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旅行準備は大変


「この紋章付きの馬車で行けばオワイアントの検問も貴族専用通行口から通してもらえるぞ。便利だろう?ほら、中もさっきのテントなら余裕で置けるし。いやあ、我ながら良い案ではないかな。」

浮かれた様子の領主さん。もう誰も彼を止められないだろう。アルフィリオさんは諦め顔だ。アンジェリカさんはテント内に持ち込む物をまとめ中だ。大量にならない事を祈る。無駄だと思うけど。それよりも、馬だ。

「領主さん、私、馬は扱った事がないんですが、向こうに着いてからどうやって移動したらいいですか?」

「ジェロームも誘おう。あいつは馬も扱えるし。」

ジェロームさんは本人の与り知らぬところで勝手に参加が決定された。

私は皆を安全に移動させなければならないプレッシャーを少し感じた。意思疎通ができない馬と一緒で大丈夫だろうか?

「領主さん一回予行演習してもいいですか?」

領主さんが頷いたので私は水丸と一緒に御者台に座り馬車全体を四角い箱で囲むイメージの魔法をかけた。

四角い箱は内部の状態を地上と変わりなく且つ快適な温度を保ち、箱の外側に空気抵抗を無くし姿を消し、防御魔法も付いているというイメージをつける。

「領主さん、どうですか?馬車は見えなくなりましたか?」

「あ、ああ。全く見えないよ…」

「じゃあ、ちょっと飛んでみます。」

けっこうな高さまで浮かび館上空を旋回する。馬は暴れる事もなく大人しいままだ。

「馬も大人しいし大丈夫そうだね。さすが領主さんの馬だね~。ただ御者台はもう少し座り心地良くした方がいいかな。」

《レン明日楽しみだね~》

私は馬車を地上に降ろし魔法を解除した。

「戻りました~。魔法に問題は無さそうなので安心して下さい。オワイアント領には早朝出発して夜にはここに戻る予定にしてます。必要な物は積み込むので準備をお願いします。あ、領主さん、御者台を少し改造してもいいですか?」

領主さんは引きつった笑顔で頷いた。隣に立っていたアルフィリオさんは

「父上、明日出発ならばレンの手続きを今すぐしてしまいましょう。」

と領主さんに言い、私は執務室で何枚かの書類にサインした。

「レン、これで養女の手続きは完了だ。これを渡しておく。」

領主さんは私に金色のカードを差し出した。馬車と同じ紋章が刻まれている。

「このカードを見せればジャンポ国領内での買い物に現金は必要無い。後で請求が我が領に来る仕組みになっている。レンは遠慮せずに利用して良い。身分証明にも使えるから無くさないようにな。」

私は慌てて領主さんに言う。

「こんなカード申し訳なくて使えないです。お金なら自分で稼げます。身分証明はありがたいと思いますが…」

「レンが申し訳なく思う必要など無い。レンが我が領にもたらす恩恵は金銭などとは比べものにならん。これは私からのせめてもの気持ちだ。」

隣のアルフィリオさんも頷いている。これ以上遠慮するのは無理そうなので私は大人しくそれを受け取った。

それから私はアンジェリカさんの衣装や豪華な家具などをテントに配置した。アンジェリカさんが用意した衣装は日帰りの予定なのに何枚もある。何故なんだ。貴族というのは1日に何度も着替えるのだろうか?不思議だ。

「あらこれくらい当たり前よ。明日の気分で着たいドレスを選ぶんだから。レンもお揃いにする?」

私は謹んで辞退した。出るべき所が平らな私に着こなすのは無理だと思われるデザインだ。私がテントに置いていた家具はリュックに仕舞う羽目になった。いつか再び使う日が来るのだろうか?

夕食を是非一緒に、と誘われたが非常に気疲れしそうなので

「明日に備えてまだまだ準備がありますので今日は遠慮させていただけますか?」

と嘘をついたら皆納得してくれた。騙して申し訳ないと思うが、マジ疲れた。離れで水丸ともつ鍋を堪能してから私はゆっくりバスタイムを楽しんだ。

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