カレーライス
「そもそも何でヨゾラとケンイチは攻撃対象にされたの?」
私はハロルドさんに訊いてみた。
「記録によるとロマイアス帝国のイグオス山脈にある新たに発見された鉱山の採掘場でその竜が暴れて稀少な鉱石が採れる採掘場を放棄せざるを得なくなったからその竜は討伐対象となったとあったが…」
《あそこは元々俺の住処なんだよ!なのに毎日毎日カンカン音がうるさいから、うるせーって怒鳴っただけじゃねえか。そしたら軍隊がきて俺を攻撃してきやがったからそいつらを一掃しただけだぞ。》
ハロルドさんにヨゾラの話を伝えた。
「そうか。その竜はとりあえず今のところ人を攻撃する意志は無いんだな。」
《ねえよ。俺はうまい飯が食いたいだけだ。》
「ありがとう。ギルド本部には今聞いた話を報告しておく。200年前はともかく、今、我々は竜討伐などするつもりは無い。こちらに被害がないのなら危険を侵して討伐する意味も無いしな。大体、勝てるとは全く思えないし。ただ、竜の存在が周りに知られるとギルドとは無関係で己の名声を高める為に挑もうとする無謀な奴はいるかもしれんから一応気をつけた方がいい。」
《人が何人がかりでも問題無いから俺は今ここにいるんだぜ。馬鹿の命の保証はしないからな。そんな奴を殺したからって面倒はごめんだぞ。》
ハロルドさんは黙って頷いた。領主さんは難しい顔をしていたがやがて
「その竜も自身の身を守る権利は当然あるわけだしな。」
と納得してくれた。
なんか深刻な雰囲気?こういう感じは苦手だな。あっそうだ。
「昔話とは全く関係ないんですけど、これ。」
私は領主さんにお米の炊き方などを辞典からコピーした紙を渡した。
「おお!レン、よくこんなに詳しく思い出せたな。うん、これならそれほど時間をかけずに作れそうだ。」
「炊いたお米を美味しくたべる料理にカレーライスというのがあるんです。無事にお米が炊けるようになったらみんなで食べましょう。きっと気に入ってもらえると思います。」
みんなが私を見つめる。
《レン、俺はカレーも勿論好物だ。》
《水丸も食べたい~!》
「レン、味見は大切だ。」
「私は領主として確認する義務がある。」
絶対食べたがると思ってました。ヨゾラも水丸もさっき食べたばっかだけど。
私はごろっとした野菜が入った実家のカレーをイメージして出した。美味しそうなカレーの匂いが部屋中に広がる。
「なんだこれ、うまい!」
「おお、安価な食材で作れそうなのに信じられんほど美味しいな!そうだ!ジェロームにカレーの店を開かせよう!サジタマール領の名物になるぞ!レン、後でレシピをお願いする。」
ジェロームさん、また面倒事が増えそうです。ごめんなさい。
《ケンイチのカレーと少し違うけどこれもいけるな》
《美味しい~》
深刻な話をカレーで誤魔化すことに成功した私は無事離れに戻る事ができた。
「ねえ、ケンイチとの旅って、もしかしてあの巨大な姿のままで行ったの?」
《ああ、最初はそうだったな。街の近くで身体を縮めて空から降りたらえらい騒ぎになった。でもその後はずっと縮んでんだぞ?それなのに近隣の国々に噂が回って行く先々で問答無用で攻撃されてさ。海を渡ってこちらの大陸に来てからは俺達も随分気をつけてたからこっちでは特に何もしてないぞ。》
鉱山で暴れてなくても攻撃対象にされるわ、そんなの。私は200年前の各国の方々に少し同情した。
お昼ごろ領主さんから話を聞いたアンジェリカさんにカレーライスをねだられ一緒に館の食堂で食べた。その後館の料理長に捕まり館のコックさん達にも振る舞う羽目になった。みんなとっても感動し独自のカレーを作り出そうというコックさん達の情熱により館は暫くの間スパイスの香りが漂い続ける空間となったのだった。




