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闇堕ち令嬢シンシア ~死に戻り少女は死なないことにした  作者: 九條葉月


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神託

 


 なんだか『きゃいきゃい』した雰囲気が部屋に充満している。女子というのはどこの世界でも恋バナが好きらしい。私とリリーが対象というのがアレだけど。


「リリーさんとシアさんの出会いってどんな感じだったんです?」


「あれはそう、寒い夜のことでした。銀髪赤目のせいで忌み嫌われていた私は村人たちから迫害され――」


 おっとリリーによる『大純愛物語~出会い編~(命名・リリー)』が始まったわね。これは気恥ずかしいのはもちろんのこと、とにかく長いのだ。


「――はいはい、それはいいから」


 ぱんぱんと手を叩くとリリーがなぜかドヤ顔になった。


「そうですか。やはり私たちの出会いは二人だけの秘密にしたいと」


 はいはい。

 これに付き合い始めると長いので、私は強引に話題を転換したのだった。


「リリーが吸血鬼だと知って警戒していたけど。やっぱり『勇者』にとって魔族は敵なの?」


「え? あ、はい。たぶんそうなのだと思います」


「たぶん?」


「いえ、その……本物の魔族に会ったのはリリーさんが初めてですし。人間と魔族はずっと戦争しているとは聞いていましたけど、僕の村は平和だったもので……」


「実感が湧かないと」


 まぁそんなものよね。家族を殺されたとか故郷を焼かれたとかの実体験がないと。魔王や魔族も『物語』の登場人物でしかない。


 勇者としての力を与えたのは誰か知らないけど、人選を間違ったんじゃない? 今もコロッと騙されてリリーと仲良くお話ししているし。もっとこう「魔族は皆殺しだ!」みたいな人を選ぶべきだと思うけど。


「たしか、神託があったのよね? どんな感じなの?」


「僕にはよく分からなかったんですけど、頭の上に光の球が浮かんでいたみたいで」


「……光の球?」


「はい。周りの人が騒ぐので村の教会に行ったら『神託』に違いないと。そうして何かと騒がしくしているうちに王都からセイラちゃんが派遣されてきて、正式に『勇者』の神託を受けたんです」


「……神託ってそんな感じなの?」


 思わずセイラちゃんに確認してしまう私だった。


「主様が神託を下されたのではないのですか?」


「私じゃないですね」


 なぜか敬語になってしまう私だった。


「……神の中でも部署が別れていると? なるほど。勇者なのですから『武神』や『裁定神』などが担当なのでしょうか……?」


 私が『神』であることは断じて曲げるつもりがなさそうなセイラちゃんだった。もういいや。


 ちなみにこの世界は中世ヨーロッパ風だけど、宗教としては多神教に近いと思う。いや教会には十字架があるのでその辺が雑というかゲームっぽいのだけどね……。


 ゲームの世界だとキリスト教じゃなくても十字架よねぇと考えていると、セイラちゃんが『神託』について語ってくれた。


「神託には複数種類あるのですが、ロイさんの頭上に現れたのも神託であろうということで私が派遣されました」


「神託関連で派遣されるのだからセイラちゃんも凄い聖職者だったのねぇ」


「いえ。私も見習いだったのですが……。それもまた『神託』が降りたそうです」


「勇者を助けて一緒に魔王を討伐しろと?」


「……いいえ。――人類の守護者と共にあれ、と。最初は勇者様のことかと考えていましたが、今は違います。守護者とは主様のことだったのですね?」


 いいえ違います。


 とは、口にしない。もはやいつもの流れである。


 いやしかし、噴飯物である。剣で千人斬りを達成して、魔法で万人を殺戮し。人類の敵として『魔王』に選ばれた私が守護者とか。……いや、守護者なのか。『聖女』の称号をもらったときにそんな感じのことも言われたはず。


 まぁ私の称号については今さらか。ここはもう少し気になっていることを尋ねてみましょうか。


「勇者って魔王がどこにいるとか分かるものなの?」


「えーっと? たぶん分からないと思います」


 それはそうでしょうね。目の前に『魔王』がいるのに平気な顔をしているのだから。


「でも、そうなると神託を下したあとは何の手助けもない感じなの? この広い世界を歩き回って魔王を探せと? それはちょっと仕事が雑じゃない?」


 私は『神の敵』らしいので、神様も平気で批判するのだ。


 目の前で神を批難されたというのにセイラちゃんはなぜか納得顔だ。


「なるほど。だからこそ見かねた主様が勇者様を手助けするためにご降臨されたのですね?」


 なんだかセイラちゃんの勘違いが一層酷くなったような?


「ゆ、勇者と言えば聖剣よね。いつも背中に背負っている大剣が聖剣なの?」


「いえ、あれは村長のお下がりで……。実はまだ聖剣を獲得していないんです。――ごめんなさい」


 いきなり謝られてしまって戸惑う私だ。


「え? いやいや別に聖剣を持っていないからって怒ってないわよ。ちゃんと神託を受けたなら本物の『勇者』なのでしょうし」


「いいえ、違います。――僕は、嘘をついていたんです」


「嘘? 性別以外で?」


「はい。この近くの魔の森でレベリングをするとお話ししたと思いますが……本当は聖剣を獲得するために向かっていたんです。だから、僕は最初から嘘をついていて……」


「あぁ、そういう……。別にいいんじゃない? 出会ったばかりの人に本当のことを教える必要はないもの」


 しかも内容が聖剣獲得。悪い人なら途中までついていって聖剣を強奪しようとするかもしれない。……実際私も、パーティーを組む前ならそうしていたかもしれないもの。


「シアさん……!」


 ちょっと涙目になりながら感激しているロイ君だった。チョロい……。


「しかし、魔の森に聖剣ねぇ?」


 原作ゲームの記憶を辿る私。ゲームだと勇者の初登場時にはもう聖剣を持っていたからね。どこで入手したかは知らないのだ。


 魔の森自体はレベリングスポットとして出てくるけれど、聖剣に関しての話なんてなかったはず。……まぁすでに勇者が聖剣を持っていたあとなのだから当たり前か。


 あとは魔の森の最奥にはダンジョンがあるから、そこに聖剣が安置されているとか?


「じゃあしばらくは聖剣を探す感じなんだ?」


「はい、そうなりますね。……シアさんはどうでしょうか? その、一緒のパーティーだからと言って全部の予定に付き合わせるわけにはいきませんけど……」


 期待を込めた目をこちらに向けるロイ君だった。くっ、可愛いじゃない……。


「ついて行ってもいいけど、私が全部倒しちゃうとレベリングにならないからね。後ろで見学するだけならいいわよ?」


「もちろん大丈夫です! よろしくお願いします!」


 キラッキラ以下略。









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