常識
朝からヨゾラに肉を要求されたので焼き肉丼を魔法でだした。水丸と仲良く食事中だ。そういえばお米の炊き方を領主さんに伝えなきゃだったか。私は辞典に日本の昔ながらのお米の炊き方をきき、出てきた説明を丸ごと紙にコピーするイメージの魔法を使った。これを渡しておけばこの世界でも同じような物が作れるだろう。
ドアをノックする音がする。開けるとアンジェリカさんだった。
「おはよう、レン。ねえ、隣のあれは温室?中に入ってみてもいいかしら?」
私はアンジェリカさんを温室に案内した。水丸とヨゾラもついてきた。温室の真ん中には1mくらいまで育った芽が生えている。もはや芽ではなく小さな木だ。成長が異常すぎる。温室の高さはこのままで大丈夫だろうか。
「これは砂糖樹?昨日実を買ったばかりなのに凄いわね~。さすがレンね。あっ。昨日私が買ったマンゴーも種を植えたら育つかしら?南国の果物は気軽に食べられないからここで採れたら素敵よね~。」
マンゴーはここでもマンゴーなんだな。
「育つかどうかは解らないですが試しに植えてみたらよろしいのではないですか?ここにはまだ砂糖の実しか植えてないからスペースは大丈夫ですよ。」
アンジェリカさんは後で植えに来るそうだ。新たな楽しみができたと嬉しそうにしていた。
《なあ、レン。何でこんな妙な建物を建てたんだ?魔法で結界作ればよくない?》
ヨゾラが私に質問してきた。
ん?そういえば何でだろう。うーん。
「みんなの目に入る物があった方がみんなが安心すると思うから?ってか私はまだそんなに魔法に慣れてないからかな~。」
《レンの魔力があれば何だってできるだろうに。レンはあいつより随分人として常識的だな。》
うん。私は普通を愛する普通の人間だから。ハロルドさんとジェロームさんには散々な言われようだったけど。あ、別にムカついてなんかいませんよ?ちょっとイラッとしただけです。
ヨゾラとそんな話をしているとランドールさんがこちらにやってきた。
「レンお嬢様、旦那様がお呼びです。」
「もう、あの人はレンの都合も考えないで。レン、断ってもいいのよ?」
いやいやアンジェリカさんも人の事言えないんじゃ…。そんな事をすればランドールさんがとっても困るだろうし。私は大人しく領主さんの呼び出しに従った。
応接室に入るとハロルドさんもいた。
「レン、急にすまんな。ジェグラシム様から話を聞いた。ケンイチ関連の話はギルドとして放置しておく事はできなくてな。」
そんなに大変な事なのか、ヨゾラが私と一緒にいる事が。ヨゾラは今のところ肉を食べる事しか要求してないが。
「ヨゾラはさっきも水丸と仲良く遊んでいたし、特に危険な感じはしないですよ。ちょっと図々しいなとは思いますが。」
《レン、俺は図々しくないぞ。自分の欲望に忠実なだけだ》
だからそれを図々しいと言うんだっつーの。
ハロルドさんが私に尋ねた。
「レン、その竜は本当に人に危害を加える気は無いんだな。記録によるとケンイチと一緒に各国の王城を攻撃したとあるのだが…」
《なんだよ。あれはそんな大袈裟な話じゃねーよ。俺とケンイチが楽しく旅をしていたら俺の姿を見た王達が問答無用で俺らを攻撃対象にしてきたから仕方なく各国の王城に少しだけやり返しただけだぞ?俺は国ごとやっとく?ってケンイチに訊いたけどあいつは一般市民は関係ないだろっつーから手加減してやったんだぞ。お前らケンイチに感謝しとけよ。》
私はハロルドさんにヨゾラが話した内容を伝えた。
なんだケンイチそんなにヤバい事はして無いじゃんって私は思った。
領主さんは
「いや、しかし王城を攻撃するなど常識外れも過ぎるというか…」
《こっちの話も聞こうともせずいきなり攻撃する奴らが常識的なのか?お前らの常識なんかこっちの知ったことではないんだよ。お前らの常識をこっちに押し付けんな。》
どっちも血気盛んすぎる。私はそう思った。




