ニコニコ、メタファー
大天使山本はニコニコしている。そのニコニコは、たとえるなら、、、。
日本のどこかにあると言われる大自然の中で、青少年タカシはドキドキしていた。今日こそはやってやる、そう意気込み続けて、何ヶ月がたっただろう。明治時代に架けられたと言われる、火喰山と鷹井山をつなぐ一本の橋の上から、渓流を見下ろすタカシ。短パンの下には、ブーメランの水着を着込んでいる。
「俺はできる、俺はできる、俺はできる」
タカシは一丁前に、右手を左胸に当てて、心を落ち着かせようとしていた。しかし、経験の浅いタカシの心臓はブルブル震えて止まらない。
さて、タカシは何をしようとしているのだろう。それを知るためには、タカシ本人に話を聞くのがベストだ。
-橋の上で何をしているんですか?
-なんだっていいだろ、お前には関係ない
-すみませんでした
(もっと忍耐強いインタビュアーいないの!?)
タカシは飛び込みをしようとしていた。度胸試しで、自分に度胸があることを証明したかった。
けれど、いざ橋の上に立って、尖った岩に囲まれて、呑気にキラキラ光る川を目にすると、足がすくんだ。目測を誤って岩の上に落ち、お腹を貫かれる可能性はもとより、急な突風に煽られて、川に着水できるはずのジャンプが、そそり立つ岩の先端に、肛門から串刺しにされるジャンプに急変するかもしれない。かといって、突風を事前に予測することはできない。予測できないから突風なのだ。恐い、どうしよう。
太陽がギラギラと熱戦を送っている。汗が流れる。川は太陽の光を、まるで金属のようにテカテカと反射している。
「うぅ」
そう、大天使山本のニコニコは、つまるところ、そういう感じだった。




