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闇堕ち令嬢シンシア ~死に戻り少女は死なないことにした  作者: 九條葉月


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手合わせ

 


「まったくもー」


 ブラッディベアから逃げ惑うロイ君たち。これは勝つどころか戦うこともできなさそうね。腕試し以前の問題か……。


「――魔力変換(クレアツィオ)


 私がスキルを発動すると、ブラッディベアは大きな音を立てながらその場に倒れたのだった。


「す、すご……」


「ブラッディベアが……ランクAの魔物を瞬殺……」


「おぉ、神よ……」


 なんだか三人からドン引きされているような? 気のせい?


「鈍感というか鈍いというか愚鈍というか……」


 そろそろ泣くわよリリー?





「ごほん。さすがに駆け出し冒険者にブラッディベア相手はキツかったみたいね」


 咳払いをしてからまとめに入る私だった。


「……はい、そうですね」


「……私たちは普通の人間なので」


「……ご理解いただけたようで何より」


 なにか言いたいことをグッと飲み込んだかのような三人だった。勇者とそのパーティーメンバーは普通じゃないのでは? セイラちゃんなんて神託を受けられるのだし。


 と、そんなツッコミはできない雰囲気。このままでは三人からの評価が急落するような気がする。何とかしなきゃいけないような気がする。気のせいじゃない気がする。しかし何をしようかしら? やはりおねーさんキャラとしては頼りになるところを見せないと……。


「……じゃあ、手合わせしてみる?」


 そう提案してみる私だった。

 冒険者の先輩が後輩を指導する。勇者の少年(少女)を教え導くお姉さん冒険者。いいんじゃない? おねーさん力が急上昇間違い無しね。


「え? でも……」


 遠慮した様子のロイ君たちだった。まぁ私ってAランク冒険者だし、聖女だものね。そんな私から教えを受けることを遠慮しちゃうのはよく分かるわ。


「いえブラッディベアを瞬殺する人間との手合わせとか自殺行為でしかないですし。どうにかして逃げようとしているだけでは?」


 リリーからのツッコミは都合良く聞こえなかったことにして。私は軽く肩を回してから剣を抜いたのだった。


「じゃあ、三人とも。呼吸が落ち着いたらかかってきなさい。三人一緒でいいわよ?」


 私がそう提案すると、


「「「……分かりました」」」


 まるでこれから戦場に向かうかのような深刻な顔で頷き合う三人だった。大げさねぇ。


「――行きます!」


 わざわざ宣言してから真っ直ぐ突っ込んでくるロイ君。剣士(前衛)としては中々のスピードだけど、分かり易すぎるわよね。


「――焔よ、燃えよ(エンナ)


 シーナちゃんが初級炎系攻撃魔法でロイ君を支援する。まるで威力がない攻撃だけど、生き物にとって炎は恐怖の対象。敵の気を引くなら悪くない手よね。


 ま、私には効果がないけどね。


 魔力変換(クレアツィオ)を使うと、こちらに向かってきていた炎が霧散した。


「なにそれぇ!?」


 ちょっと涙目になるシーナちゃんだった。


「驚くことでもないでしょう! ――身体強化(ミュスクル)!」


 シーナちゃんを激励したセイラちゃんが身体強化魔法を発動する。ただし、自分にではなくロイ君に対して。


 強化魔法を他人に掛ける。言葉にすれば簡単だけど中々できないことだ。しかもセイラちゃんは聖職者。本来ならパーティーの回復役なのに強化魔法を扱えるとは……。


 なるほど、回復役が強化魔法を使えるなら、魔法使いは攻撃魔法に専念できると。そうなると回復役の魔力残量に不安が残るけど、ケガをする危険性より『勇者』による早急な敵の排除を狙っているという感じか。


 ま、私には効果がないけどね。


「遅い」


 ロイ君が振り下ろしてきた大剣を『ガシッ』と掴み、そのまま『ぺいっ』とロイ君を投げ飛ばす私だった。


「ひぎゃああぁああ!?」


 ロイ君の悲鳴を背中に受けながら突進し、後衛であるシーナちゃんとセイラちゃんを制圧。……ふっ、勝利とはいつも虚しいわね……。


「いや大剣を素手で掴むって何ですか? 人一人片手で投げ飛ばすって何ですか? 身体強化(ミュスクル)も使っていないのに……」


 リリーにドン引きされてしまった。日中普通に歩ける吸血鬼にドン引きされたくないやい。











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