お説教
「お嬢様。リリーは悲しゅうございます」
正座をさせられ、リリーからお説教を受ける私だった。『シア様』から『お嬢様』に格下げ(?)されているし……。
「よもや、いたいけな少女のズボンを下ろし、無理やりことに及ぼうとするなど……」
「い、いやいや、ズボンを下ろしちゃったのは不可抗力というか、リリーが脳天にいい一撃をくれたからというか……」
「その前に自分から下ろそうとしていたではないですか。積極的に」
「あれは性別を確かめようとしただけで……」
「…………」
「……まことに申し訳ございませんでした」
リリーと、リリーの背中に隠れるロイ君に向けて土下座する私だった。聖女や魔王としての威厳ゼロである。
そんな私を見かねたのかロイ君が仲介に入ってくれた。
「り、リリーさん……嘘をついていた僕が悪いですから。シアさんは疑惑を確かめようとしただけで……ちょっとビックリしましたけど仕方ないと言いますか……」
「そこで甘やかすからダメなのですが」
ふーやれやれとため息をつくリリーだった。まだまだお説教が足りなさそうだけど、被害者が許しているので終わりにしてくれるみたい。
床から立ち上がりつつ、軽く咳払いを。
「ごめんなさいね? 混乱して変なことをしてしまったわ」
「いえ、『勇者』が女だったのだから当然だと思います」
「なぜ男性と偽っていたか聞いてもいい? ……いいえ、正確には、男性だと誤解されるようにしていた」
ロイ君は一度たりとも自分が男性だとは口にしていない。
けれど、『僕』という一人称に、男子のような服装。そしてなにより『勇者』という称号。
みんなみんな、普通に考えれば『男子』と勘違いしてしまう情報だ。
まぁ理由の想像はつくけれど。それでもここは本人から語ってもらった方がいいでしょう。
「……村長から、女であることは隠した方がいいと助言されまして」
「まぁ、それはそうよねぇ」
勇者といえば男性だし。女性というだけで余計に疑われてしまうはずだ。……ロイ君を鑑定した道化は性別も分かっていたはずだけど、空気を読んだのかしらね?
あるいはもう領主様には報告済みで、だからこそ『男女が同じ部屋』でも何も言われなかったのかもしれないわね。
あとは女性三人での旅ともなれば別の意味での危険も伴うしね。それは盗賊退治で嫌というほど理解したはずだ。
「でも『勇者』が嘘をつくわけにはいかないですし。シーナとセイラちゃんと相談した結果、相手に勘違いしてもらおうということになりまして」
ロイ君は中性的な顔つきだし、簡単に騙せたでしょうね。なにせ私もすっかり騙されたのだから。
「私はすぐに女性と分かりましたが」
リリーさんはちょっと空気を読んでください。
あ、そうだ。
「呼び方は『ロイ君』のままでいいの?」
「はい。他の人には引き続き秘密にしたいので」
「分かったわ」
「……あの、嘘をついていたことを怒らないのですか?」
「事情があるのに怒りはしないわよ」
そもそも私だって幾つ嘘を重ねているか分からないのだから。とは、もちろん口にしない。
「シアさん……」
キラッキラした目で見られてしまった。どうやら好感度が上昇したみたい。くっ、女の子だと分かると可愛さが増したような気がするわね!
「女たらし……」
リリー様の容赦ないツッコミだった。




