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人間園  作者: 博家 賭生
2/6

非人道的な扱い

よ!

アキラは頭部への拳の一撃によって意識を失った後、十五分ほど経ってようやく意識を取り戻した。目を開けると、そこにはこのような光景が広がっていた。彼は他の男たちと縄で結ばれてその男たちは彼と同年代かそれより若い者たちだった。全ての二十九人の少年や青年たちが、小さな輪になって蛇のように座らされ、手足を縛られていた。彼らの輪から数メートル離れたところには、同じように手足を縛られた少女や女性たちが、まったく同じ輪になって座っていた。アキラたちの周りには六人の男が立っていた。アキラを含めて、そこに座っていた全員がその男たちの顔を初めて見た。


アキラは意識を戻し、周囲で何が起きているかを目にすることができたが、まだ頭がくらくらしていたため、自分が気を失っている間に何が起きたのかを完全に把握するには、もうしばらく時間が必要だった。


アキラが今この瞬間に知りたかったのはただ一つにことだった。彼の恋人の安否のこと。幸い、彼女は他の縛られた少女たちと一緒に輪の中に座っていた。エルザが無事で、そして何よりアキラと近くにいることを確認すると、彼は何か手がかりをつかんで少しでも状況を理解しようと、あちこちを見回し始めた。


最初にアキラの目に飛び込んできたのは、周りの少年たちの、陰気で悲しげで、完全に虚ろで魂の抜けた、涙に濡れた顔だった。アキラが彼らに何が起きているのか尋ね始めると、隣に座っていた少年が、「もし命が惜しければ黙れ」と命じた。アキラはその少年の言うことを聞いて、その声の調子には、彼が冗談を言っているのではないと悟らせるものがあった。それでもアキラは、なぜ全員が縛られ、なぜ黙っていなければならないのか、その理由がまだ理解できなかった。


次にアキラが奇妙に思ったのは、大人が一人も見当たらないことだった。少年たちの中にも、少女たちの中にも、最年長者はナルシャという二十四歳の女性だった。他の者はみな、彼女より何歳か若かった。アキラが大人たちはどこへ消えたのかと考え始めた。アキラは顔を上げて、どうやら自分たちを捕まえて縛ったらしい連中を観察した。彼がどんなに記憶をたどっても、これらの男たちの顔に関する記憶は一つも見つからなかった。ただ一人だけ、覚えている顔があった。それは、数分前に彼の目の前でコメディアンを殺し、その後アキラを気絶させた、あのひげの中年の男だった。


その顔を再び見た瞬間、アキラは正気を失い、一瞬で心を満たし頭に上り詰めた怒りと憤りのすべての奔流を抑えきれなくなった。もはやアキラの頭でも心でも、制御できるものじゃなかった。それで、全部がアキラの口から大きく鋭い叫びとなってほとばしった。


「なぜあの爺さんを殺したんだ、クズが!ニルスはなにか悪いことしたの?貴様は人間じゃないのかよ! よくもそんなことができたな!」


すると、彼の隣に座っていた少年たち全員が、そして数メートル先の少女たちまでもが、アキラの方に視線を向けた。しかしアキラ自身はそれに気づかなかった。アキラの視界に入っているのはただ一つ、あのニルスの遺体を素手で真っ二つに引き裂いた男の顔だけだった。アキラは立ち上がってその殺人者に殴りかかろうとしたが、ほかの二十七人と縛られていたため、地面からわずかに体を浮かせただけで倒れ込んでしまった。


部族の住人全員が、エルザも含めて、まるで今生の別れでも見るかのようにアキラを見つめていた。特に恋人の眼差しにはそれが如実に表れており、彼女は首を左右に振りながら、やめるように合図を送っていた。しかしアキラは彼女の方を見ていなかった。今や世界全体が消え去り、アキラは、ニルスの殺人者としか存在しないは白い部屋に閉じ込められた。


ひげの男はすぐに青年の方に目を向け、にやりと笑うと、ゆっくりとした足取りで彼に近づき、同時に自分に向けられた怒りの表情を眺めていた。男が少年たちの輪に近づくとき、そのうちの一人、すなわちアキラの弟であるツバサがこらえきれずに叫んだ:


