水丸の手
「ガドン、こいつに冷蔵庫を見せてやってくれ」
「ああ、このこが例の娘さんかい?私はこの店の店長のガドンだよ。おいで冷蔵庫はこっちだ。」
カウンターの奥にある冷蔵庫の前に案内してくれた。
見かけは木でできた箱で中を見せてもらうと金属の板で仕切られている。板の上には生肉の塊が置かれていた。
「魚を置いておくことはあまりないんだ。村のすぐそばに川があるからね。みんな自分で釣って食べるのがほとんどだ。中にあった肉は牙猪の肉だよ。角兎は今日はないねえ。」
「この冷蔵庫は何の魔石を使っているんですか?」
「水の魔石を特殊加工した物だよ。加工が難しく数が少ないから貴重品なんだ。冷蔵庫は一般家庭では持っている人は少ないんだよ。」
「大事な物を見せてもらってありがとうございました。」
私はいつの間にか外で待っていたマーサさんと合流した。
「さて、村は大体見ただろ。店はここだけで後は畑だ。一旦ギルドに戻るよ。」
定食屋に行ってみたかったがマーサさんが行ってしまったので後を追う。ギルドの応接室に戻ってきた。
「村長に挨拶もしたしこれで村で生活しても問題ないだろう。ところで昨日はどこで寝た?部屋のベッドは使ってないだろ?」
私はリュックとテントの話しをした。機能についても。
「神様もずいぶん太っ腹だねえ。テントは見られても大丈夫だろう。魔法で結界を張るやつもいるし。リュックもマジックバックだと言っとけばごまかせるさ。」
マジックバックは古代遺跡でたまに見つかるもので馬車一台分くらいの荷物は入るらしい。時間停止の機能もついているが、高価なので悪い奴に狙われ易いのが難点とのこと。
「この村で生活している間は問題ないだろう。それと、昨日薬草採取していた辺りで角兎が出なかったかい?あれは気が荒くてすぐ角で刺そうとしてくるんだが、あんたが倒したのかい?攻撃魔法も使えるのかい?」
「ああ、出たんですが水丸が丸ごと消化したんです。」
「まあ、スライムはなんでも消化するが…。しかし跡形もなく消化されると肉も素材も手に入らないからなあ、お金を稼ぐという点では問題だな。」
『きゅ~。』
《水丸、手を伸ばして攻撃できるよ。それでやっつけたらレンお肉手に入る?》
「あ、水丸が手を伸ばして攻撃できるって言ってます。」
「手?」
水丸が上に向かって体からしゅっとトゲみたいな物を出した。
『きゅ~』
《ね、手出たでしょ?》
手なのか?これ。
「手ではないと思うんだが、やりたい事はわかった。後、レンにはこれをやろう。」
マーサさんはナイフと皮のベルトにナイフを入れるケースが付いている物をくれた。
「さっきの雑貨屋で見つけてこっそり買ったんだ。これから新生活を始めるレンにプレゼントだ。」
「わあ!ありがとうございます!」
早速ベルトを腰にまき、ナイフをケースにしまった。
「はは。なかなか冒険者らしくなったじゃないか。じゃあ早速薬草採取に行ってもらおうか。村の北側の門を出たらすぐ草原だ。角兎もいれば狩ってきな。狩れれば解体の練習をするよ。」
私はマーサさんに教えもらった道を行くと北門が見えてきた。門番さんに挨拶をして草原に出る。
門が見えなくなるところまできた。私はテントを出して中で休憩した。テーブルにナポリタンスパゲティを出し昼食を水丸と食べた。
「よし水丸行くよ。」
テントを片付け周りを確認すると昨日採った薬草と同じ草が結構生えていた。私はかごを2つ出し傷復草と胃復草を分けて入れる。
「水丸は周囲を見張ってね~。」
《うん、水丸頑張る!》
それぞれ5本ずつ採取したら、
《レン、右から来るよ》
私は立ち上がりナイフを手にして身構えた。体長30センチくらいの角兎が現れた、が、
《えいっ。》
水丸の手?が角兎の首に刺さり角兎は天国に旅立った。
「うわっ。血がいっぱい出てるぅ」
《レン、大丈夫?血、嫌い?》
水丸はそう言うと角兎の首にくっついてしばらくじっとした後離れた。血は止まり地面の血も消えている。
《水丸、血だけ食べたよ~。お肉食べてないよ~。えらい?》
「水丸そんな事も出来るの?すごいじゃん。えらい!」
《わーい。ほめられた~。》
嬉しそうに飛び跳ねる水丸。私はリュックに角兎をしまった。
「もう少し薬草を採ったら村にかえろう。水丸見張りお願いね~。」
見える範囲の薬草を採って私達は村に帰った。




