下山途中
山道を二人で歩いて降っていた。
コダが先導し、自分は後からついてくる構図だ。
コダは山道に慣れない自分を気遣ってか、比較的歩きやすい道を選んでくれている。
ただ草鞋を履いて歩くことに慣れていないこと。
現代の靴と違い、クッション性がない分地面を踏んだ時の衝撃がダイレクトに来ることがわかる。
なにより傷のある足裏と、鼻緒がある部分が、こすれて痛い・・・。
慣れない足取りでひょこひょこ歩いていると、猪を担いだコダがアドバイスしてくれる。
「ハル、足を上げすぎなんだ。もっと低く、地面をなぞるみたいに歩いてみな」
「こうか?」
「そうそう。あと、足の指で草鞋を掴もうとすんな。紐でちゃんと固定してあるから、力を抜いていい」
「地面を踏むっていうより、足の裏で地面を探る感じだな・・・」
「そうだ。山ン中じゃ石も根っこもあるからな。足の裏で地面の具合を感じながら、置く場所を選ぶんだ」
「なるほど・・・」
「それと、痛ぇからって変な歩き方すんなよ。足をかばいすぎると、今度は転ぶぞ」
「分かった・・・こう?」
「おう、それならいい。慣れてくれば山でも歩けるようになるさ」
草鞋って、思ったより難しいな・・・
コダのアドバイスのおかげで、初めよりは歩きやすくなった。
日本でも昔はこれで山道を歩いていたんだよな・・・。
昔の人は、よくこんな履物で長い距離を歩けたもんだ。
炎天下の中を二人で歩き下っていく、途中コダが気遣って休憩を入れてくれた。
残っていた干し芋を食べて、残っていた水を飲んだ。
腰くらいの高さの岩に座ってコダと話す。
「そういえばコダは水筒2本持っていたけど、俺の足を洗って水を使ったけど足りるのか?」
「あぁ、大丈夫だ。ほら沢があったろ、あそこで飲んできたんだ」
え、あそこの水飲めたのか・・・。
だったら飲んじゃってよかったなぁ・・・。
あそこでのどの渇きを潤せたらと思うと少し後悔した。
「あーでも、ハルは山のない村で育ったかもしれんから言っておくと、水が濁っているときや雨が降った後は飲んじゃだめだぞ」
山道を慣れてない歩き方をしているので、コダは自分を山のない村で育ったと思ったらしい。
「そうなのか、いろいろ教えてくれてありがとう」
教えてくれたことにお礼を言って、蚊に食われている部分をポリポリ掻いていた。
「よく見るとハルは結構虫に食われているな、虫よけの準備してなかったんだな」
「虫よけに使う草はあるんだけど、今は猪を持って帰るのが先だからな。村に着いたら塗ってやるよ!」
なるほど、文明は昔っぽいけど、ちゃんと自生している草とかをうまく活用しているんだな・・・。
今あるものを有効に活用する、生活の知恵みたいなものに関心を覚えた。
「ありがとう、よろしく頼むよ」
「おう、まかせとけ! じゃあ村までもう少しだから頑張っていこうぜ!」
そう言ってコダはひょいと立ち上がり、猪を担ぐ。
自分も傷がまだ痛むが、立ち上がりコダに付いて歩き始める。
「ぜぇぜぇ、なぁコダ・・・あと少しってどれぐらいだ・・・・?」
休憩後から1時間くらい歩いただろうか。
いくらコダが気を使って歩きやすい道を選んでくれているが、山道しかも整備されていない道だ、
キャンプで山によく入る自分でも慣れない履物と、この暑さで参ってきた・・・。
「もうちょっとだよ、あそこのでっかい木を曲がれば見えてくるよ」
コダが指さした木を曲がると、丘の下にコダのトルネ村が見えた。
少し遠いのではっきり見えないが、家がいくつかあり、水田と畑が何個もあるように見えた。
こういう昔ながらの村は、ドラマやアニメでしか見ていなかったので実際に見てちょっと感動した。
「へぇ・・・いい村だな」
「だろ! 村に着いたら家にいるかーちゃんと娘を紹介するよ!」
あぁ、かーちゃんってのは母じゃなく、嫁さんのことか。
娘がいるってことは、コダの見た目の年齢が20代前半ぽいからまだ赤子かな・・・?
というかもう結婚して所帯を持ってるんだ・・・。
とか考えて、会うのが楽しみになってきた。
「あぁ、会うのが楽しみだ」
「そうだろ、オラのかーちゃんはすっげぇ別嬪だからよ・・・惚れるなよ?」
ちょっとだけコダの顔が怖くなってた、どうやら嫁さんにべた惚れのようだ。
「はは、大丈夫だよ、人の嫁さんには手を出さないさ」
「なら安心だな! あとは娘にも手ぇだすなよ!」
「さすがに子供には手なんか出さないよ!」
「おっし、ならいいぞ! じゃあ村までもうちょっとだ、ハルいくぞ!」
そう言って二人で歩きだし、丘を降り村の入り口までたどり着いた。




