闇堕ち(甘)
「――はい、不合格。あなたたち一回死にました」
「え、えー……?」
よく意味が分かっていなさそうなロイ君に説明開始だ。
「まず、食料が少なすぎ。一日分しかないじゃない」
「……でも、今日は日帰りの予定ですよね?」
「予定はそうでも、帰れない可能性はあるでしょう? 道に迷ったとか、崖から滑り落ちたとか、魔物との戦闘に夢中になって自分がどこにいるか分からなくなったとか。幻惑を使って道に迷わせる魔物だっているのだし。『もしも』に備えて日帰りでも最低三日分の食料は準備しておきたいところよね」
「な、なるほど……」
ロイ君が素直に頷いて、
「シアさん、食料は森で現地調達するのでは駄目なんですか?」
小さく手を上げて質問してくるシーナちゃんだった。
「シーナちゃんは田舎出身みたいだけど、自分で狩りをした経験は?」
「え? ……ないですね。お肉は猟師のおじさんが分けてくれるくらいで」
「その猟師さんも毎日必ず獲物を仕留められたの?」
「……いえ、成果なしの日も多かったです」
「そう。森に入ったからといって都合良くお肉が手に入るとは限らないの。他にも木の実やキノコには毒があるかもしれないし、川の水は動物の糞で汚染されているかもしれない。穀物が見つかることはまずないわね。森の中は食材の宝庫に見えるかもしれないけれど、実際はそうでもないのよ」
というか、この程度の知識でよく今まで無事だったわね……。『勇者、食あたりで死亡』という展開でもおかしくはなかったのでは?
「あとは予備の武器ね」
少し大振りのナイフを手に取ってみる。……うん、予備らしいテキトーな作りだ。
「駄目でしょうか?」
「ないよりはマシだし、道具としては便利だけど……予備武器としては頼りないわね。空間収納には余裕があるのだから、ちゃんとした殺傷能力がある武器を準備するべきでしょう」
「そ、それは分かりますけど……持ち合わせが……」
初心者冒険者にありがちな言い訳をするロイ君だった。もちろん、私は闇堕ち令嬢なので容赦はしない。
「じゃああなた、大剣が壊れたときナイフ一本でブラッディベアと戦うの?」
「う゛、それはですね……」
さすがの勇者でも無理なのか頬を引きつらせるロイ君だった。
そんな私たちのやり取りを目にして、
「懇切丁寧に教えて……。これのどこが『闇堕ち令嬢』なので?」
ふぃー、っと息を吐くリリーだった。そもそも闇堕ちだの何だのはリリーが勝手に言い出したことじゃない。




