儀式
広場に到着すると、多くの遺体が並べられていた。どうやら盗賊の襲撃によって殺された住民や、騎士、冒険者たちの遺体らしい。
ロイ君たちは生き残った人たちと共に遺体の運搬を手伝っているようだった。正直、少年少女には辛い作業だと思うのだけど、彼らは黙々と作業をしている。ロイ君は盗賊を刺したばかりだから、その感覚を紛らわせるために身体を動かしているのかもね。
あるいは、盗賊による悲劇を実感することによって「アイツらは死んで当然だ」と自分に言い聞かせる効果もあるのかもしれない。
「――あ、シア様!」
私に気づいた聖職者・セイラちゃんが駆け寄ってきた。……なんだか以前より険が取れたというか、私に対する好感度が上がっている気がする。リリーによると私を疑っていたんじゃなかったかしら?
ふひー、っと鼻を鳴らすリリー。
「……この短期間で……さすが称号『女たらし』でござますね……」
ご主人様を女たらし扱いするの、やめてくれない?
しまったリリーに鑑定してもらったときは『称号・女たらし』をまだ隠していなかったのだった……バレた……。
ここは全力で話を逸らす私である。
「せ、セイラちゃん。大丈夫? 辛いなら休んでいてもいいのよ?」
「いえ、家族や仲間を失った方々の方が辛いのに、私たちが泣き言を言っているわけにはいきません」
「……いい子ね」
思わずセイラちゃんの頭を撫でてしまう私だった。どこか嬉しそうに目を細めてくれたので、選択肢としては間違っていなかったみたい。
「あの、シア様。お疲れのところ大変恐縮なのですが……この方たちを埋葬する前に、祈りを捧げて欲しいのです」
「私が?」
「はい。是非」
私が聖女候補だったことをセイラちゃんは知らないはずよね? そもそも『候補』というだけで聖女じゃないし、正式な聖職者というわけでもない。
死に戻りの中では修道院に入った経験もあるから一応知識はあるけど……。いや、ダメよ。神を否定して魔王となった私が、神の元へゆく人々のために祈るだなんて。そんなのは死者に対する裏切りだわ。
「私は聖職者じゃないわ。セイラちゃんがやった方がいいんじゃないの?」
「街の皆さんからは聖職者にお願いをされましたが――いいえ、いいえ、シア様以上の適任はいらっしゃいません」
なんだろう?
なんだか、セイラちゃんの目に凄みがあるというか、微塵も迷いがないというか、狂気すら感じさせるというか……。
これは断れない。
そう察した私は、セイラちゃんの視線から逃れるように広場を見渡した。
広場には全体的に悲嘆的な雰囲気が漂っていたけれど、その中でもひときわ住民たちの悲しみが強い場所があった。多くの人々が集まり、膝をつき、涙を流しながら祈りを捧げている遺体があるのだ。
明らかに特注品であろう甲冑。
近くで涙を流すデーニッツさんや、微動だにせず敬礼を捧げる騎士たち。
おそらくは、彼こそが領主なのでしょう。セバスの兄だという人物であり、あの様子では領民や騎士、ギルドの人間からも慕われていたようだ。
思わず目を逸らした私は、気づいた。
「盗賊たちの死体はないのね?」
「当然です。ヤツらに祈りなど必要ありませんから。あとで纏めて燃やしてしまいましょう」
即答するセイラちゃん。聖職者にあるまじき発言だ。大聖教って死者に対する扱いは(一応)平等ってことになっているんじゃなかったかしら? あと埋葬じゃなくて燃やしてしまうのも教義的には悪い扱いだし。
まぁでも、『異物』が混じってないならこちらとしてもやりやすい。
「セイラちゃん。この人たち、亡くなってから24時間以内よね?」
「? はい、おそらくは。昨日の夜中から襲撃があったようなので」
「ならばよし。住民や冒険者たちの死体が広場に集まっているなら好都合。――死者蘇生の儀式を執り行います」




