領主暴走
《レン、美味しい!》
真っ先に水丸がプリンに飛びついた。
「あれはプリンという異世界のデザートなんですが…ほら、早くしないと水丸が全部食べちゃうかもですよ。」
三人は異世界のデザートという言葉を聞いて慌てて席に着いた。
「「「!!」」」」
三人とも一口たべて目を見開いた後飲み込むようにプリンを平らげた。
「えっと、もう一個出しましょうか?」
三人は何度も首を縦に振った。
《レン、水丸も~!》
私はプリンを4個出して、自分もゆっくりプリンを味わった。
「レン、ありがとう。とても美味しかった。気持ちも落ち着いたよ。それでハロルド、どうだ?もう少し人を手配してもいいか?異世界の道具の研究の為に呼びたい奴がいるんだが。私の知人で魔石の研究にしか興味が無い変人がいてね。研究のためならどんな約束でも守るだろうし、大体ほとんど人付き合いをしてないから安心だぞ。」
なんか酷い言われようだ。
「ジェグラシム様わかりました。レンも余程の事が無い限り自分の身は守れそうですし。ただ、レン、お前はいいのか?レンの事を知る人が増えるほど面倒事も増えるぞ、多分。」
「ハロルドさん大丈夫です。画期的大発明になるかもしれないなんて、わくわくします!面倒事なんてその都度対応すればいいじゃないですか。どうしようもなければ、逃げればいいですし。あはは。」
領主さんが慌てる。
「レン、逃げる前に必ず私に相談して欲しい。必ず何とかしてみせる。そうだ、いっそのこと私の養女という事にするか?領主の娘に手を出す奴なんか中々いないから何かと便利だぞ?うん!中々良い考えではないか?レンもまだ若いのに異世界から一人でこちらに来てさぞかし寂しかっただろう。これからは私を〈お父様〉私の妻を〈お母様〉と呼ぶといい。なに、妻も反対なんぞせんよ。娘が欲しかったと言っておったしな。」
いや、いきなり何言ってんの。私は焦った。
「いやいや領主さん、そんな事思いつきで決めたら駄目だと思いますよ。奥様もこんな娘がいきなりできたら困ると思います。」
ジェロームさんも焦って領主さんを止めようとする。
「そうですよ父上。ちょっと突っ走り過ぎです。落ち着いて下さい。」
ハロルドさんは黙って上を向き、空の星の数でも数えてそうな顔をしている。現実から逃げているようだ。
「いや、私は落ち着いているぞ。ちょっと妻を呼んで来るから待っててくれ!」
そう言うなり領主さんは部屋を出ていった。
「いや、父上ちょっとお待ち下さい!…ハロルドさんも父を止めて下さいよ!」
「いや、無理だろ…それにレンも領主に協力したいなら確かに悪い案では無いとおもうぞ。」
意外だ。絶対領主さんを止めると思ったのに。ハロルドさんは言う。
「レンが自分の能力をジェグラシム様やこの世界に役立つように使いたいなら後ろ盾は有った方が安全だ。もちろんレンの能力を知る人は少ない方が良い事には変わりない。しかしもうそれをゼロにするのは無理なのだから知られても簡単にレンに手を出す事は出来ない立場を手に入れるのは悪く無い。まあ、これはレンの気持ちを無視した提案だが。」
うーん、なる程。実利だけを考えれば悪くないのかな?
「いや、これは私だけの問題では無いですし。領主さんのご家族の気持ちも考えないと…」
「いや、レン。父上が既に決めてしまったのなら私達が反対するのは無理だ。たとえ子であっても領主の決定に逆らう事は出来ない。この世界ではそれが普通だ。」
えー、なんか家族が可哀想。でもそれが普通なのか。この世界の普通って難しいな。
「領主さんの後ろ盾が有った方が良いのは解りますけど、領主の娘って行動も服装も色々なお付き合いも大変そうなイメージしか無いんですが。私にそんな事を求められても無理ですよ。なんせ常識外れの異世界人ですから。」
「「確かに。」」
二人の声が揃った。そんなにはっきり肯定されると、なんか微妙にイラッとくる。
どうしたもんだかなぁ、と考えていると領主さんが奥様を連れて戻ってきた。




