~ん……」


「どうした? ステラの土産が、まだ決まらないのか?」


 宿に戻り、例の少女のことが頭から離れずにいると、ちょうど貴族との会食を終えたホークが部屋へ戻ってきた。


「うん……それもあるんだけどね……」


 そう前置きしてから、俺は昼間に遭遇した、空から落ちてきた少女のことをホークに話す。


「……メナト。それは、絶対にステラにだけは言うなよ?」


「言わないよ……でも、どうして?」


「理由は聞くな。どうしてもだ……それにしても、気になる話だな。その子、追われていたんだろ?」


「うん。でも、追っていた人たちは、なんというか……悪い人には見えなかった」


「気になるなら、また明日も街を歩いてみればいいんじゃないか?」


「気にはなるけど……まずはステラのお土産を決めないと。ステラって、何が好きだったっけ?」


「まぁ、ステラなら、メナトが一生懸命選んだ物なら何でも喜ぶだろう。ただ、プレゼントする側はそれじゃあ困るんだよな」


 その言葉に、俺も苦笑する。

 確かに、ステラなら何を渡しても喜んでくれる気はする。

 だが、どうせなら意味のある物を渡したい。


「あと二日ある。街を歩きながら、ゆっくり考えればいいさ」


「うん……ところで、お父さんの方はどうだった?」


「……そうだな」


 ホークは一拍置いてから、静かに語り始めた。


「ヘロス王国は、オーロラ王国よりもずっとドロドロしている。オーロラ王国では、すべてがアリバ女王のためだった。権力も決定権も、すべて女王が握っていたと言っていい」


 それに対し――と、言葉を継ぐ。


「ヘロス王国では、権力が分散している。それが混乱を生み、争いの種になっているようだ。中でも王宮騎士団はかなりの権力を持っていてな……それを文官たちが妬み、権謀術数を巡らせている、というのが今の状況らしい。父さんは軍家と思われているから文官たちの目がきつくてな……早速マークされそうだ。お前も気をつけろよ」


 こりゃあ、早いところ土産を買って宿に籠もるのが一番だな。

 そう思いながら、ステラのいないベッドへ向かい、俺は目を閉じた。



 翌日――


 今日も今日とて、あちこちの店を巡っては商品と睨めっこ。

 棚に並ぶ品々を前に、腕を組んで悩んでいると――


「君、昨日の子だよね?」


 背後から声がかかる。

 振り向くと、そこにいたのは昨日の少女。


「あ、昨日のオオカ――」


 そこまで口にしてから、とんでもない言葉を続けようとしていたことに気づき、慌てて言葉を止める。


 だが、どうやら遅かったらしい。

 彼女は俺の表情だけで察したようで、にやりと笑う。


「ふ~ん……しっかり変態さんかぁ……」


「い、いや! そんなことはないよ! あれは本当に咄嗟で――!」


「ま、私が可愛いのが悪いから、仕方ないけどねぇ~」


 そう言って、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 改めてよく見ると綺麗な子だ。


 ポニーテールにきっちりまとめられた髪は、イエローというよりプラチナブロンド。すっと通った鼻筋に、アンバー色の瞳は不思議と目を引く。

 将来は間違いなく美人になるだろう。


「ち、ちょっと!? そんなにじっと見ないでよ!? 照れるじゃん!?」


「ご、ごめんなさい」


「ま、いいけど。君の名前は?」


「メナトって言います。七歳です」


「えっ!? 七歳!? 私と同じくらいかと思ってた。私は……ルーナ。十歳だよ」


 やっぱり十歳だったか。

 だが、俺が七歳だと知って、かなり驚いた様子だ。


「本当に七歳? 昨日、【魔纏】で頭を守ったんじゃないの?」


 当然の疑問だろう。


「はい、実は去年、魔力を授かりまして……」


「去年って、六歳で!? そんな話、聞いたことないわよ!?」


「父も母も、そう言っていました」


「……メナトって、貴族でしょう?」


「いえ、まだ貴族では……」


「ふ~ん……『まだ』貴族じゃない、ね。ってことは、近いうちにご両親が叙爵される――つまり、オーロラ王国宮廷魔法師長官の系譜、ってわけ?」


 この子、何者だ?

 まだ公表されていないホークの叙爵の件を、なぜ知っている?

 迂闊なことは言うな、と言われている。

 ここからは慎重にいくべきだな。


「ルーナさんは、どうして昨日追われていたんですか?」


「ん? 昨日だけじゃないよ。現在進行形。ほら――」


 そう言って店の外に視線を向ける。

 そこには、昨日とは別の大人が二人。

 明らかに、ルーナを監視するような目でこちらを見ていた。


「追われている理由は……うーん……私が逃げるから……かな」


 ルーナは苦笑する。

 悲壮感はない。

 むしろ、どこか諦めきったような表情だった。


「で? メナトは何してるの?」


「妹へのプレゼントを探していて……でも、何がいいのか全然わからなくて」


「ふーん……妹思いなんだ。兄妹仲はいいの?」


「ええ、多分……一般的な家庭よりは……」


「いいなぁ……私も、そんな家庭が良かったな……」


 ルーナは、どこか儚い視線を宙へと投げた。

 兄弟仲は、あまり良くないのかもしれない。


「ルーナさんは、貴族なんですか?」


「ん? 私? 平民に見える?」


「……見えません。とても高貴な方、という印象です」


「まぁ、半分正解……かな」


 そう言って、ルーナは軽く肩をすくめる。


「じゃあ、私はこの辺で。そろそろ出て行かないと、この店にまで突撃されそうだし」


 それから、思い出したように付け加える。


「あと、妹さんへの贈り物。まだ決まってないなら、透晶石のグラスがいいと思うよ。透晶石で作られたグラスは壊れないから二人の関係も、絆も壊れないって意味を込められるしね」


 そう言い残し、ルーナは店の外へと出ていった。

 すぐさま、大人二人が護衛するように彼女の後を追う。


 ……あそこまで警護される存在、ということか。


 その背中が完全に見えなくなるまで見送ってから、

 俺は透晶石製のグラスを探すことにした。

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