「あいつに手を出すな! 俺の兄貴だ! どうか殺さないでくれ!」


弟の声がアキラを白い部屋から引き戻した。弟は見知らぬ男に必死にアキラを殺さないでと懇願していた。その後、アキラの妹であるリナも助けを求める叫びに加わった。しかし彼女が言い終わらないうちに、エルザがその口を手で覆い、耳元で静かにするようにささやいた。


アキラは、今まさに自分の目の前に、他人の命を奪う勇気と決意と図々しさを持った男が立っていることを理解していたが、アキラの頭はあまりの怒りに満ちていて、その怒りだけで自己保存や生存本能をすべて押しのけるには十分だった。


見知らぬ男がアキラに近づくと、アキラの首を掴んで右手で空中に持ち上げた。しかし、持ち上がったのはアキラだけではなかった。彼の左右に縛られていた二人の少年も一緒に宙に少し浮いた。普通の人間なら、この状態で数秒も経たずに窒息して死ぬだろう。しかし幸運なことに、ひげの男は三瞬ほどで彼を地面に投げ捨て、こう言った。


「あのな、お前は殺さないことにした。」


それを聞いて、少年たちも少女たちも、エルザもツバサもリナも、ほっと一息つき、今日はこれ以上の死を見ずに済むと安堵した。だがそれはぬか喜びだった。


「俺が殺すのは――」ひげの男は視線をツバサに向けて言った、「あの小僧だ。」


「あいつに手を出すな、クソ野郎! 誰かを殺したいなら、俺をやれ!」とアキラは弟を救おうと叫んだ。


しかし、狂っていた男にとっては青年の死よりも少年の死の方が面白かったらしい。彼はツバサのところに歩いていき、しゃがみ込んで、ツバサの目をまっすぐに見つめ、まったく平静な声で、何ごともなかったかのように言った。


「お前は今から死ぬよ。バイバイ。」


アキラはその間ずっと叫び続け、妨害しようとしたが、隣の少年たちがそれを阻んだ。彼らはアキラの行動が自分たちの命にも関わることを理解していたので、必死に彼にしがみつき、アキラがツバサを救うことを許さなかった。


「え? どうして? なぜ? 俺が何をしたって言うんだ?」弟は完全な困惑と理解不能のうちに言った。その直後、ひげの男は右手でツバサの首をへし折った。


アキラは、すでにあらゆる怒りと激怒の色合いで満ち溢れていたが、弟を失ったことで、まるで火薬庫に火がついたように爆発し、近隣の鳥たちをすべて追い散らした:


「あああああああああああああああああああああああああああああ!」


もしあのひげの男がリナを掴み、この言葉を発しなければ、アキラがどれだけ叫び続けられたかはわからない。


「今すぐ黙るか、それともあのクソガキと同じ目に遭わせるか、どっちにする?」その口調からは、このひげの男が長く叫び声を聞くつもりはないことがはっきりとわかった。


数秒後、アキラは何とか自分の口を制御し、沈黙になった。叫んでもツバサは戻らないし、妹を救うチャンスはまだあると理解していたからだ。だから決断に時間はかからなかった。ようやく静かになると、見知らぬ男はリナを放してアキラに近づきながら話し始めた。


「お前はなかなか面白いヤツだね。話してみたくなった。まず、お前は今、自分と皆に何が起きたのかよくわかっていないようだから、説明してあげようかな、坊や。第一に、俺がお前を殺さなかったのは、俺がルールを説明しているときにお前は気絶していて、ルールを知らなかったからだ。でもあのクソガキは違うね。聞こえていたのに喋るなと言われておきながら、声を出した。自業自得だろう。俺優しいじゃないの?」


今にしてアキラは、なぜ隣の少年が黙れと言ったのか、なぜこの間ずっと、風の音や、落ち葉やかろうじて枝にしがみついている葉のざわめきまでもが聞こえるほど静かだったのかをようやく理解できた。アキラの心は今まさに外に飛び出して、この神聖の静寂を破ろうとしていたが、その衝動が頭に上ると、すぐに冷まされた。


