表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら世界で唯一複数紋章を内包できる【追憶の紋章】を授かっていた件 ~努力と想いを継ぐ紋章の力で運命をねじ伏せる~  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第3章 少年期 ラージャン攻防戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/102

第44話 ラージャン攻防戦――1

「ついに来たな……」


 ホークが呟いた。

 その視線の先――ラージャンの街から東を望むと、黒い軍勢がこちらを目指して進軍している。帝国兵だ。

 街の中腹から見ただけでも、その数は優に二千……いや、三千を超えている。

 補給兵などを含めれば五千に届くかもしれない。


 それでも通常であれば、ラージャンが陥落することはまずないという。

 この街は天然の要塞であり、高所の利を生かして上から投石するだけでも、敵戦力を大きく削ることができる。


 しかし、今回の戦はラージャンが落ちるかどうかだけの話ではない。

 領主であるヘルマー伯爵、そして嫡子のウルバン、その両名が討ち取られれば、たとえ兵が生き残っていても敗北となる。

 統率者を失えば、軍が瓦解するのは必然だからだ。

 傭兵もまた、論功勲章をする者がいなければ、いかなる手柄も無に帰してしまう。


 マヌスがどこに潜んでいるのか分からない以上、総大将であるヘルマー伯爵や、嫡子のウルバンが狙われる危険は拭えない。

 そんな状況で、迫り来る帝国軍を見下ろしながら、俺はホークに問いかけた。


「お父さん、まだ現れないの?」


「ああ……まだだ。現れるまで、メナトは父さんたちと一緒にいろ」


 俺が待っている人物――それはペッパだ。

 あの夜、ペッパが残した光の残滓がどうしても頭から離れず、今回の戦では彼を徹底的にマークすることを志願していた。


 紋章は、必ずしも手の甲に宿るとは限らないのかもしれない。

 俺自身、十歳にも満たないうちに紋章を授かった。

 ならば、これまで常識とされてきたことが覆る可能性も、十分にあるはずだ。


 しかし、ペッパが現れないのであれば、俺はホークたちと共に帝国兵の迎撃にあたるのが賢明だろう。

 俺たちは、バリケードが張られた街の入口へと向かった。



 そこで指揮を執っていたのは、近衛を伴ったウルバンだった。


「無理をしてここで防衛する必要はない! 少しずつ後退し、勾配のきつい地点まで引け! そこまで下がれば、魔法師だけでなく投石や弓も有効に使える! 【曙光の鷹】以外の傭兵団は、全員カイサの指示に従え!」


 ウルバンがそう叫び、視線をこちらへ向けると、騎士や傭兵たちが一斉に振り向いた。

 【血の十字旗】の団長カイサもその中にいたが、俺と目が合った瞬間、さっと視線を逸らす。


「確か、あいつらが【曙光の鷹】だよな?」

「どうして、あいつらだけ特別扱いなんだ?」


 傭兵たちの間から、不満げな声が漏れる。

 おそらく彼らは【血の十字旗】と同様、丘の上での戦いには参加せず、ラージャンに残っていた者たちなのだろう。


「お前たちの気持ちは分かるがな……」


 そう前置きして、カイサが一歩前に出る。


「【曙光の鷹】は、ここにいる誰よりも強い。これは噂でも評価でもない! 昨日、俺自身が身をもって思い知らされた事実だ!」


 カイサが断言すると、先ほどまで上がっていた不満の声は、嘘のように静まり返った。


 ……危うくカイサが廃人になるところだったが。

 どうやら、昨日あの剣を見せた判断は、間違っていなかったらしい。




 そして――ついに、その時が来た。

 帝国兵が、街の入口からもはっきりと視認できる距離まで迫ってきたのだ。


 敵も陣形を整えてゆっくりと前進してきている。

 最前列には板金鎧を纏った重装兵、その背後に通常兵、さらに後方に帝国魔法師が控える、典型的な布陣だった。


 最初に号令をかけたのは、ウルバンだ。


「よし! 敵がこちらの射程に入った! まずは力の差を見せつけ、相手の士気を削ぐ! 一番槍はホーク、アイシャ、そしてメナト! お前たちに任せる!」


 いきなりの指名だった。

 ホークとしては本来、目立つ行動は避けたいところだろうが、今はそんなことを言っている状況ではない。


「承知しました。アイシャ、メナト、行くぞ」


 ホークの合図で、俺たちは騎士団や傭兵たちの間を縫うように進み、最前列へと出る。

 そして、ホークが右手を前に掲げ、即座に詠唱を始めた。

 同時に、アイシャも。


『【風迅槍ヴェントス】!!』

『【氷迅槍グリシア】!!』


 放たれた二本の槍は、先頭に立っていた帝国兵の板金鎧を容易く貫通し、一瞬で命を奪った。


「おおっ! この距離で、あの威力か!?」

「紋章師だ! 二人とも紋章師だぞ!」


 一気に傭兵たちが沸き立つ。

 その歓声は、後方で見守っていた住民たちにも広がっていった。


「この街に、こんな紋章師がいたのか!?」

「ヘルマー伯爵もいるし、これは安泰だ!」

「メナトの母ちゃんずりぃよ……あの顔で紋章師って……」


 ざわめきが広がる中、俺も続いて詠唱する。


『【盲魔ノ毒槍スピクルム・トクシクム】!』


 俺の放った漆黒の槍は、二人の迅槍のように鎧を貫通するほどの威力はない。

 刺さるのは、あくまで浅くだ。


 だが、その効果は凄まじかった。


「う、うわぁぁぁあああ!!! 目がぁぁぁあああああ!!!」


 突然、視界を奪われれば、人は容易くパニックに陥る。

 帝国兵の絶叫が、戦場にこだました。


「マ、マジか……一家全員が紋章師って……あり得るのか?」

「しかも帝国兵が、悶絶しながら叫んでるぞ……」

「メ、メナトって、俺と同い年のはずなんだけど……」


 さらに、カイサが続けて叫ぶ。


「なっ!? とんでもねぇだろ!? だがメナトのエグさはあんなもんじゃねぇ! お前ら、覚悟しろよ!? 本当の地獄はここからだ!」

 

 出鼻を挫かれた形となった帝国。

 このまま前進をやめると思いきや――


「進め! こっちにはアレがある!」

「アレが目覚めれば我らが勝利!」

「帝国が負けるわけはない!」


 帝国兵たちは、まるで暗示にでもかかったかのように、恐怖を押し殺して猛進してくる。


「応戦だ! 魔法を撃て! ありったけの矢を放て!」


 ウルバンが叫ぶと、魔法と矢が雨あられのように帝国兵へと襲う。

 こうして帝国との第二ラウンドの火蓋が切られたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