やばい実
早朝から私は張り切っていた。温室造りだ。
ヨゾラはまだ寝てたので部屋に放置しといた。
離れに向かって左隣に建てる事にする。ぶっちゃけ温室なんか詳しく知らんが魔法でどうにでもなるはずだ、多分。
まずガラスの小屋を建ててみた。広さはテントと同じ20畳くらい、高さは10Mでとりあえず。これに内部を昨日行ったアパメと同じ温度に保つ魔法とガラスがめっちゃ頑丈になる魔法をかけた。大きな岩が落ちてきても割れないイメージだ。とりあえず建てた小屋の中に入るとちゃんと暑かった。ただドアを開けた時に温度が下がる気がする。私は小屋の外を更に大きな小屋で囲ってみた。もちろん魔法もかける。大きな小屋に入ってドアを閉めてから小さな小屋に入る事にする。とりあえず温度は大丈夫そうだ。
《レン、ここは何をするところなの~?》
私はリュックから砂糖の実を取り出して水丸に説明した。
「この実を育てる場所だよ~。うまく育ったらこれが木になって実が簡単に採れるでしょ?そうしたら砂糖を使ったお菓子が沢山食べられるよ。」
きっとコックさんが作ってくれるだろう。私はお菓子作りはした事がない。
《お菓子!水丸甘いの大好き~!あ、いいものあげる!》
水丸の手が砂糖の実に突き刺さった。
《レン、早くそれ育てて~。お菓子楽しみ~!》
水丸の期待に満ちた目に負けて、なんかヤバい木に成長しそうな実を小屋の真ん中に植えた。上から適当に水をかけておく。
「また後で様子を見に来ようね。」
私達は小屋を後にし館に向かった。昨日購入したフルーツを渡しに行く。館に入るとすぐランドールさんが対応してくれた。
「昨日購入したフルーツを渡しに来たんですが、沢山あるので全部渡すと痛んでしまうかもしれません。」
ランドールさんがにっこり笑う。
「大丈夫ですよレンお嬢様。マジックバッグが返ってきましたので。」
良かった。私は大量のフルーツをランドールさんに渡し離れに戻った。
ヨゾラはまだ寝てた。竜って自由すぎやしませんか?
水丸は滑り台であそんでいる。何となくトランポリンとブランコもだしてみた。トランポリンからブランコに飛び乗って遊んでいる。楽しそうでなによりだ。
ああ、ジェロームさんに砂糖を渡しに行かないとな。
「水丸、私ちょっとジェロームさんの所に行くけど水丸はどうする?」
《水丸ブランコしてるから!》
どうやらとても気に入ったらしい。少しの間私が居なくても大丈夫だろう。敵なんかいないし。私はジェロームさんの店に向かって姿を消して飛んでいった。
店の裏の倉庫前にジェロームさんがいたのでそこで魔法を解く。
「おはようございます、ジェロームさん。砂糖を持ってきました。」
突然現れたのにあまり驚いた様子もなく倉庫内に案内された。ちょっとつまんない気持ちになる。イケメンドッキリは失敗のようだ。淡々と砂糖を倉庫に置いていると
「ああ、レン。あの家は父上が買い取ったので、家賃は不要になりました。この前お支払いいただいた家賃は返金します。」
そう決まったのならもう覆す事は無理だろう。私はおとなしくお金を受け取った。
「なんか、ジェロームさんにはご迷惑ばかりおかけしてすいません。」
この人、私と関わってから領主さんに振り回されてばかりの気がする。
「そんな事はないですよ。思いがけず砂糖も大量に入手できましたし、家は良い値で買い取ってもらえました。レンが気にする事なんて何もないです。これからもレンが何をするのかとても楽しみですよ。」
そう言ってジェロームさんは笑った。
「あ、昨日購入した砂糖の実を今朝早速植えてみたんです。上手く育ったらジェロームさんも一度見にきて下さい。」
楽しみにしてます、と言うジェロームさんと別れて私は離れに帰った。ふと温室を見るとさっき植えたあたりから30cmくらいの芽が生えていた。やっぱりか。水丸パワーが注入された実が普通に育つ訳ないよな。私はもう植えたんだから仕方がないと思い温室を無視して離れの中に入った。
《ヨゾラ、もう一回!》
《え~?まだやんのかよ。仕方ねえな。》
和室ではヨゾラが押したブランコから水丸が飛び出し障子にぶつかるという遊びが展開されていた。私は障子に魔法をかけておいた自分を心の中で褒め称えておいた。