「そうだな、俺一人でしゃべってたらつまらんだろうな? そう思わないか、坊や? だから特別に、お前は話してもいいぜ。ただし、叫んだり怒鳴ったりするなよ。次に死体になるのは誰か、わかってるよね?」ひげの男はアキラに近づき、首をかしげて、まるでうつむいた青年の顔を覗き込むように、赤色に染まった唇から笑みを浮かべて言った。


その後、誰も邪魔して会話に割り込めないように、ひげの男はアキラを仲間と縛っていた縄を解いた。それは物理的な力の差を思い知らせるかのようであり、アキラが何をしようと無駄だという暗黙のメッセージだった。


ようやく体の自由を取り戻し、目の前に弟の殺人者がいるという状況で、溜め込んだ怒りを抑えられる者はそう多くない。アキラはもちろんそのような者の一人ではなかった。だからアキラは自分の右手は、まるで本能のままに後ろに振りかぶり、ひげの男の顔面に一撃を加えた。しかしそれは目標に届かなかった。見知らぬ男は一瞬のうちに横に跳びのいた。その動きはあまりに速くだった。アキラも周囲の住人たちも、彼がどこへ消えたのかさえ理解できなかった。


アキラの頭は混乱してた。人間があのような速さで動き、あのような強さを持つとはふにおちなかった。この男とアキラ自身の決定的な違いは何なのか? そして、アキラはますます、あの柵の向こう側にある未知で謎に満ちた世界に興味を抱き始めた。アキラはそこから脱出できれば、どれほど強くなれるだろうかと考え始めた。そして新たな力を得れば、簡単にこの男にツバサとニルスの復讐を果たせるだろう。だから今のアキラの主な目標は、エルザとリナと共に生き延びることだった。


「はは。やっぱり俺の直感は間違ってなかったな。お前は面白いヤツだ。」ひげの男は傲慢な口調と、長い間顔から消えることのない高慢な笑みを浮かべて言った。「俺の名はエンドログリフィトだ。お前は?」


この状況で平静を保つのは至難の業だった。そして、短気で爆発的な性格のアキラは、もちろんそれには成功しなかった。しかし、アキラは必死に自分を落ち着けようと努力したので、その努力は無駄ではなかった。荒れ狂っていた感情を完全に鎮めることはまだできなかったが、少なくとも一部は制御できるようになり、会話を続けることができた。


「俺はアキラだ。貴様の目的は何だ?」


「アキラ? ふむ…日本の名前みたいだな。お前の両親は日本人か?」


「ああ。母は日本人で、父はロシア人だ。」


「お! そういうことか。面白い組み合わせじゃないか。」とエンドログリフィトは、まるで指揮者のように全身で様々な身振りを交え、奇妙な手話でも話しているかのように、会話を続けた。「どうやらようやく落ち着いたようだな。落ち着いて話せるか?」ひげの男はすでに広い赤色の笑みをさらに広げ、口の端を目の高さまで引き上げた。


その時になって初めて、アキラは三つ目の異変に気づいた。これまではアキラの脳がわざと目をそらし、情報を小出しにすることでショックで爆発しないようにしていた。だからその異変に気づかせたのは、まさにエンドログリフィトのあの異常なほど広い笑顔だった。それは鮮やかな赤色だったが、それは唇自体の色ではなかった。それは何か粘稠な液体が彼の唇に付着したものだ。


そしてその瞬間、アキラは数分前に自分がうつむいた時にすでに似たようなものを見たことを思い出した。脳が回復し、新たな情報を受け入れる準備が整った今、アキラは地面に目を落とした。彼の足元にもまったく同じ液体があった。しかし、それはアキラの足元だけではなかった。至る所にあった。秋の地面は、本来は黄・赤・橙に彩られているはずだが、今は単調な赤い絵の具で塗りつぶされていた。まるで画家が缶を床にひっくり返したかのように。


しかし、それが何であり、どこから来たのかは、アキラにとって依然として謎だった。その答えを求めて、アキラは注意深く周囲を見回し、ついに見覚えのあるものを見つけた。この広大な赤い水たまりより小さな貯水池のように見えてた床には、無数の服の切れ端が浮かんでいた。やがてアキラは、今日両親が着ていた服の破片を認め、すぐに、父親がプロポーズの際に妻に贈った木製の結婚指輪も見つけた。


