表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら世界で唯一複数紋章を内包できる【追憶の紋章】を授かっていた件 ~努力と想いを継ぐ紋章の力で運命をねじ伏せる~  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第3章 少年期 ラージャン攻防戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/102

第40話 ラージャンの子供たち

「なかなかマヌスは見つからないみたいだね」


 偵察任務へ向かう途中、物々しい装備に身を固めた騎士や魔法師たちが巡回する、厳戒態勢のラージャンの街を眺めながら呟く。


「ああ。隻眼の男どころか、怪しい人物が一人も見当たらない。街の連中はほとんど顔馴染みだし、一番の新参者といえば傭兵団くらいだな……父さんたちも比較的新顔だから、最初はマークされそうになったが、伯爵とウルバン様が止めてくれた」


 だよな。

 毎日のように街で遊び回っている子供たちですら、見知らぬ大人――怪しい男を見つけられていないのだ。これでは容疑者を絞り込めるはずもない。


 それでも、マヌスがこの街に潜んでいるのは間違いない。

 なぜなら、街では今もなお、毎日のように祟りによる被害が出ているからだ。


 不要不急の外出は控えるよう通達は出ているが、食事をするためには外に出ざるを得ない。

 一般庶民が、うちにあるような魔冷庫――いわば日本でいうところの冷蔵庫を持てるわけもないのだ。


 ホークですら、魔冷庫を買うかどうか相当悩んでいたくらいだ。

 ただ、エーテルポーションを保管するには、やはり大きな魔冷庫がある方がいい。特に、酒精を含まない俺用のエーテルポーションは、すでに色が変わり始めているものもある。


 父が頭を悩ませている横で、眉一つ動かさず即決で購入したアイシャ。

 あれは個人的に、間違いなくグッジョブだったと思う。




 いつもの丘の上に腰を下ろすと、ホークはウィンを帝国方面へと飛ばした。

 俺とステラは、これまたいつも通り、丘の上でヨーダから剣の手ほどきを受けている。


 すると――


「……ジハルドに物資が集まりつつあるな……パルブのいった通り、近いうちに大規模な侵攻が来るのかもしれない」


 ウィンと視界を共有していたホークがエーテルポーションを飲みながら呟く。

 遠距離の索敵は相当な魔力を消費するらしく、ホークはすでに二本目のエーテルポーションを空にしており、顔はかなり赤くなっていた。


 ちなみに、ホークの血を引くメナトもかなりお酒が弱いっぽく、酒精を肌に垂らすと赤く反応してしまう。

 前世の俺は高校生だったこともあり酒を飲んだ経験はないが、どうやら家系的に弱そうである。


「帝国が進行してくる前までにマヌスを何とかしなければな」


 酔いが回ってきたホークに代わり、ヨーダが告げる。


「そうね……でも、絶対にバレない自信があるからこそ、潜り込んできているのだろうし……メナトは目星がついていないの?」


 アイシャが俺を見る。


「うーん……そんな人がいたらすぐに報告しているしなぁ……」


 振り返ってみるが、新規住民や怪しい人など見たこともない。

 が、ステラが思わぬ人物の名をあげる。


「そういえばさ、ペッパって最近見るようになったよね?」


「確かにそうだけど、前からステラのことを知っているようだったし、俺たちが知らなかっただけじゃない?」


 そう言った瞬間、胸の奥に引っかかるものがあった。


 ――待てよ……?


 最初にペッパと会ったときのことを思い出す。

 あのときの言葉……よく考えると、おかしいよな?


