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闇堕ち令嬢シンシア ~死に戻り少女は死なないことにした  作者: 九條葉月


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38/56

 正体


 いくら闇堕ち(?)したとはいえ、か弱い女性たちであることに変わりはない。

 というわけで、私もこの砦を拠点にするのはどうかしら? 領主様には死者蘇生の報酬としていただくという感じで。表向きはやはり教会か修道院って感じに。


 女性たちの説明と、砦獲得の交渉。それらを含めてやはり一度領都に戻らないとね。


 まずは女性たちの代表格である女性と軽く打ち合わせをする。


「領主様との約束がありますので、今晩は領都で泊まらないといけません。上手く許可が取れたら一緒に砦の掃除でもしましょうか」


「……お嬢様に掃除をさせるというのも」


「今の私はもうお嬢様ではない、ただの冒険者ですから」


「……何と慈悲深い」


 なぜか涙を流す女性だった。うーん調子が狂うわね……。





 まだ盗賊の生き残りが砦に戻ってくる可能性はある。


 でも、ゴーレムに女性たちの守護も任せたし、万が一に備えて通信用の魔導具も持たせたので大丈夫でしょう。


 というわけで、私は一旦砦を離れ、まだ戦果の爪痕が残る領館にやって来たのだった。もちろん犠牲者――ごほん、一緒に泊めてもらうロイ君たちも引き連れて。


「おぉ! セバス! 久しいな!」


「兄上も息災なそうで!」


 嬉しそうに抱き合うセバスと領主様。兄弟関係は良好なようだ。貴族って仲の悪い兄弟が多いからちょっと不安だったのだけど。


 ひとしきり感動の再会をしたあと、領主様は私に丁寧な挨拶をして、続けてロイ君たちに視線を移した。


「……聖女様。失礼ですが、その少年たちは?」


「ご紹介がまだでしたね。今代の勇者であるロイ君と、パーティーメンバーの皆さんです」


「なんと!? 勇者様が!? たしかに最近新たな勇者様が選定されたという噂は耳にしておりましたが。いや、しかし……」


「当然のお疑いですわ。なので鑑定してもらっても構わないかと」


 ロイ君たちに視線で確認すると、迷うことなく頷いてくれたのだった。良い子たちだ。


「むぅ、聖女様のお言葉を疑うわけではないですが……これは念のために確かめた方がいいでしょう。――おい! 道化を呼べ!」


 執事に対してそんな指示を飛ばす領主様だった。やっぱり部下に鑑定眼(アプレイゼル)持ちがいると便利よね。


 というわけで、道化に鑑定してもらった結果ロイ君が真なる勇者であると確認が取れたのだった。


「確かに勇者様であるようで。――申し訳ございません勇者様。世界を救う使命を帯びたあなた様に大変な無礼を」


「い、いえ! 疑われて当然ですから!」


 直立不動で受け答えするロイ君だった。初々しくていいわねぇ。


「勇者様方、今宵の宿がお決まりでないのでしたら是非我が屋敷に逗留を。少し荒れてはいますが、それでも街の宿よりは快適でしょう」


「よ、よろしくお願いします……」


 領主(子爵)から誘われては嫌とも言えないのか了承するロイ君だった。これは貴族相手の断り方も教えた方がいいかもね。いや無理をさせずに私が交渉の窓口に立つのもいいかしら。どうせパーティーメンバーとして一緒に行動するのだし。


「では領主様。まずは事情を説明したいのですが」


 セバスがなぜ私と同行しているか教える約束だったからね。廃砦の扱いについてはそのあと相談しましょう。


 と、領主様が待ったを掛けた。


「聖女様。なにやら深い事情が終わりのご様子ですが、勇者様も一緒でよろしいのでしょうか?」


「えぇ、そうですね。彼らにも細かい内容は話していませんので。一緒に説明してしまった方がよろしいかと」


 もうセイラちゃんには私の正体がバレているのだしね。


「そうですか。では応接間へどうぞ。人払いは済んでおりますので」


 領主様直々に案内していただき、応接間へ。

 部屋の作りとしては一般的なものだ 部屋の真ん中にテーブルと一対のソファ。壁際には領主の趣味であろう名品珍品の数々。もちろん王城や公爵家に比べると規模はかなり小さいけれど、まぁ比べるようなものでもないわよね。


「――まずは、改めてご挨拶を」


 変身魔法を解除し、髪色を茶色から金髪に――いや、ダメか。今の私の髪は銀色になっているのだった。聖女になった影響かどうかは分からないけど。


 なので逆に変身魔法を重ね掛けして、茶髪から金髪へと変身する。


「おぉ!? 髪色が!? まさかこれほどの長時間変身魔法を掛けていらしたとは!」


 良いリアクションをいただいたところで、自己紹介。


「お初にお目に掛かります。()グラグベルク公爵家令嬢・シンシアですわ」


「ぐ、グラグベルク!? それはセバスがお仕えしていた――!? では、あなた様が王太子殿下の婚約者であらせられる――!?」


 いくら貴族家の当主でも次期王妃(わたし)のことは知らなかったみたい。それも当然か。貴族家の当主で王都に留まっているのなんて政権内で役職を持っている中位~上位貴族くらいだし。何か行事があれば王都にやって来るだろうけど、私と会うとは限らないもの。



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