アキラは呆然とし、目の前に広がる光景が何を意味するのか全く理解できなかった。振り返って少年たちの輪を見ると、全員が例外なく涙を流し、死んだのような表情で座っていた。アキラは過去に戻り、父親が人体の仕組みについて語っていた場面を思い出した。


「覚えておけ、アキラ。人間の体には血液という液体がある。大人の体には約五リットルある。それは栄養分や空気を体中に運ぶためのものだ。心臓から送り出されて戻ってくる。今日お前が転んで膝をすりむいたとき、あの赤い液体が見えただろう。あれが血だ。」


「もしその五リットル全部が傷口から流れ出たら、僕は死ぬのか?」


「はは。心配するな。お前のような小さな傷からは何も流れ出ない。大丈夫だよ。」


記憶から現実に戻ると、アキラの口から出たのはただ一言。


「そんな…ばかな…ありえない…」


悲しみのモードから、自己防衛のためのヒステリックな笑いへと切り替えたアキラは続けた。


「だってそんなのありえないだろ! ははは! こんなことあるわけない! これは夢だよな?! ははは! それとも冗談だろ、そうだろ?! なあ、誰か何か言ってくれよ!」アキラは後ろに座っている少年たちに振り返ったが、何の反応も得られなかった。彼らの顔は相変わらず悲しみと涙で満たされていた。


「何がありえないって言うんだ?」エンドログリフィトが聞いた。


「あんたらが大人を全員殺せるわけないだろ? そんなの無理だし、それに死体はどこへやったんだ? なあ? ほら、そんなことありえない。ははは。これはただの悪い夢だ。それだけだ。目が覚めればまた家に戻るんだ!」


「死体がどこへ行ったか知りたいか? 簡単なことだ。ここにある。」ひげの男は右手の人差し指で自分の腹を指した。「それにそこ、そこ、あそこ、あそこ、そしてあそこにもあるよ。」今度はエンドログリフィトは、アキラが今日初めて見た他の男たちに指を向けた。


「な…何て意味だ?」完全な困惑と、自分の頭の中で想像した答えとは別の何かを聞きたいという希望を込めて、アキラは震える声で尋ねた。


「お前はそこまで馬鹿なのか? お前と話してボスが来るまでの時間をつぶせると思ったが、どうやらお前も他の連中と変わらないつまんない人間だったようだ。食ったんだよ。食・っ・た・ん・だ!パクッっとね。」


アキラが「カニバリズム」という言葉を知っていれば、この状況で確かに使っただろう。しかし、その必要性がなかったために両親から教わらず、知らなかったため、アキラの頭に浮かんだ唯一の言葉だった。


「化け物め! あんたたちは化け物だ! どうして自分と同じ人間を殺して食うことができるんだ? そんなに誰かを殺したいなら、この星に溢れている宇宙人を捕まえて食えばいいじゃないか!」


「ははははははははははははは!」エンドログリフィトは、人生でかつてないほど大笑いした。アキラの言葉は男をあまりにも笑わせたので、エンドログリフィトは笑いを抑えきれず、今にも数分前に食べた人々をすべて吐き出しそうだった。


アキラはその笑い声を聞いて、自分の「檻」の外の世界に関する理論が正しかったことを確信した。もしこの人が宇宙人の話でこれほど笑ったなら、両親の話はすべて完全な嘘であり、その背後に隠された真実こそがアキラの真の目的だったのだ。


アキラは両親の死にまだ痛みと悲しみを感じていたが、両親が、特に宇宙人が侵略したとされる時代に生きていた祖母が、ずっと嘘をついていたことを悟った。たとえ両親は自身が真実を知らなかったとしても、アキラは両親を許すことできなかった。だからアキラは、過剰な悲しみに溺れることなく家族の死を受け入れることができた。


「ま、お前はやっぱり面白いヤツだね。まさかここまで笑わせてくれるとは思わなかった。ははは!」エンドログリフィトは一瞬笑いをこらえたが、完全に制御できずに言った。ひげの男と一緒に、他の五人の人たちも声を上げて笑い続け、アキラの前に立つ人と同じく笑いを抑えられなかった。


