表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

第1話:影を踏む者

「——行くわよ」


六色の光が、私の瞳に宿った。


一方の影が再び右手を上げる。


今度は赤黒い炎ではなく——風だった。


鋭い刃のような突風が、廊下全体を薙ぎ払う。


(中位の風魔法。でも、やっぱり歪んでいる)


シャーロット『右に跳んで。壁際なら風の威力が殺せる』


言われる前に体が動いていた。


壁に背をつけた瞬間、突風が私の髪を掠めて通り過ぎた。


ジャスティス『今よ!反撃して!サンドラ!』


サンドラ『任せてくださいまし〜!』


右手に炎を集める。


ただの炎じゃない。シャーロットの水の魔力をほんの少し混ぜた——蒸気を纏う炎。


(まだ制御しきれないけど…これで十分よ)


「はっ——!」


炎の塊が廊下を走り、一方の影を直撃した。


くぐもった呻き声。


黒いローブが焦げ、影がよろめく。


しかしもう一方の影が、その隙に素早く動いた。


(速い——!)


距離を詰めてくる。懐に入られたら魔法が使えない。


シンデレラ『こわい…でも——レギーナ!』


レギーナ『フン。言われるまでもない』


左手から光の壁が展開される。


影が激突し、弾き飛ばされた。


静寂。


二つの影は廊下の床に倒れている。


(終わった…?)


息を整えながら、私はゆっくりと近づいた。


ローブの隙間から覗く手の甲に、奇妙な紋章が刻まれている。


六つの図形が円を描くように並んだ——見たことのない紋様だった。


シャーロット『…記憶しておいて。あれは魔法的な刻印よ。組織の印かもしれない』


(組織…)


その時、倒れていた一方の影が薄く笑った。


「…よもや、中位ごときで我らが斥候を退けるとは」


低い声。苦しそうなのに、どこか愉快そうだった。


「お前たちは…何者なの?」


影は答えない。


代わりに——その体が、黒い霧のように溶け始めた。


(逃げる気!?)


ジャスティス『させない!』


「待ちなさい——!」


手を伸ばした瞬間、影は完全に霧散した。


もう一方の影も同様に。


廊下には焦げた跡と、かすかな魔力の残滓だけが残された。


(…逃げられた)


シャーロット『追跡は無理ね。霧散魔法は高度な技術よ。斥候にそれが使えるなら…組織の練度は相当高い』


サンドラ『悔しいですわ〜!でもエリザベス様は無傷ですわ!それで十分ですのよ!』


シンデレラ『…手の甲の紋章、怖かったね。でも、覚えてるよ』


レギーナ『フン。次は逃がさん』


私は静かに息を吐いた。


手の甲の紋章が、まだ瞼の裏に焼きついている。


(六つの図形が円を描く紋様…あれは一体——)


「エリザベス!?」


廊下の向こうから、アルベールの声が聞こえた。


慌てた足音が近づいてくる。


「こんな時間に一人で何を——焦げてる!?廊下が焦げてるじゃないか!」


続いてマリアンヌの声。


「エリザベス様!お怪我はないですか!?」


(起こしてしまったわね…)


私は二人に向き直り、できる限り落ち着いた表情を作った。


「ごめんなさい。少し…夜風に当たりたくなっただけよ」


アルベールは焦げた廊下と私を交互に見比べた。


「夜風に当たった結果、廊下が焦げるの?」


「…魔法の練習をしていたの。少し派手になってしまって」


沈黙。


アルベールは深いため息をついた。


「…君は本当に、一人で抱え込むよね」


その言葉が、思いのほか胸に刺さった。


(ごめんなさい。でも——まだ話せない)


手の甲の紋章が、頭から離れない。


あの影たちは斥候と言った。


ということは——本隊がいる。


シャーロット『ええ。そして彼らはすでに、私たちのことを知っている』


(分かってる)


私は微笑んだまま、アルベールの心配そうな顔を見つめた。


——嵐は、もうすぐそこまで来ている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