「ペッパってどこに住んでいるんだろうか?」


 すると、アイシャも興味を示す。


「ペッパ君って、あの男の子のお人形を持っていた子よね?」


「そう、少し大人っぽい子」


 俺がそう答えると、アイシャはくすりと笑い、俺の頭を撫でた。


「まあ、メナトより大人っぽい子なんて、そうそういないと思うけど?」


 軽口を交えつつも、アイシャはすぐに真剣な表情に戻る。


「今は手がかりも少ないもの。ペッパ君に不快感を与えない程度に、少し探ってみたら?」


「うん、そうする。帰ったら、まず空き地に寄ってみるよ」



 その帰り――


 少し早めに丘を後にし、俺とステラの二人で、いつもの空き地へ向かった。

 とはいえ、すでに日は沈みかけている。ところどころに篝火かがりびは焚かれているものの、街の裾野はその数も少なく、辺りは薄暗い。


 魔晶灯を灯して行くことも考えたが、この辺りではあまりにも高級品だ。

 目立って鼻につくかもしれないと思い、結局そのまま歩くことにした。

 もっとも、俺たちの上空にはウィンが飛んでいるのだけれど。


 不要不急の外出は控えるように、というお達しが出ている中でも、空き地にはまだ数人の子供たちが集まって遊んでいた。


 不用心だと思うかもしれないが、やむにやまれぬ事情があるのかもしれない。

 その事情を汲んでか、騎士団員も数名が周囲に常駐しているようだ。

 伯爵もまた、民の信頼を取り戻そうと必死なのだろう。


「ねぇ、ちょっとお話いいかな?」


 いつも大声で噂話をして、俺たちに情報をくれる、顔は知っているが、名前が一致しない男の子たちに声をかける。

 だが、彼らは警戒した様子で、なかなか返事をしない。

 そこで、ステラがにこっと笑い、バッグからあるものを取り出した。


「ねぇ? みんなでこれ食べない? 美味しいよ?」


 取り出したのは、蜂蜜と砂糖を加熱し、よく混ぜ合わせたものを型に流し込み、魔冷庫で固めたものだった。


 さらに味にもこだわっていて、

 蜂蜜に野イチゴを混ぜたもの、

 ブルーベリーを加えたもの、

 さらにはレモン果汁を入れたものまである。

 日本で言うところの、飴のような菓子だ。


 子供たちは、見たことのないお菓子に興味津々だ。


「これ……食べ物なのか?」

「なんか、いい匂いがする」

「もらっていいのか?」


「うん! 少ししかないけど、一人一粒ずつはあるよ。これはね、口の中に入れて、噛まないで舐めるんだよ」


 お手本とばかりに、ステラが蜂蜜飴を口に含む。

 次の瞬間、その顔いっぱいに喜びが広がった。


 それを見て、子供たちも唾を溜めこんだ口の中へ、恐る恐る飴を放り込む。


「な、なんだこれ!」

「うめぇ!!!」

「こんな美味いもん、食ったことねぇ!」


 一斉に目を輝かせる子供たち。

 ……五粒あったはずなのに、俺の分がない。

 絶対、誰かが二つ取ったな。


 まぁ、ここは大人の余裕を見せておこう。

 あとで【咎ノ剣(ブレード・ギルト)】でも軽く触れさせてやればいい。

 ……それはともかく。


 まずは、この子供たちの情報が、どこまで信用できるかだ。


「ねぇ、僕たちがこの街に来たのって、いつ頃か知ってる?」


「ん? 去年の春くらいじゃなかったか?」

「とんでもなく可愛いお姉さんが来たって、街中で噂になったもんな」

「そうそう。父ちゃんたちも騒いでたし、母ちゃんが激怒してたからよく覚えてる。俺なんて、カラス屋敷にまで見に行ったもんだぜ」


 さすがアイシャだな。

 にしても、まさか俺たちの家が子供たちの間でカラス屋敷と呼ばれていたとは。

 ……まぁ、実際あの頃はカラスだらけだったから、否定はできないが。


「じゃあさ……怒らないから教えてほしいんだけど、最初に僕たちを見たとき、どう思った?」


 男の子たちは顔を見合わせ、子供なりに言葉を選びながら答える。