これらの見知らぬ者たちについての新たな答えを求めて、アキラはもう一度周囲を見回し、彼らの集落に侵入してきた客人たちについての手がかりを見つけようとした。その過程で、アキラは意味不明の太い白い棒の山を見つけた。それが何か説明を求めてエンドログリフィトに尋ねた。


「あの白い棒は何だ?」


「どこだ? ああ! あれか? あれは人間の骨だ。消化が悪いから、俺たちは食わないんだ。」エンドログリフィトはまだ笑いながら言った。


それを聞いてアキラは再び、子供の頃に父親が人体について話してくれたことを思い出した。彼が畑でつまずいて足を骨折した時のことだ。


「アキラ、もっと注意しなきゃ。折れた骨はそう簡単には治らないんだ。一ヶ月はベッドに横たわって、骨がくっつくまで動いちゃいけない。」


「骨って何なの、父さん?」


「骨っていうのは、木の枝のような大きな硬い棒で、お前の体全体を支えているんだ。腕にも足にも、体にも頭にもあるんだよ。」


この間ずっと、アキラは他の生存者たちとは違って、一滴の涙も流さずに立っていた。彼は怒りと憤りで満ちていて、それを必死に抑えようとしていた。アキラに哀しみや憂鬱、悲嘆といった感情がなかったわけではない。ただ、今まではそれらを怒りが上回っていたのだ。そして今、その怒りをせき止めていたダムにひびが入り、亡くなった親族だけでなく、すべての大人や年長者への悲しみが、初めて憎しみを上回り、アキラから大声の泣き声と叫び声となって溢れ出した。


それはもちろんエンドログリフィトとその仲間たちの気に入らず、ひげの男は地面に崩れ落ちたアキラに歩み寄り、すでにおなじみの方法で片手で首を掴んで持ち上げ、言った。


「お前は俺を楽しませたが、何でも好き勝手にしていいと思うなよ。わかったか? さて、俺が何て言ったか覚えてるか? 大人の言うことを聞かないなら、お前のような言うことを聞かない子供には罰を与えねばならないな。そうしなければ、お前のようなクズに教訓にならんからな。」そう言ってエンドログリフィトはアキラの首を絞め、ゆっくりと絞め殺そうとしているかのようだった。


アキラが死の一歩手前まで追い込まれた時、彼の耳に見知らぬ声が届いた。


「何をしているんだ、エンドログリフィト? 俺の商品を傷つけるな! もし死んだら、お前には罰金だ。」アキラの救い主が言った。それは、赤いジャケットにダイヤモンドの付いた金の時計を身につけた、高級そうなスーツの男だった。


もちろん、これらの品々の価値は、アキラも、部族の生き残った六十四人のも知らず、わかることをできなかった。アキラたちにとっては、彼の服はただ奇妙で、見たことのないものに過ぎなかった。しかし、その服装の違いや、全体的な外見や話し方の違いから、全員はこの男が他の者たちが従う立場にあることが即座にわかった。彼はさらに四人の、赤色の唇をした男たちを伴って現れた。


その命令により、エンドログリフィトはアキラを地面に解放し、アキラは首に手をやり、もはや命の危険はなくなったにもかかわらず、できるだけ多くの空気を吸い込もうとしていた。


その後、この男は集落に侵入した十人の男たちをすべて自分のそばに集め、数言葉を交わした。その間、少年少女たちは赤く濡れた地面に座り続け、自分たちがこれからどうなるのか全くわからないまま、ただ次の指示を待っていた。


そしてその指示は長くは待たされなかった。ジャケットの男は二つの人の輪の間に立ち、大声で言った。


「俺の名はマティクロズシュだ。これからお前らにやるべきことを言う。お前たちは俺の命令に絶対服従しろ。言うことを聞かない者は罰せられる。わかったか?」


しかしマティクロズシュは自分の質問に答えを得られなかった。そこで彼はその同じ質問をもっと大きな声で叫んだ。アキラには鼓膜こまくが今にも破れそうに思えた。その時になって初めてマティクロズシュは返事を得た。すべての準備が整うと、彼は続けて言った。


