何しに来てたんだっけ?
「そろそろお米が炊き上がりそうです。道具の研究には関係無いかもですが、試食しますか?」
ヒューゴさんが言う。
「道具を使って何ができるのかを知る事も研究の一部だ。」
領主さん、ジェロームさん、ハロルドさんは異世界ではどのようにコメを食べるのか興味があるとの事なので、焼き鮭、だし巻き卵、きゅうりの浅漬けをテーブルに出した。お箸は無理そうなのでフォークも出した。茶碗にご飯をよそい、皆に渡す。水丸にはおかず全種を茶碗に乗せて渡した。
「私の住んでいた地域ではこのように炊けたご飯と一緒に今出したようなおかずをたべるのが一般的です。」
私がそう言うとそれぞれ気になるおかずとともにご飯を食べる。みんな最初は恐る恐るだったが、気に入ったようであっという間におかずもご飯もなくなった。
ジェロームさんが
「コメのこのような調理方法を見るのは初めてです。」
と言った。他の皆も頷いている。領主さんが
「レン、こちらではコメはスープにアクセントで入れるくらいが一般的なんだよ。でもこの調理方法だとコメ単体で食べられるし、お腹も満たされる。どんな食べ物とも相性がよさそうで素晴らしいな。コメは安価な食材だし是非この調理方法を広めたい。」
「この調理方法は炊飯器じゃなくても出来るのですが、私はあまり詳しく無くて…。あ、でも時間を頂ければ思い出せるかも知れません。」
後で辞典にきけばわかるだろう。
「では私はそろそろ家に戻る。一刻も早く研究を始めたい。」
ヒューゴさんがそう言ってマジックバッグに道具をひょいひょい入れていく。マジックバッグは高価だと聞いていた私が結構驚いた顔をしているのに気付いた領主さんが
「ああ、あれは私がヒューゴに貸したんだよ。後で返して貰うから心配ない。あいつとは結構長い付き合いだしな。」
「じゃあ帰る。何か解ったら連絡する。」
そう言ってヒューゴさんはあっという間に帰っていった。これで突然始まった異世界の道具と魔石の研究の件は一段落ついた。あれ?私は何をしにここに来たんだっけ?あっ、水丸の液のことを忘れてた。
「ハロルドさん、あの液を領主さんに渡した方がいいですか。」
私はこそっとハロルドさんに聞いた。
ハロルドさんもあっ!という顔を一瞬したが
「レン、とりあえずもう黙っておけ。これ以上の面倒事は今日はごめんだ。」
私の耳元でハロルドさんが囁いた。
「ところでレンさん、あの家はどうしますか?」
ジェロームさんが訊いてきた。うーん、ギルドにも近いし、気軽に瞬間移動に使えて便利なんだよね。水丸には不評だけど。
「できればそのまま継続してお借りしたいです。あの場所は便利ですし。」
「だが、レン、住む場所なら提供しただろう?あの離れでは不満なのか?ならもっと豪華な家を…」
いかん。また領主さんが暴走しそうだ。
「いえ、そうじゃなくて、あの家は瞬間移動するのに便利なんです。あの家は他人が入れないようにしているので出先から一瞬で戻るのに便利だな、と思って…。場所も良いですし。」
離れにあの家と同じ魔法をかけたら領主さん達も入れなくなっちゃうしね。
領主さん、ジェロームさんは何故か顔が青ざめている。ハロルドさんだけが全く動じた様子がなかった。何かまずい事を言っただろうか?私が多少常識外れなのはご存知のはずなんだが。
「レン、今日は急に色々あって疲れただろう?もう、ゆっくり離れで過ごしなさい。あとの事は我々で何とかしとくから。」
領主さんが優しくそう言ってくれたので私はその言葉に甘える事にした。