「……なんていうか……嫌な奴だと思った」

「いい服着てて、可愛い母ちゃんがいて、正直ムカついたっていうか……」

「それに、ステラが――」


 一人がステラの名前を出しかけた瞬間、残りの二人が慌てて制止する。

 だが、ステラ本人が、首を横に振った。


「いいよ。どう思われてても、しょうがないもん」


 その言葉に押されるように、男の子は続ける。


「……本当にごめん。今は目がぱっちりしてて、すごく可愛いけど、当時は正直ちょっと怖かったんだ。目を開けないで、いつもニコニコしててさ。目が見えないって知ったのは、だいぶ後だった」


 少し気まずそうに視線を逸らしながら、付け加える。


「それに……お前たち、あんまりここで遊ばなかっただろ?」


 確かに、少しでもステラが嫌な思いをしていそうだと感じたら、俺は無意識のうちに距離を取っていた。

 だから、まともに話せた相手といえば、イヴァンとエヴァンくらいだ。


 この子たちにも、正直あまり良い印象はなかった。

 だが、こうして話してみると意外と素直で、悪い奴らではなさそうだ。

 ……少なくとも、次に会ったときも話しかけてみようという気にはなる。


 だから、瀬戸内海くらい心の広い俺は【咎ノ剣(ブレード・ギルト)】の刑を免除してやろうと思う。

 ありがたく思え……それもともかく。


「うん! でも、たまに遊びに来るから、そのときは一緒に遊んでよ!」


 ステラが気にしない素振りをしながら呼びかける。


「もちろんだ! 俺たちとしても、ステラみたいに可愛い子は大歓迎だ! なっ?」

「目が見えるようになった途端に声をかけるのは、なんか卑怯っぽくて言い出せなかったけど……これからよろしくな!」

「もう飴はいいからな! 普通の友達からよろしく!」


 で、ここからが本題。


「じゃあさ。ペッパって、いつ頃からここにいた?」


「ペッパ?」

「ああ、イヴァンとエヴァンとよく一緒にいる奴か」

「最近だな。ちょうど帝国との戦いがあった頃だったと思う」


 ビンゴだ。

 やはりペッパは、昔からこの街にいたわけじゃない。

 少なくとも、空き地に姿を見せるようになったのは最近だ。


「ペッパのお父さんやお母さんを見たことはある?」


 その質問に、子供たちは顔を見合わせる。


「うーん……そういえば、見たことないな」


「じゃあ、家は知ってる?」


「いや、知らない。双子と一緒に帰ると、ペッパも一緒に帰るからさ。イヴァンたちなら知ってるんじゃないか?」


「そうか……もし、ペッパのことで何か思い出したら、教えてほしいんだけど……」


 すると、男の子の一人が、はっとしたように声を上げた。


「そういえば、一昨日の夜さ。俺が父ちゃんと一緒に夜食を買いに中心街へ行ったとき、ペッパを見た気がする!」


「一人で?」


「いや、父ちゃんと母ちゃんっぽい人と一緒だったな……後ろ姿しか見てないから、顔までは分からなかったけど」


 うーん……少し信憑性に欠けるな。

 顔を確認していないなら、本当にペッパだったのか判断しづらい。


 だが、その男の子は、さらに続けた。


「でも、間違いないと思う。男の子の人形を抱えてたからさ」


 なるほど。

 いつもペッパが持っている、あの人形か。

 それなら話の信頼度は一気に上がる。


「ペッパのお父さんって眼帯とかしてた?」


「いや、そこまでは分からない……ただ、背は高い方だと思うな」


「手袋は?」


「あー……していた……と、思うぞ?」


 なるほどね。

 もう聞きたいことは、あらかた聞けた。

 あまり遅くなっても良くないしな。


「ありがとう。じゃあ、僕たちはもう帰るね」


「うん! 今度は一緒に遊ぼうな!」


 約束を交わし、俺はステラの手を引いて元カラス屋敷へと帰るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