翻訳機
「ヨゾラ、領主さんとハロルドさんにばれた。ごめん。」
私はまずヨゾラに謝った。
《まあ、どうしたってその内ばれるだろうからいいんじゃね?あいつらの意見も聞いたほうが、人の世界に受け入れられ易いだろうし。》
意外だ。竜が人の世界の事を考えるなんて。私は素直にヨゾラに疑問をぶつけた。
《いや、あいつらを無視すると色々面倒なんだよ。ほら、レンも俺より随時早く寿命がくるだろ?ケンイチもそうだったし。あいつら俺が竜だというだけで襲ってきたりするからな。いちいち構ってたら邪魔くさくてな。レンがいなくなった後もここがあれば俺や水丸もそれなりに楽しく過ごせそうだろ?なんたってここの所有者は俺なんだから。どうにもならなかったら人の出入りは禁止にするし。ここがあれば人との面倒事は避けられるんじゃねーか?》
脅威を感じなくてもしょっちゅう攻撃されるのは確かに面倒だろうな。ヨゾラは人の肉が好きな訳では無いみたいだし。
「そうなんだ。明日領主さんとハロルドさんがここに来たいそうなんだけど、大丈夫かな?毒とか改造した部分とか。」
《ああ、森の草木や生物にはまだ浄化の影響があるだろうけどこの場所にはもう浄化の力は漏れていないから来るだけなら大丈夫じゃねーかな。改造もとりあえず入り口付近には手をつけてねーし。あっ、それとな、面白いもんがあったんだぜ~。》
ヨゾラがタブレットみたいな物をいくつか見せてくれた。
《こっちは一般用の利用を許可する道具で、こっちが所有者の特別許可用の道具みたいだ。登録するとここからカードが出てくるらしい。これで施設の利用を制限していたらしいぞ。細かい設定もある程度できるっぽいな。動力室は所有者と一緒じゃないと入れないらしい。まあ、施設の設定を上回る魔力があれば無理矢理侵入できるけどな!俺たちみたいに。》
こんなタブレットみたいなやつからカードが出るなんて魔法みたいだな。まあ、魔法なんだろうけど。古代人すげえ。
「じゃあ、明日領主さん達を連れてくるね。ヨゾラは離れに帰る?お腹減ってない?」
《まだ研究したいから今日はここにいるよ。美味しい飯だけいっぱいほしいかな。さっきのステーキがまた食いたい。》
私は霜降り肉のステーキを山盛りで部屋の片隅にだし離れに戻った。
翌日ランドールさんに案内され向かった応接室には既に領主さんとハロルドさんがいた。
「毒の影響は森の草木なんかにはまだ残っているみたいですが、場所にはもう影響は無いです。ヨゾラにも話をしたので遺跡にご案内します。瞬間移動でいいですか?」
領主さんとハロルドさんは首を横にブンブン振った。
「レン、我々は瞬間移動にまだ恐怖を感じる。申し訳ないが他の方法でお願いできるか?」
領主さんがそう言うので遺跡まで箱の魔法で飛んでいった。遺跡の入り口前で魔法を解くと二人はなんだかげっそりした様子だったが中に入ると元気を取り戻したようだ。
「おお、ここが…!」
「確かに他の遺跡とは違うようだな。」
《水丸はプールいってくる~》
私は動力室に二人を案内した。
「ヨゾラ、領主さんとハロルドさんを連れてきたよ。あれ?少し身体を大きくした?」
ヨゾラの体長が50cmくらいになっていて片手にタブレットを持っている。
[おう、待ってたぜ]
タブレットに文字が表示された。
「わあ、これ翻訳機かな?いいもの発見したねヨゾラ。」
[だろ?便利だよなこれ。誰とでも話ができるんだぜ!古代人ぱねえな]
私達が楽しく話をしている間も部屋の入り口で領主さんとハロルドさんは呆然と立ち尽くしていた。
「ヨゾラ、我々もこの遺跡の改造に案を出したいのだが、いいだろうか?」
気を取り直した領主さんがヨゾラに訊ねた。偉い人のはずなのに上から目線では無いところが凄いと思う。私が想像する領主や王なんかとは随分違うな。
[ああ。俺も人側の意見が聞きたい。俺らと人がいい感じでこの施設を使えれば俺の面倒事も避けられるという案を期待している]
ヨゾラがそうタブレットに表示した。領主さんとハロルドさんは真剣な顔になっている。さっきまで呆然としてたのにな。やはり人の上に立つ方々は凡人とは気力が違うのだろう。
《レン、俺はこいつらと話し合うからお前は好きに遊んでていいぞ。》
えー?一人で?水丸がもいるけどあのこは好き勝手にしてるし。あ、そうだ、アンジェリカさんを誘おう!
私は離れに瞬間移動をした。




