トルネ村
山道を降っていくと途中から、土を踏み固めた道に出た。
その道を歩いていくとようやく家が見えてきた。
「よく頑張ったな、ハル!」
「そしてここがオラたちの村、トルネ村だ!」
コダは笑顔で村を紹介してくれた。
「やっと着いた・・・」
丘から村が見えたが、実際に歩くと結構な距離があった。
コダはもう少し、もう少しだって言ってくれなきゃへたり込んでいただろう。
足が棒のようだし、足裏も相変わらず痛い・・・。
山道から抜けて最初に目に入った家は、策に囲まれてて小さい門に男性が槍をもって立っている。
見張りだろうか、男性も身長はコダと同じくらいの身長で、同じ服装で上半身は裸、日焼けした逞しい体つきだった。
猪を担いだコダは見張りの門番に挨拶をして何か話していた。
「おぉコダ戻ったか、いい獲物が捕れたな! 山に感謝しなきゃいけねぇ!」
見張りの男は大きな声でコダを迎えた。
「おうよ、結構立派な猪だ!」
「でも仕留めたときに簡単な処理しかできてないから、村長のところでちゃんと処理してほしいんだ」
「わかったぜ、ところでコダ後ろに連れている奴は誰だ、やけに白くてほそなげぇ奴は?」
見張りの男はハルを珍しそうに見ている。
「安心しろリゴ、悪い奴じゃねぇ。ハルって名前でな、オラが狩りの最中に山で拾ったんだ」
晴久って名乗ったのにハルが名前になってる・・・。
この村ではコダに合わせておこう・・・。
「ははは、相変わらずお人好しだなぁコダは!」
「まぁコダが大丈夫だっていうなら問題ないだろ、村長に獲物と一緒に報告すれば許可が下りるだろうよ」
見張りの男はリゴというらしい、挨拶をしようと思ったが握手とかの文化はあるのかな・・・?
でもコダと会ったときはしなかったし、言葉での挨拶をしよう。
「初めましてリゴ、俺はハル、コダが言うように山で助けてもらったんだ、よろしくな!」
「おう、ハル、俺はリゴだ、よろしくな!」
初対面の人に敬語を使わずに話すのは慣れないが、うまくできたと思う。
「それじゃあハル、村長に報告しなきゃいけないから中に入るぞ」
コダに誘われるまま門をくぐり家の庭に入っていく。
「おーい、そんちょーう!」
「コダが戻ったぞーっ!」
見張りのリゴが大きな声で、庭の中の家に向かって村長を呼んだ。
俺とコダは仕留めた猪を庭に置いて、玄関口のところで立っていた。
玄関口には、細く割った木や草を編んだ簾のようなものが垂れ下がっている。
「なぁコダ、村長ってことは偉い人だよな、跪いたほうがいいか・・・?」
「別にしなくていいよ、楽にしとけ!」
コダは笑って、気楽にしておけという。
とは言われても村の長との出会いは少し緊張する・・・。
しばらくすると村長らしき人が玄関から出てきた。
見たところ30代だろうか、村長にしては若い・・・。
「おぉコダ戻ったか」
村長もコダのような腰巻に、上半身には布のような生地のベストを着ていた。
この人も身長は小さく、体は逞しい。
・・・もしかしてここの男性って皆こんな体なのかな?
「ところでコダ、その細長い男性は誰だ?」
体の細さと身長を指摘されてるので、やっぱり皆コダみたいな肉体のようだ。
「こいつはハルってんだ、俺が山の中で拾ってきた、リゴにも言ったが悪い奴じゃねぇ」
「それにコバヤシ村って所から、その体の細長さで追い出されちまったみたいだし、村に入れてやりてぇんだ」
「またコダのお人好しか・・・、まぁお前がいいなら村にいることを許可しよう、何かあってもコダが責任とれよ」
「もちろんだよ、ありがとな村長!」
コダの村の中の信用度すげぇな・・・
と感動していたが大事なことを思い出した。
社会人として、ここで挨拶しないと!
「初めまして村長、私はコバヤシ村のハルといいます。村から追い出され、山の中をさ迷っている時、コダに危ないところを助けてもらいました」
「また此度は村に滞在させていただくことを許可いただき、誠にありがとうございます」
社会人生活で培った言葉とともに最敬礼のお辞儀を行った。
コダは笑っている。
村長はポカンとしていた。
「相変わらず変な言葉遣いだな、ハルは!」
「・・・まぁ、挨拶ができるならいいだろう、コダ獲物はそれでいいか?」
村長は庭に置いてある猪に目線を向けた。
「あぁ村長、今回の獲物は猪だ、最低限の処理しかしてないから残りは頼む。」
「わかった。コダは解体場に猪を運んでゼンに処理のことを言ってくれ、記録と解体が終わったら獲物をもらえばいい。俺は槍をしまって記録してくる」
「わかった、じゃあ終わるまで庭で待ってるわ」
そう言ってコダは村長に槍を渡した。
村長は槍を受け取って家の中に消えていった。
「じゃあハル、オラたちは解体場にいこう」
コダに言われてついていく。
村長の家の左側の奥に、屋根だけを大きく張り出した小屋があった。
壁はほとんどなく、風がそのまま通り抜けている。
中には大きな木の台と、平たい石を敷き詰めた床があり、床の端には細い溝が掘られていた。
「ここが解体場だ」
「ここで猪を解体するのか?」
「そうだ。屋根があるから雨が降ってもできるし、風も通るからな」
解体所には身長はコダと同じくらいで、体つきは少し細いが自分よりは逞しい男がいた。
「やぁコダ、お帰り。それが今日の獲物?」
「おうゼン、ただいま。 さっそくでわりぃけど、こいつを解体してくれよ、事情があって処理は最低限なんだ」
「コダが処理を最低限にするなんて珍しいね、何かあったの?」
「あぁ、狩りの最中でハルが猪に襲われててな、ハルを助けて治療もしてたからなんだ」
「あぁなるほど、それで最低限なんだね。その人がハル?」
ゼンもリゴたちと同じように物珍しそうに自分を見る。
・・・少なくてもこの村の平均身長は小さくて間違いないだろうな。
「初めましてゼン、ハルだ。よろしくな」
「うん、よろしく!」
挨拶をしてゼンと向き合った。
年齢は15歳くらいだろうか、結構若いように見えた。
「じゃあコダの獲物を記録しちゃうね、猪で大きさは真ん中だね」
ゼンは「猪」、「中」と書かれた木簡を取り出し、コダの名前を書いている。
・・・え?
木簡に書かれた、「コダ」、「猪」、「中」の文字が読める
なんでだ?
俺、この世界の文字なんて知らないはずなのに・・・




