村の散策
「さて、んじゃ今日はあんたが普通の冒険者として生きる為の講習をしよう。」
私は背筋を伸ばしマーサさんの話を聞いた。
「新人冒険者はまず、薬草採取と弱い魔物の肉、素材の回収をメインに活動する。活動記録は冒険者カードで管理している。ある程度の経験を積むとカードに資格の表記が出る。資格が取れたら新人は卒業だ。あんたはまず、何かの資格を取ることを目指すといいだろう。だが冒険者としての活動の前に村を案内しようか。昨日行きたそうにしてたし。一人じゃ何かやらかしそうで心配でしょうがないし。」
マーサさんの後に続いてギルド一階に降りると受け付けに若い女性が座っていた。
「レン、このこはたまにギルドの手伝いをしてもらっているトーニャだ。この村の村長の娘さんだよ。」
くりっとした目の可愛らしい女性だ。
「はじめまして。新人冒険者のレンです。」
私が挨拶をすると
「トーニャです。記憶が曖昧なんですって?可哀相に。大丈夫!この村の人はみんな親切だから。困ったことがあったらなんでも相談してね。」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
トーニャさんに見送られギルドを出ると
「ああ、昨日村長に記憶がところどころ無い娘を私が面倒見てるって話しをしといたから。あんたが多少変な事をしてもこれで納得するだろ、多分。」
何その胡散臭い設定。私は不安げにマーサさんを見た。
「大丈夫だよ!ギルド長のあたしが保証人なんだ。それでみんな信じるさ。」
そんなもんなの?マーサさんの後ろに付いて歩いていると周囲の家よりも立派な家の前に着いた。マーサさんが庭で草むしりをしているおじさんに話しかける。
「おはよう村長、こいつが昨日話したレンだよ。」
おじさんは立ち上がりこちらに近づいてきた。
「おはようございます。昨日からマーサさんにお世話になっているレンです。よろしくお願いします。」
おじさんは笑顔で
「マーサから話は聞いてるよ。俺は村長のトーマスだ。まだ若い娘さんが大変だね。村のみんなにはレンの事を伝えてあるから、困った事があれば手助けできると思う。安心してくれ。おお、本当にスライムを連れているんだな。珍しい。」
水丸が村長の周りをピョンピョンしてる。
「はは。なんだか可愛らしいな。これなら連れて歩いても大丈夫だろう。まあ村でゆっくり過ごせば何か思い出す事もあるだろう。あ、娘とはもう会ったか?歳も近そうだから仲良くしてやってくれ。じゃあ冒険者頑張ってな。」
「はい。ありがとうございます。頑張ります。」
村長の家を後にした私達は村のお店が集まっている場所に着いた。集まっていると言っても雑貨屋と、宿屋と併設の定食屋だけだったが。
「小さな村だから店はここだけだな。」
雑貨屋に入ると店内は思ったより広くきちんと見やすく色々な物が陳列されている。小麦粉や食器、よくわからん四角い板?やガラス?の小瓶、布地、アクセサリーまで結構なんでもある。私は四角い板を指差しマーサさんに尋ねた。
「これは何ですか?」
「これは携帯用コンロさ。ここに火と動力の魔石を入れると使える。野外でも温かいスープなんかを作れる道具だよ。」
「へ~。ただの板みたいなのに便利ですね。」
店内を見てまわる。そういえばお肉や魚は売ってないのかな。
「マーサさん、お肉や魚は売ってないんですか?」
「ああそれは奥の冷蔵庫に保管されてるよ。あっちだ。」
冷蔵庫があるんだな。思ったより生活水準は高いみたいだ。




