土足禁止
「なあ、ハロルド。瞬間移動って今まで五体満足で成功した人がいないあの魔法だよな。それをレンは使えるのか?あんなお気軽そうに?」
ジェグラシムは瞬間移動に挑戦した魔法使い達の末路について話を聞いた事があった。挑戦者は尽く四肢が欠損した状態で移動されてきたらしい。中には頭が欠損した者もいたとか。今では試みる者はいない危険な魔法だ。
ハロルドは何か吹っ切れたような笑顔で
「ジェグラシム様、私もレンが瞬間移動が使えるのは今知りましたが、まあレンなら当然と言いますか。もう、いちいち驚いていたら身がもたないですよ。我々は精々レンがやらかす事の後始末を共に頑張ろうではないですか。いやあ、成り行きとは言えレンがジェグラシム様の養女になってくれて本当によかった!」
「父上、レンを上手く使おうなどと絶対に思わない方がよろしいかと。レンの自由な行動から生まれる恩恵が受けられるだけで良しとしましょう。あ、父上面倒事の後始末はよろしくお願いします。」
二人は言いたい事だけ言って仲良く帰ってしまった。
ジェグラシムはレンの想像を超える魔力を知り、その力に恐れを抱いた。だが、
「まあ、なるようにしかならんな。」
そう呟き部屋を後にした。
離れに戻るとアンジェリカさんは既にいなかった。私はとりあえずトイレだけ日本の物に変え一階はそのまま使う事にした。ただ、玄関でルームシューズに履き替えるようにはした。土足は嫌だ。
「水丸、二階に部屋が4つもあるから水丸専用の部屋も作る?」
《ううん、水丸レンと一緒がいい!あのね、タタミがいいの。》
うーん、まず部屋4つもいらんよね。私は廊下を挟んで二部屋ずつある片側の二部屋の間の壁を消した。部屋の中の物も全部消し床全体を畳にする。今回はベッドではなく布団にしてみた。なんせ落ちる心配が無い。押し入れも作った。アンジェリカさん達が見に来るかもしれないから頑張って布団くらい仕舞おうと思う。部屋のドアがある壁も全部消し障子にしてみた。破れないように魔法をかけるのも忘れない。廊下はフローリングに変更。何もない空間がちょと寂しい。
「水丸、こんなの好きかな?」
私はこども用の滑り台を出してみた。
《わ~!》
水丸はエンドレス滑り台状態だ。気に入って貰えてよかった。水丸がご機嫌で遊んでいる間に辞典に砂糖の実について訊いてみた。私が会った人は皆お菓子好きみたいだしもっと手軽に食べて貰いたいな。
[砂糖の実は砂糖樹になるオワイアント領で多く栽培されている植物です。24時間の平均気温が27度を下回ると枯れます。実を植えてから一週間ほどで発芽し、発芽から二週間で実をつけるようになります。木は高さ6m程となり寿命は10年程です。]
育つの早!そもそもオワイアント領ってどこにあるの?
[ここから直線距離で約1600km南にあります。]
えっと、全然想像できない。落ち着いて考えよう。直線距離で時速60kmで進むと26~27時間くらいかな?多分。馬車は随分ゆっくりだったし直線に進む訳でも無いから、そりゃ輸入に時間もお金もかかるよね。でもさ、温室作れば栽培できそうだよね。育ててみたいな。そんなことを考えていると
「レン~?いるかしら~、って何これ。」
玄関からアンジェリカさんの声が聞こえた。慌てて一階に降り
「アンジェリカさん、そのルームシューズに履き替えてください。異世界風は土足禁止です!」
と伝える。なんでみんな土足で平気なんだろう?不思議だ。靴を履き替えたアンジェリカさんをテーブルに案内する。
「レンが快適に過ごせているか心配で来ちゃったの。大丈夫?問題はないかしら?」
「はい。家に問題はありません。快適に過ごせそうです。でもちょとお願いがありまして、砂糖の実を育ててみたいので空いている土地があれば貸して貰えませんか?」
私はタイミング良く現れたアンジェリカさんにお願いしてみた。




