手合わせ
そんな装備で大丈夫か?
うん、無理無理。
というわけで本日の魔の森探検は中断。装備を調えまた後日ということになった。
「すみません……せっかくシアさんにもご足労いただいたのに……」
しゅーんとするロイ君だった。可愛い。じゃなくて。ここまで落ち込んでいるとこのまま変えるのも申し訳なくなるというか。
「……そうね。魔の森には入れないけど、ロイ君たちの腕前を確かめるのもいいかもね」
というわけで私一人で魔の森に入り、探知魔法を使って手近な魔物ところへ。
魔物を目視したところでスキル『威圧』を発動。これは一定以上のレベル差がある相手をしばらくの間行動不能にするというスキルだ。
このスキルで魔物を動かせなくしてから森の外で待つロイ君たちの元へ持って行き、威圧解除。ロイ君たちと戦わせるという流れだ。
『ぴぎゃー!?』
手近にいたウサギそっくりの魔物は――私の威圧を受け、倒れた。あら? 死んでるわねこれ? なんで? 偶然心筋梗塞でもしちゃったかしら?
「シア様は魔王になりましたから。威圧の効果も上昇しているのでは?」
当然のように付いてきていたリリーがそんなツッコミを。え? 魔王になると威圧の威力(?)が上がるの? 初耳なんだけど?
まぁでもリリーは魔族だからこういうスキルにも詳しそうよね。とりあえずはそういうことだと納得しておくとして。死んでしまったから腕試しには使えないわね。
毛皮や魔石は売れるので死体は空間収納に突っ込んでおくとして。どこか近くに威圧でも死なない魔物はいないかしら?
探知魔法で確認すると――お、丁度いい感じの魔物がいるわね。死んでおらず、威圧で動けもせず。まずは転移魔法でその魔物のところへ行き、魔物の首根っこを掴み、続いてロイ君たちの元へ転移したのだった。
◇
「……あの、シアさん? その魔物は……?」
転移してきた私とリリー、そして魔物を見てドン引きするロイ君だった。
「あら? 見たことない? ブラッディベアよ?」
見た目としては前世のクマとさほど変わらない。ただ、大きさで言うとシロクマよりさらに一回り大きいけれど。
討伐ランクはAだったかしら? つまりはランクA冒険者かランクB冒険者パーティーを複数準備してやっと討伐できるという強さだ。もちろん、ランクだけで考えれば駆け出し冒険者であるロイ君たちが勝てる相手ではない。
まぁでも、大丈夫じゃないかしら? 私だって今回のやり直しでは駆け出し時点でブラッディベアを倒せたのだし。
「いえ、シア様の場合は知識と経験値が引き継がれていたのでは?」
リリーのツッコミを聞き流しつつ、威圧解除。
ブラッディベアはまずこちらに顔を向けたけど、すぐに視線を逸らしてロイ君たちの方へ向かっていった。
『がぁああぁあああああぁあああっ!』
「ひゃああぁあああああああああ!?」
「きゃぁあああああああぁあああ!?」
「ひぃいいぃいいいいいいいいい!?」
咆吼しながら駆けるブラッディベアと、そんなブラッディベアから泣き叫びながら逃げるロイ君たちだった。勇者パーティーなのに、情けない。
「無茶振りが過ぎます」
やれやれとため息をつくリリーだった。ロイ君たちを助けるつもりはないらしい。




