黒いレン
水丸をショルダーバックから出して次は広場に来た。真ん中に噴水があり周囲には屋台が並んでいる。
「水丸、気になる屋台はある?」
『う~んとねー、あっち!』
水丸が気になる屋台の前に来た。…謎の木彫りの像がこちらを向いて沢山並んでいる。足は4の字で腕を肩の高さで広げ肘から先は直角に上に曲げ手の平は外側に折れてる。顔は人を馬鹿にしたような顔だ。
「水丸、これが気に入ったの?」
《違うよ~、ヘンテコなのがいっぱいあるから気になったの~》
私の聞き方が悪かったのか。私達はそそくさとその場を後にした。気を取り直して食べ物の屋台を色々見て一番人が並んでいる屋台の串焼きを2本買った。大角鹿の串焼きで一本200ガルだった。けっこうボリュームがある。噴水の台に腰掛けて水丸と一緒に食べる。柔らかくて、なんか甘辛い感じで美味しい。フルーツに漬けてるのかな。
「おいしかった!水丸は?」
《水丸もこれすき~》
思えばこの世界の食べ物は初めて食べた。魔物の肉は意外と美味しい。これは夕食も期待できるかもしれない。水丸が噴水の水と戯れているのをしばらく眺めてから服屋に行った。黒のレギンスみたいなもの、その上にはく黒のスリット入りミニスカート、黒のタートルネックカットソーみたいなやつ、皮の胸当て、が気に入ったのだがお金が足りなかった。皮の胸当て(7000ガル)だけ購入し、宿の部屋に戻った。
部屋に入ってさっきの真っ黒三点セットをイメージして魔法で出した。こんなの反則だと思うが仕方ない。だってお金が足りなかったんだもん。少しは手元に残しておきたいし。あと皮の編み上げブーツも出した。早速着てみる。体にフィットしている服を着るのは初めてかもしれない。日本では親が嫌がったからな、そういう服。髪も自分で切ってた。まあ、そんな事はどうでもいい。マーサさんに貰ったベルトと胸当てが冒険者っぽくて中々良いのではなかろうか。魔法で出した鏡をみながらそう思った。
ジェローム商店で買ったボトルと瓶を机の上に出して見ながら魔法で同じ物を10個ずつ出した。ボトルにペットボトルのお茶とりんごジュースを五本ずつ注ぎリュックに仕舞っとく。それから日本のスーパーで見た1Kg入りの白砂糖を何個か出す。それを瓶に詰めリュックにしまった。
《レン、それ欲しい。ほしい~!》
水丸がピョンピョンしてねだるので残りは水丸にあげた。仕草が可愛いすぎて逆らえない。
辞典を開いた。
「ジェローム商店の言う珍しい皮ってどういうの?」
[紅大蛇、緑大蛇、黒鰐です。]
「生息地は?」
確認すると緑大蛇の生息地がここから一番近い。そのうち行ってみようかな。
「この世界の蜂蜜はなんであんなに高いの?」
[蜜蜂の体長は15センチほどあり巣に近づくと集団で襲ってきます。巣のある場所もこの地から遠い森の中心部で危険な魔物が多く生息してます。今のところ養蜂は成功しておりません。蜜の採取はとても困難で採取できる人はとても少ないからです。」
なるほど。野生の蜂からしか採れないのか。納得。
日も暮れてきたので水丸と食堂に向かった。端の席が空いていたのでそこに座って店員さんに声をかけた。
今日の夕食は角兎のシチューらしい。やがてそれがテーブルに置かれた。フランスパンみたいなパンも付いている。見た目は普通のシチューだ。一部を除いて。お肉を口にいれた。
「あ、鶏肉みたい。ジャガイモ?もホクホクで美味しい!」
謎の紫色のキノコは食べるのに勇気がいった。味はシメジだった。シチューにパンをつけて全て美味しくいただいた。そして水丸が器ごと消化するのを失念していた私はこっそり魔法で同じ器を出して何食わぬ顔で部屋に戻った。




