里帰り
昨日植えた砂糖の実は立派な木に成長し木の幹と枝の分かれ目部分にみっちり実が生っている。高さは普通の砂糖樹と同じだと思う。私は魔法で実を採り二つに割ってみた。皮が2cmほどで外は固いが内側がプニプニしててまるで水丸を触っているようだ。中はみっちり砂糖が詰まってて少し地面にこぼれてしまった。
ちょっと舐めてみたら普通に砂糖だ。
《レン、水丸の砂糖!水丸もあじみする!》
止める間もなく割った砂糖の実に水丸が飛びついた。幸せそうな顔で消化している。
《なあ、レン。あれ。》
ヨゾラの視線の先を見るとさっき採った実の部分にもう実が生っていた。さすがの水丸パワー。こんな無茶苦茶な木、私一人の手に負えない。
「料理長さんと、あ、ジェロームさんにも声をかけて有効活用してもらおう!」
私は館から料理長さんを引っ張ってきた。
「レンお嬢様、これを自由にしてよいのですか?」
私は魔法で新たに採った砂糖の実を料理長さんに渡した。
「これを使って新しいお菓子を作ってくれませんか?ここの実は好きに使ってもらって構わないので。あ、あとこれも。プリンというお菓子の作り方です。皆さんお好きなようですよ。」
「ありがとうございます!レンお嬢様も食べた事が無いようなお菓子を作ってみせます。お任せください!」
カレーに続き新たな創作意欲に燃えた料理長さんが館に戻っていった。
《レンも食べた事が無いお菓子か。楽しみだな。》
《ワクワクするね~》
「そうだね。この世界にしか無いお菓子ができたら面白いね。」
《水丸はあじみいっぱいする~》
水丸の味見の定義はたぶん間違っているだろう。
アンジェリカさんが昨日植えたマンゴーの水やりに来た。領主の奥様がそんな事したらマルゴさんあたりがとても煩く言いそうだが大丈夫なのだろうか?
「レン関係の事は皆諦めてるから~」
なんか納得いかない理由だが大丈夫なら良い。
離れで水を用意するのは面倒だろうからアンジェリカさんのために温室内に簡単な水道を設置した。水やりを終えたアンジェリカさんにさっき料理長さんに砂糖の実とプリンの作り方を渡した事を伝えると目を輝かせながら館に帰っていった。
《なあ、レンと水丸はどこで出会ったんだ?やっぱ水丸も飯に釣られたか?》
私は毒の森で水丸と出会った時の事をヨゾラに話した。
《その森ちょっと気になるな。たぶんそこ、元々は普通の森だったはずだぞ。よし、今から行ってみようぜ!水丸、里帰りだ!》
「一応きいとくけど、毒は平気?」
当たり前だ。と、当然のように言うヨゾラ。まあ竜だし、異世界の物も食べてるから普通では無いだろうし当たり前か。私達は姿を消し毒の森へ飛んで行った。
水丸と出会った湖のそばに降りる。相変わらず美しい景色だ。
《うーん、これは毒というか…。まあ普通の魔物や人にとっては身体に悪いだろうから毒と言えば毒なんだが…》
「ヨゾラはこの森の毒がなんなのか解るの?」
《ああ、ここは浄化し過ぎなんだよ。上手く言えんが大抵の魔物や人はきれいにし過ぎると生きていけんのだ。》
「よく解んないな。きれいになるのは良いことなんじゃない?」
《俺は上手く説明できんが、例えば人は自分の生活を脅かす魔物を退治するだろう?だからといって全ての魔物を退治すれば生活できないだろう?何というか、身体の仕組みもそんな感じで悪い部分を全部無くすと生きていけなのさ。》
何となく解ったような解らんような。まあ、とにかくやり過ぎはダメと。
「でも、何が原因でそんなにここは浄化されているのかな?」
《レン、下から変な感じがする~すごく下の方~》
水丸の言葉で私とヨゾラは足元を見た。




