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転生したら世界で唯一複数紋章を内包できる【追憶の紋章】を授かっていた件 ~努力と想いを継ぐ紋章の力で運命をねじ伏せる~  作者: けん@転生したら才能があった件書籍コミック発売中
第2章 少年期 追憶の紋章

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第18話 魔纏

「メナト、お父さんに【風槍ヴェント】を撃ってみろ」


 街の外に出ると、ホークがぴたりと足を止め、俺の方へ向き直った。


「えっ? いくらお父さんでも、怪我しちゃうよ……」


「大丈夫だ。いいからやってみろ」


 強がりでも冗談でもない。

 その表情から、今から何かを教えるつもりなのが伝わってくる。


「……分かった。じゃあ、行くよ?」


 少し距離を取り、威力が落ちるように発射するときの勢いを抑えて詠唱する。


『【風槍ヴェント】』


 風の槍がホークへ向かう。

 父は左手を前へ突き出し、まるでそのまま受け止めるつもりで立っていた。


 この威力でも貫通はする――そう思った瞬間。

 【風槍ヴェント】はホークの左手に触れた途端、霧のように散った。


「えっ……!? どうして!? 痛くないの!?」


 俺の反応に満足したように、父は口角を上げた。


「これはな、左手に魔力を集めて魔法を相殺したんだ」


「どういうこと!?」


「メナト。お前は魔法を使うとき、魔力を練って、体内を巡らせて、勢いをつけて外へ放つだろう?」


 頷くと、ホークは続けた。


「今のはその逆だ。体内の魔力を一点に集中させ、相手の魔法に抗う――【魔纏まとう】という技だ」


「【魔纏】……?」


「そう。魔力を皮膚のすぐ下に圧縮して留める。絶対に外へ発射しないことがポイントだ。そうすることで魔力が緩衝材になり、相手の魔法を相殺――あるいは軽減できる。魔力量が多いほど衝撃を吸収できるから、人体へのダメージは低くなる」


 ホークは左手を軽く握りながら、力の流れを示すように言った。


「メリットは、魔力を消費しないこと。だから連続でいくらでも使える。デメリットは……魔力が減っていると緩衝材が薄くなるから、そのままダメージを食らう。それから、魔力操作が難しいこと。ついでに言うと、物理の突きや斬撃にはあまり効果がない」


 そこで一度区切り、ホークは真顔で俺を見る。


「……だが覚えておいて損はない。特に格下の魔法師との戦いなら、相手の魔力が尽きるまで【魔纏】でいなし続ければ、実質的には無力化できる」


 なるほど。

 エルがビサンド村で魔法師二十人相手では怯まなかった理由はここにあったのか。 

 どこまで高威力の魔法を受けられるのかは分からないが、使いこなせれば確実に強みになる。


「よし! じゃあ早速――」


 勢い込んで魔力のコントロールを始めるが、すぐに壁にぶつかる。

 魔力を撃つことなら徐々に慣れてきた。

 だが、一瞬で一点に留める……となると、今度は逆に魔力が外へ漏れ始めるのだ。


「……っく、難しい……!」


 漏れた分だけ、防御膜は薄くなっていき、逆に魔力だけ消費してしまうという悪循環。本当に、冗談抜きで難しい。


 俺が額に汗をにじませて苦戦していると、今度はヨーダが腕を組んで口を開く。


「……【魔纏】はな、俺たち剣士でも使う技術だ。魔法を防ぐほどではないが、魔力を巡らせて体を活性化させ、身体能力を底上げする。そういう使い方だ」


「あれ? ヨーダって魔法が使えないんじゃ?」


「魔法は使えん。だが、魔力そのものは微量だが持っている。魔法を受け止められるほどの代物ではないが、極限状態の戦闘では役に立つことが多い。達人同士になると、ほんの紙一重の差が勝敗を分けるからな」


 強くなればなるほど差は縮まり、わずかな底上げが勝負を決めるのか。

 そこまでの境地に達するのは無理だとしても、活用できれば大きい。

 俄然やる気が湧いてくる。


 気づけば俺たちは、街の外れを抜けて山の裾野まで来ていた。

 ウィンはすでに索敵を開始しており、空から地上へと監視していた。


「今日は十人か……」


 ぼそりとホークが呟く。


「何が十人なの?」


「ん? ああ……正規ルートじゃなくて、マルム帝国からレビンデ山脈を抜け、非正規ルートでヘロス王国に入ろうとしてる連中だよ」


 ここがレビンデ山脈――黒涙草が群生しているって山か……。

 非正規ルートの侵入者……つまりスパイか密入国者か……あるいは亡命してくる人もいるのかもしれない。

 ってことは、ウィンはこの短時間で十人も怪しい人物を見つけたのか。

 ……他の傭兵団が同じ成果を出すには数百人必要だろうな、これ。


「どうするの?」


「近くにいれば捕らえるんだけどな。今日中に越境できる距離じゃない。どうせ闇に紛れて明日の夜あたりに来るだろう。戻って報告して……あとは任せるさ。全員が裁かれるってわけじゃないようだしな」


 そう言って、ホークは腰を下ろした。

 偵察が終わっても、こうして時間を取るのには理由がある。


 ウィンの狩りの時間だ。


 間者ではない。野生の動物たちを狩るのだ。

 街近くを飛ぶときは鴉をよく捕ってくるが、山に入ると鹿や猪、時には小さな熊ですら仕留めてくる。

 ホークの魔力を借りれば、成獣の熊でさえ狩れるというのだから恐ろしい。


 狩り自体は数分で終わるのだが、問題はそこからだ。

 ウィンは周囲を常に警戒しながら食事をとるため、一時間は見ておかないといけない。


 日が傾き始めたころ、ようやく食事を終えたウィンが羽ばたきながら俺たちの頭上へ戻ってきた。


 そこでホークとヨーダが、以前アイシャが買った魔晶灯を手にする。

 ホークが魔晶灯へ魔力を込めると、翠色の光が灯った。


「メナト、もう一つの方に魔力を込めてみろ」


 促され、ヨーダが持つ魔晶灯に魔力を流し込む。

 すると、深紅の輝きが灯る。


「……なんでメナトの魔力は赤なんだろうな」


 事情を知らないホークは不思議そうに首を傾げる。

 俺が転生者で、前世の影響だなんて言えるわけもない。


「なんでだろうね? 僕にもよく分からないや」


 と、適当に誤魔化してから息を整える。


「じゃあ、帰ろう! 帰りながら【魔纏】の訓練するから、気づいたことがあったらアドバイスしてね」


 そう言うと、ホークとヨーダはそれぞれ苦笑しつつも頷く。


 山の斜面に夕陽が差し込む中、俺たちは街へと戻り始めた。

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