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治療と嘘

「おう、じゃあ傷の具合見るから足だしな」


「わかった」


座っている状態で、痛みが強かった左足をコダに向ける。


「細かい木片は取り除いて・・・まずは足を洗うぞ」


コダは水筒を出して足の裏を洗い始めた。


「痛っ!」


水がかかったせいか、少ししみる。


「我慢しな、悪くなって足切るよりはいいだろ?」


この言葉で、この世界では少しの傷の悪化が取り返しのつかない症状を招くのかと思った。

コダが汚れた足を、手を使い優しく傷を洗い流す。

その後、同じように右足も洗ってもらった。


「よし、綺麗になった」

「そのまま足を土につけないようにしておけよ、あとは傷に効くやつ塗ってやる」


そう言ってコダは置いてあった草の何枚かを口に入れて咀嚼し始めた。

ある程度噛んだ後、水筒から水を少し口に含んでいる。


・・・まさか・・・。


コダは口の中で混ぜ終わったペースト状の草を口から出す。


「切り傷にはこれが効くんだ」

「ほれ、もう一回足だしな」


・・・やっぱりか・・・。


人が口に入れたものを体に、ましてや傷口に塗るのは結構抵抗があった。

だがコダは好意でやろうとしてくれている。

さすがに断ることはできなかった。


「あ、ありがとうなコダ・・・」


少しひきつった声を出してしまったが、コダは気にせず草を足の裏に塗り込んでいく。


「しっかし、驚いたぞ、山で狩りをしようとしたら大声が聞こえてさ、何事かと思ったら猪に追われてるんだからさ!」


塗りこみながら、コダはトラブルにあった自分を楽しそうに話していた。


「猪も足に怪我負ってたし、興奮してたんだろうな、大声に反応したんだよ」


あぁ、だから自分は猪に追いつかれなかったのか。

猪の足は結構速い、社会人の走る速さなんてたかが知れている、そうならなかったことを理解した。


「まぁオラもお陰で猪を仕留められたし、よかったよかった」


そう笑いながら両足を塗り終えた。


「そういえば何で裸足なんだ、服もきてねぇで素っ裸だし?」


コダの服装は布のような生地でできた腰巻に、足には草鞋を履いている格好だった。

文明は結構古い世界なのかもしれない。

ここで異世界人の情報を出すのはまずいかな、服とか靴を見られるのは警戒されるかも・・・。


「暑くて水浴びをしようとしたときに猪に襲われて、その時に衣服も全部沢に落としてしまったんだ・・・」


真実と嘘を混ぜて話した。

まぁ衣服や靴は後で回収できるだろう、とりあえずここをしのがなければ・・・。


「そっか、ついてなかったな」


コダはその話を聞いて少し心配した声で反応してくれる。

・・・命の恩人に嘘をついた罪悪感がちょっと来た。


「じゃあ着るものも履くものもないんだな、これ使っていいぞ」


コダは体に巻いた縄につけていた草鞋を取り出した。


「オラの予備だ、履くといい」


渡された草鞋を履いたが、足首周りにひも状の縄がついている。

これの意味が分からずもたついていたら、コダがひもを足回りに巻いて結んでくれた。


「こうすっと、草鞋が山ン中でも脱げねぇんだ、ほれしっかり巻いたぞ」


・・・きつめに巻かれたひもが、ちょっとだけ痛かった。


「さすがに草鞋以外の予備はないしなぁ、ちょっと待ってな」


コダはそう言って、また置いていた草の中から大き目の葉っぱを何枚か取り出し、何枚も位置をずらしながら重ねていく。

重ねた葉っぱの上部に蔓を通して、即席の腰巻が完成した。


「ほれ、これ腰に巻いとけ」


即席の腰巻を手渡され、蔓を腰に巻き腰の横で結んだ。


立ち上がって草鞋と腰巻をつけた自分をコダはまじまじと見ている。


「ハルは随分と身長がでかいんだな、うちのかーちゃんよりでかいぞ!」

「それに体も細ぇし、肌も随分となまっちろいな!」


コダは随分と身長が小さい、145cmから150cmくらいだろうか。

それに体は日焼けしていて黒く、とても筋肉質で、自分とは比べ物にならないほど逞しかった。

あと年齢は20代前半といったところか。

自分の身長は172cm、その身長に驚いているということは、

この世界の男性は平均身長が小さいく、女性の方が大きいのかもしれない。


「そうなんです、こんな体だから村でいじめられて逃げ出したんです・・・・」


とっさに話を合わせようと嘘をついた。


「そっかぁ・・・ハルも大変だったんだな」


悲しそうなコダを見てまた罪悪感が募る・・・。


「じゃあ帰るところ無さそうだし、うちに来るか?」

「今日猪狩れたし、ごちそうしてやるよ!」


そういってコダは、仕留めた40kgほどありそうな猪を持ち上げ、肩に担いだ。


今は少しでもこの世界の情報が欲しい。

村があるなら人もいるし、何かつかめるかもしれない。

それにもらった芋だけじゃお腹は満たされていないし、ついていった方がよさそうだ。


「あぁ、じゃあよろしく頼むよコダ」


「おう、じゃあ行こうぜハル、ついてきな!」


そう言って二人で山を降り始めた。

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