「今から俺の部下たちがお前たちの縄を解く。だが逃げようなんて思うな。逃げたらどうなるか、お前たちはよ~~~く覚えているはずだ。その後、お前たちは全裸になり、二列になって向かい合い、年齢順に並べ。最年少が先頭、最年長が最後尾だ。俺がお前たちのところに来たら、年齢を言え。それから行き先を言う。実行しろ!」


その言葉の後、マティクロズシュの部下たちは五人のグループに分かれ、一方は少年たちのところへ、もう一方は少女たちのところへ向かった。全員の縄が解かれ、立ち上がるように命じられた。しかし、誰も最初に服を脱ぐ勇気はなかった。一分、二分、三分と経過した。しかし、部族の住人たちは皆、もはや縄ではなく恐怖で縛られ、何をすべきかわからずに立ったまま、互いに顔を見合わせ、誰かが何かを始めるのを待っていた。


そこで、これ以上時間を無駄にしたくなかったジャケットの男が指を鳴らすと、即座に少女たちに最も近い位置に立っていた男の一人が、そのうちの一人に近づき、一瞬で彼女の首をもぎ取った。


もちろん、その光景を見て、残りの六十四人の部族民は再び自分たちの命が安全とは程遠い状態にあることを思い出し、すぐにパニックに陥り、大声で叫び始めた。しかし、マティクロズシュの低く響く声が、まるで拡声器を通したかのように、すぐに彼らを静めた。


「一分以内に服を脱いで整列していない者は、あの醜い女と同じ目に遭うぞ!」


一分後、二十九人の少年や青年たちが、一枚の布も身に着けずに整列し、その向かいには三十五人の少女や女性たちが同じ状態で立っていた。マティクロズシュはまず女のこの列から始め、手で体を隠さないように命じた。恐怖のあまり年齢を言えない少女たちは、年上の女性たちが代わりに答えるのを手伝った。そして、各人の外見を検査した後、金時計の男はただ一言だけを言い、その言葉に従って部下たちはその人を、その間に到着していた三台のトラックのうちの一つへと連れて行った。


アキラは祖母から車の話を聞いたことはあったが、自分の目で見たことはなかった。それに、それらは乗用車ではなく、何倍も大きいトラックだった。だから彼は、それが自分たちの目の前にあるものだとはすぐには気づかなかった。


人が年齢を言うと、マティクロズシュは「飼育室」「動物園」「闘技場」の三つの言葉のうちの一つを発した。これらの言葉はすべて、アキラもエルザもナナミから聞いたことがあったが、それにもかかわらず、それらが持つ意味は依然として謎に包まれていた。アキラの妹リナの番になると、彼女は飼育室に送られた。今のところ、十四人の少女全員がそこに振り分けられた。年齢が十六歳に達すると、二十七人の中で初めて動物園に送られる女が現れた。


すぐにエルザの番が来た。そして彼女は、マティクロズシュが二言以上を費やした唯一の人だった。


「おお! 今日はすごい収穫だな! 見ろよ、この美しさ! 動物園行きだ! こんな価値ある標本は久しぶりだ。でもすぐに連れて行くな、ここに置いて目を楽しませておけ!」


その言葉を聞いて、アキラの心は真っ二つに割れた。彼は自分もリナもエルザも同じ場所に振り分けてほしかった。これ以上、大切な人たちと離れたくなかったからだ。しかし今、アキラは少なくともそのうちの一人を失う危険を冒した。それとも、もし自分が闘技場に送られたら最悪の場合は両方を失うかもしれない。さらに彼を苛立たせたのは、見知らぬ男たちが彼の最愛の彼女の裸体をじろじろ見ているという事実だ。その結果、アキラはこの状況で何もできない自分をますます憎んだ。もしアキラがこの親分の気に障るようなことをすれば、即座に首が飛ぶだろう。それをよく理解していたアキラは、エルザを永遠に一人にしないために、余計な行動は控えることにした。


やがて女の子の列は終わりに達し、最終的な振り分けはこの通りだった:飼育室――三十一人、動物園――五人、闘技場――ゼロ。そして少年たちの番が来た。十六歳未満の少年たちは、少女たちとまったく同様に、全員が飼育室に送られた。ついにアキラの番が来て、マティクロズシュは判決を下した:


「こいつは飼育室だ。次。」


アキラの頭の中では、最初はその情報を受け入れていた。アキラは妹を一人で未知の方向へ送りたくなかったからだ。両親はアキラに、唯一の肉親であるリナを守ってほしいと願っていただろう。それで、アキラはそれをよくわかっていた。だって、そうすべきだ。真の兄であり、家族の守護者としてそうすべきだ。しかし、アキラには一つの「しかし」があった。そしてその「しかし」とは、アキラの心だった。彼はまだこの自分の体の部分の制御を学んでいなかった。だから、アキラは一秒にも満たないうちにエルザの目を見つめ、こう言った。


「俺を動物園に行かせてくれ! そこに彼女がいるんだ!」アキラは、迷いの欠片もなく、大声ではっきりと言った。


この一秒で下された決断は、アキラ、エルザ、リナだけでなく、地球に住むやまだ生まれなければならない生き物の何億の他の人間や宇宙人の人生と運命を永遠に変えることになった。


「鏡で自分の顔を見たことがあるのか? お前が動物園だって? そんなの無理だ。さっさと片付けろ! もし俺に指図するなら、今すぐ闘技場に回すぞ!」マティクロズシュは苛立ちと不満を込めて言った。


もしエルザが数分前にトラックに連れて行かれていたなら、それで終わっていただろう。しかし彼女はジャケットの男のそばに残されていたため、恋人を助けることができた。


「彼を私の動物園に行かせてください。さもなければ、私は自殺します! あなたは私がここで一番価値があると言いましたよね? こんなチャンスを逃したら、惜しいでしょうね!」エルザは、自分の声は聞こえないのではないかと怖がるのように、非常に大きな声で叫んだ。


マティクロズシュの表情からは、無防備で全裸な、自分より三倍は若い少女からのこんな生意気な厚かましさを全く予想していなかったことがあまりにもわかりやすい。しかしマティクロズシュはまったく怒らず、むしろ逆に、アキラがエンドログリフィトを笑わせた時と同じように、むしろ楽しそうだった。


「ははは! 何年生きてきても、お前ら人間はいつも驚かせてくれるな! ははは。」マティクロズシュは息を切らし、自分の笑い声で窒息しそうになりながら言った。


しかし、この反応が理解できたのは、今日村に侵入してきた男たちだけであった。アキラもエルザも、列に残された青年たちも、この男たちが見出した冗談を評価することはできなかった。


「わかった。今日は特別だ、お嬢ちゃん。君が幸せならそれでいい! この若者を動物園に行かせろ!」マティクロズシュはまだ少し笑いながら言った。「それならもうこの二人ともをここから連れて行け。目障りだ。」


その後、アキラとエルザはトラックに連れて行かれ、そこには既に五人の女の子と一人の男の子が、灰色の線が入った奇妙なオレンジ色のつなぎを着て待っていた。アキラやエルザにもまったく同じ服が着せられ、ボスが振り分けを終えるまで待たされた。


「本当に私について来てよかったの? リナのそばに残るべきじゃなかった?」エルザは、自分たちの行動に完全な確信を持てずに尋ねた。


「ああ。頭ではリナのそばに行くべきだと分かっていたけど、でもその後、エルザを未知の方向へ送り出し、再会の保証もなく人生から手放すマネしたら、もう生きていけないと気づいたんだ。今朝、俺が言ったこと、覚えてる?」


「今朝? たくさん言ってたけど…」エルザは戸惑いながら答えた。


「エルザのことを愛してるよ。そしてずっと一緒にいたい。」


その後、この大きなトラックの中で、他の全員が見ている前で、まだ親族を失った悲しみの中にありながらも、二人の恋人はキスをし、抱き合い、手を取り合って、互いの傷を癒そうとしながら、車が動き出すのを待った。


男子の振り分け結果:飼育室――十五人、動物園――四人、闘技場――九人。


アキラの集落への襲撃の総括:死者――二百五十人強、飼育室送り――四十六人、動物園送り――九人、闘技場送り――九人;最年少生存者――三歳、最年長生存者――二十四歳。

最期まで読んでくれてありがとう。

次の話は明日…かも。

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